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第七十九話 チキン南蛮

 そうこうしているうちにフェルが戻ってきた。

 しっかりと、ブラックサーペントを口に咥えている。

 おお、獲って来てくれたようだね。

 言ってすぐに獲ってこれるってのがフェルのすごいとこだよな。

 一応これもAランクの魔物なんだけど、よく見るからなんかそんな感じがしなくなってきたぜ。

 フェルが獲って来たブラックサーペントを俺の前に置いた。

「フェル、ありがとうな」

 俺はブラックサーペントをアイテムボックスにしまった。

『これはどうしたんだ?』

 フェルが、俺が作った箱型の家を見てそう聞いてきた。

「これな、土魔法で俺が作ったんだ」

『こんなもん必要か?』

 こんなもんって、お前ね……。

「いやさ、旅の途中に寝るときにこういうのがあったらいいなって思ってさ」

『我の結界があるではないか』

「いや、そうなんだけどさ。フェルの結界は安全だし雨風もしのげるし、すごいありがたいもんではあるんだよ。だけどさ、透明なのがねぇ……。寝るときに丸見えで落ち着かないんだよ」

『ぬ、そういうもんか?』

「例えばだけど、その場所が気に入ったとか、いい狩場があるとかで、フェルだって1箇所に長くいるときあるだろ?」

『うむ、あるな』

「そういうときってさ、寝床にどんな所を選ぶ?」

『そりゃ洞窟か大きめの木のうろかだな』

「どうしてそういう場所を選んだんだ?」

『どうしてって、そういう場所の方がゆっくり眠れるからに決まってるではないか』

「俺がこれを作った理由はそういうことだよ」

『なるほどのう』

「まぁ、旅の途中だとその日限りではあるけど、やっぱり落ち着いて寝たいだろ」

 フェルも納得したようだし、家を消しますか。

 こんな大きなのあったら邪魔だしね。

 ああ、魔法で出来たものは魔力で作り出したものだから、消そうと思えば消せるようなんだ。

 ストーンウォールを出したときに、こんな大きなもんどうしたもんかと思って、試しに「消えろ」って念じてみたらスッと崩れるように消えたよ。

 おそらくその魔法を使った本人しか消せないんだろうけどね。

 ってことで、家を消してと。

 なんか微妙な時間だな。

「フェル、ここで飯食ってっちゃうか?それとも、街に帰ってからにするか?街に帰ってからだと、大分暗くなってからになっちゃうかもしれないけど」

『腹も減ったし、ここで食っていこう』

 フェルもここでということなので、飯を作っていく。

 と言っても、今日はすぐにできるものを考えている。

 この前揚げたチキンカツがあるから、それを使おうと思う。

 作るのはチキン南蛮だ。

 ネットスーパーを開いて足りないものを購入していく。

 足りないのは甘酢だれの酢かな、あとはタルタルソースはいつものヤツを多めに買っておこう。

 あとは、米を炊いてると時間かかるからパンでいいか……ん、ハンバーガーのバンズなんてあるんだな、これにしよ。

 まずは甘酢だれを作らないと。

 鍋に醤油と酢と砂糖を入れて温めていく。

 砂糖が溶けた甘酢だれにチキンカツをさっとくぐらせて、甘酢だれを衣に吸わせる。

 それを皿に並べてその上にタルタルソースをたっぷりかけて出来上がりだ。

 あ、スイを起こさないと。

「スイ、ご飯だよ」

『んん、ご飯ー?』

「そう、ご飯」

『ご飯、食べるー』

 スイが起きてきたところで、フェルとスイの前にチキン南蛮の載った皿を出してやる。

『酸っぱいけど、この白いのと一緒に食べると美味しい』

『うむ、この白いのが美味いな』

 二人ともタルタルソースが気に入ったみたいだ。

 タルタルソース美味いもんなぁ。

 俺もたっぷりかけちゃおう。

 まずはバンズにチキン南蛮を載せて、タルタルソースをたっぷりとかける。

 出来上がったチキン南蛮バーガーをガブリ。

「美味いっ」

 チキン南蛮とパンってけっこう合うな。

 チキンカツとその衣に染みこんだ甘酢とたっぷりのタルタルソースが美味いなぁ。

『ぬ、お主が食ってるの美味そうだな』

「チキン南蛮バーガー食ってみるか?」

『うむ、くれ』

『あ、スイも食べるー』

 フェルとスイの分のチキン南蛮バーガーを作ってやる。

『パンと一緒に食べると美味しーね』

 うんうん、この組み合わせはけっこう合うよな。

 フェルはというと……ハンバーガー1個を一口で食ってやがる。

 まぁ、この食い方だと美味いとは思ってるんだろうけど。

 食後の小休憩をとった後に街への帰路についた。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇




「あ、ちょっと冒険者ギルドによってもらっていいか?」

 フェルにお願いして冒険者ギルドによってもらう。

 直接買い取り窓口に行くと若い男の職員がいた。

「あの、ヨハンさんいますか?」

「ん、何か用か?」

「ええ、ちょっと」

「ちょっと待ってろ」

 そう言うと買取窓口の奥にある倉庫に向かって叫んだ。

「おっさーん、客だぞー」

「おう、ちょっと待て」

 ヨハンのおっさんの声がした。

 少し待っていると、ヨハンのおっさんが奥の倉庫から顔を出した。

「誰かと思ったら、兄さんか。まだ出来てないぞ」

「あ、そうじゃなくて、新たに頼みたいものがありまして……」

 忙しいとこ申し訳ないねぇ。

 と言っても、忙しくしてるのは俺なんだけどさ。

「なんだ、またか? 兄さんならこっちだな」

 ヨハンのおっさんと倉庫に向かう。

「今日は何だ?」

「えーと、ブラックサーペントです」

 ブラックサーペントをアイテムボックスから取り出した。

「兄さんが来てから感覚がおかしくなるな。ブラックサーペントなんて、そうホイホイ出てくるもんじゃないんだがなぁ」

 ホント、すんません。

「肉と皮をこちらに戻していただいて、あとは買取でお願いします」

「分かった。ブラッディホーンブルの目処もついたし、それと一緒に渡せるようにしとくぜ」

「お願いします」

 これでランベルトさんに渡すブラックサーペントの皮が確保できたな。

 ランベルトさんにちょっと相談事があるから良かったよ。

 さてと、宿に戻るか。






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