幼馴染に恋をする

作者: 珠梨


放課後の教室で咲奈な告白をされていた。


「俺、ずっと前から川島さんのことが好きだったんです。

もし、よかったら付き合ってください」


高校に入学してから何度目かわからない告白。

みんな同じような台詞。


「ごめん。あたし今付き合うとか考えてないんだ」


また、同じ台詞で振った。

相手は悲しそうに顔を伏せて教室を出て行った。


「はぁ~」


大きな溜息をついて、机に腰掛けた。

窓に顔を向けると、グラウンドが見えた。

グラウンドではサッカー部や野球部が部活をしている。


「咲奈、終わった?」


教室に現れたのは、幼馴染の新井純。


「うん、終わった」


「振ったの?」


「もちろん」


いままでの告白はすべて断っている。

それは...好きな人がいるから。


「帰るか」


「そうだね」


純と咲奈の家は隣同士で親がとても仲が良い。

その結果、高校まで同じところに行く羽目になった。

登下校は小学校のときからずっと一緒だ。


「うわっ、寒いね」


11月もそろそろ終わる。

外に出ると風が吹いていた。

風がとても冷たい。


「ホントだな。早く帰ろうぜ」


「うん」


この時間が好きだ。

他愛のない話をしながら純と一緒にいるこの時間が。


電車は満席だった。


「座れないね」


「うん...あっ、でもあそこ空いてる」


「純座っていいよ。あたし立ってるから」


「俺はいいよ。咲奈が座りな」


「ありがと」


赤くなった頬を見られないように俯いた。


あたしは、純のことが好き。

小学生のころから、いやもっと前から。


でも...

でも純はいつも、いつもあたしの欲しい言葉だけはくれない。


どんなに想っていても、純はあたしに好きとは言ってくれない。

ちゃんと伝えなきゃ、想いは伝わらない。


わかっているのに、告白ができない。

告白して、振られるのが怖い。

ただの幼馴染だとしか思われてなかったらと思うと怖い。


今まで、何人も振ってきたのに、こんなこと言うなんて卑怯だ。


「咲奈、降りるぞ」


「えっ?あっ、うん」


思いに耽っている間に、目的地に着いていた。


「あのな、俺今日告られたんだ、吉田さんに」


「えっ?」


驚きのあまり、足が止まった。

純も咲奈が止まったのに気づいて、足を止めた。

もしかして、OKしちゃったの...?

嫌だよ。


「それでOKしたの?」


「ううん、明日返事するって言った」


「どうするの?」


「どうしようかなぁ。吉田さんって結構可愛いんだよな。

優しいし、性格良いらしいんだよ」


嫌だ。

あたし以外の人に可愛いなんて言わないで。

あたし以外の人を好きにならないで。


「...だめ」


「え?なにが?」


「だめっ!吉田さんと付き合わないでっ!あたし以外の女なんて見ないでっ!」


純は咲奈の顔を真っ直ぐ見つめていた。


「あたし、純のことが好きなの」


あぁ、やっと言えた。

人生で初めての告白。


「俺、その言葉ずっと待ってた。あと、知ってるよ」


「え?」


「咲奈が俺に惚れてるのずっと前から知ってる」


「え?」


「俺、吉田さんの告白その場で断ったから」


純が、優しい顔で咲奈を見た。

今までに見た純の顔で1番優しい顔だった。


「なんで?」


「ずっと前から、俺に惚れてるやつがいるって知ってたから。

そして、今日そいつに告白するつもりだからさ」


「それって...」


「咲奈、俺も好きだよ」


ずっと聞きたかった言葉。

ずっと、ずっと純に言ってほしかった。


「あたしも純にその言葉言ってほしかった」


「知ってるよ。だから今言っただろ?」


「純っ」


咲奈は純に抱きついた。


「ありがとう。大好きだよ」


「うん、俺も大好き」


純は咲奈の腕を外し、かがみこんだ。

そして、咲奈の唇に軽く自分の唇を重ねた。


「俺、これファーストキスなんだけど」


「あたしもだよ」


純は満足そうに笑うと咲奈の髪を撫でた。

そして、咲奈の手を取り、歩き出した。

よくありそうな恋愛ものですが楽しんでもらえたら嬉しいです。


純は、あたしの幼馴染をイメージして書きましたっ