中二とバナナ
この話こんな話じゃなかったはず・・・。
夜中のテンションって怖いね・・・
山の頂上付近の墓地まで片道20分~30分くらいかかる。でも、一本道をまっすぐだ。
でも、山道で傾斜も多い。しかも、炎天下だ。
「お前なぁ~。やるなって言ったろう。遠吠えなんて」
「光太、そこに山があるから登る然り。いや、これは礼儀なんだ。狼一族は縄張りに入るに」
「はいはい。お前今日の晩飯ピーマン炒めな」
「さーせん・・・。それはさておき光太。やまびこって神秘的だぞ。最近のやまびこは声が変わって返ってくる。なかなかの優れものだ。」
「んなわけねーだろ。野犬かなんかだよ。でなきゃ耳掃除しろ」
「見ろ、光太!川だ、そしてカッパだ!!」
はぁ!?カッパ?
川に向かって走り出した睦月の後を追う。河原で俺達の前に大きく広がる綺麗な川。当然だけど、カッパはいない。
「おぉ~・・・すっげー」
マイナスイオン ビンビンだ。都内に居すぎたからかもしれないけど、自然の川はどこか目に不自然に映る。睦月はさっきからひっきりなしに石を川に投げて跳ば(俺たちは石投げって言ってる)している。
「って、おい。そんなことしてないで、墓参りいかねーと」
その時、さっきまで何回願っても吹いてくれなかった風が妙に強く俺達を横殴りした。
なぜだか体が冷水を被ったみたいに冷えた。
うわぁ・・・なんだこれ。
「光太、見ろ!オパールの原石だ」
何言ってんだ~。
「そっか~よかったな。」
上機嫌・インディ気分の睦月はもちろん見せてくれた。
確かに、半透明で白くてキラキラして、形まで綺麗ときた。すっかり気に入っている睦月はそれをポケットに入れる。
小学生かよ。
「ほれ、行くぞ」
河原を背にした時、睦月が俺の肩をグッと後ろに引っ張った。当然俺の方が力があるから簡単には後ろに倒れない。
「あとでまた来れば」
振り向くとそこにはブルーマンならぬグリーンマンが俺の肩を引っ張っていた。
「え・・・あ~・・・えっ?」
誰、この人?
「あの~・・・どなたです」
「光太ーーーーー!!」
「睦月?」
睦月が川でもがいている。おぼれている。
「睦月!」
俺はグリーンマンを押しやって川に飛び込んだ。睦月の腰には何かがしがみついている。何とか水中でキックを入れてそれを睦月から引きはがす。俺達は水面上に出た。
「大丈夫か!?・・・・大丈夫だな」
上半身は水のなか下半身大開脚な睦月。
「お前は“五十嵐家”だ」
ツッコんでなんとか川から上がる。
「何だったんだ?」
「わからん・・・なにか得たいのしれない者が迫った来た。」
「おい、お前等」
「姿見ただろ?」
「それが、石切りに夢中で・・・。こう、両足をギュッと、だな」
「おいって、言ってんだろ!?クソ餓鬼ども!!」
耳に水が入ってたせいにしよう。声に驚いて振り返る。
そこにはさっきのグリーンマン。いや、よく見ると青緑だ。体全体ヌメヌメした光沢で水かきの付いた手、でかい甲羅を背負ってて、頭は禿げてて・・・でなく、皿がのっている。
「この人・・・変なおっさんだー!?」俺の声は山に反響した。
「光太、落ち着け!カッパだまたは亀仙人だ。オレサイン貰う!!変なおっさんでもサインをもらう価値はある!」
「バカバカ、不審者だ!関わるな!目を合わせるな!!」
「よくぞワシの正体を見抜いたな、そこの眼鏡の小僧」
いや、正体丸出し・・・じゃなくって、俺は認めないぞ!!河童だなんて。
「ワシは河童族の長、川越かぱやじゃ。小僧、お前等の持ってる物を全部ワシによこせ!」
毒舌シェフかよ!つーか名前ふざけすぎだろ!?じゃなくって・・・。
「はぁ!ふざけんな。俺達はこれから墓参り行くんだよ」
「そうだそうだ。俺達はオレ達は墓参りにて先祖の気持ちをくむ心優しき少年だ。キュウリの一本だって渡さないぞ!」
自分で言うなよ!
「そんな物いらーん!!見たくもないわ-!?」
グリーンマンは俺達に突進してきた。
「河童主張してキュウリ好物説無視かよ!って、どうする?睦月」
あんなグリーンマン一発で倒せるだろうけど、あのローションまみれみたいな体には絶対触りたくない。
「光太、ここはオレに任せろ」
睦月はお供え物からバナナを一房取り上げた。
「睦月、形が似てるからってバナナじゃ」
「クククッ・・・この技をオレから発動させるとは・・・・。呼び覚ませ!灼炎鬼神金色刀雷壊意!!」
名前長っ!?
バナナにそんな重荷背負わすな!
バーンっという音を上げてバナナはグリーンマンの横面に思いっきりめり込んだ。グリーンマンは倒れ、頭の皿から悲しげに水が揺れた。
そんなバナナ・・・。
「さぁ、今のうちに!」
形が歪んだバナナを持ったまま睦月が叫ぶ。
「これ、正当防衛に入るかな?」
「バナナはお弁当に入る」
おやつの話じゃねーよ!
俺達はグリーンマンもとい河童が目を覚まさないうちに河原から急いで逃げた。もうバナナでは殴れないから。