身代わり宮の明玉

作者:桃巴
 沙伊国、貧乏名家の沈家ご令嬢ーー明玉に王宮『碧月城』より詔紙『 召 妃 』封書が届いた。
 明玉と兄の端梁は目を輝かせる。
「お腹一杯食べられるのね!」
「そりゃあ、後宮の妃ならな!」
「すきま風もない屋敷よね!」
「そりゃあ、後宮の妃ならな! 屋敷でなく、宮だ」
「夢に見た湯殿にも入れるのかしら?」
「そりゃあ、後宮の妃ならな! 毎日浸かれるはずだ」
「豪華な衣装に身を包めるの?」
「そりゃあ、後宮の妃ならな! 継ぎ接ぎしなくていいはずだ」
 明玉と端梁は浮かれている。
 だが、明玉は忘れていた。封書の中を確認することを。『 召 妃 』の中身を。

『沈家、明玉。身代わり宮への入宮を命じる』

 后や正妃の身代わりをする代妃として召されたのだ。なんの身代わりかーー懲罰の、である。
 沈家裏山育ち、破天荒なすっとこどっこい明玉代妃の破茶滅茶後宮生活、ご覧あれ。
身代わり宮の明玉 二十九
2024/04/15 10:13