第七十八話 加護(小)が案外いい仕事してる
今日は77話、78話を更新です。
さてと、次は俺の魔法の検証だな。
いろいろと試したいことがあるから、少し時間がかかるかも。
それならば……。
「フェル、いろいろ魔法試したいからさ、少し時間がかかるかもしれないんだ。その間にさ、ブラックサーペントがいたら狩ってきてほしいんだけど、お願いできるか?」
『ああ、前に言っていた黒ヘビの皮が欲しいという話か?』
「そうそう。ランベルトさんがブラックサーペントの皮があったら卸して欲しいって言ってた話だよ。お願いしていいか?」
『ああ、いいぞ。どうせ暇だったしな。それでは早速行って来る。ああ、お主らには結界を張っておくから心配するな。それでは行って来る』
「おう、フェルありがとう。お願いな」
動きたくてうずうずしていたのか、フェルがすぐさま駆け出していった。
「さて、まずは火魔法から試してみるか」
でも、森の中でファイヤーボールを撃つのは山火事の危険があるから、掌の上でファイヤーボールの大きさを変えたりしてみて検証しようと思う。
まずはいつもと同じようにファイヤーボールを作ってみる。
「うぉっ」
いつものファイヤーボールの倍近い大きさの火の玉が出来上がる。
「これが加護の力なのか」
いつもの大きさにするにはもうちょっと魔力を抑えた感じで……おお、出来た。
どんどん魔力を抑えるようにしていくと、それとともにファイヤーボールも小さくなっていく。
逆に魔力を増やしていくと、ファイヤーボールがどんどん大きくなっていく。
最終的には直径1メートル半くらいのファイヤーボールが出来た。
「この大きさを維持するのはちょっときついな」
『うわぁ、あるじすごーい』
「スイ、これは火の玉だから熱いからあんまり近付いちゃダメだからな」
『分かったー』
スイがすごいすごい言いながら、俺がファイヤーボールを大きくしたり小さくしたりするのを見ている。
「今度はこっちの手にも、もう1個ファイヤーボールだ」
両手にファイヤーボールを作って大きさを変えたりして試した。
いろいろ試しているうちに15分くらい経っていた。
「あれ? 全然疲れてないな」
いつもなら絶対に「疲れた~座りたい」って感じになってるはずだ。
今は全然大丈夫だ。
「これが加護の魔力消費軽減か。魔力操作も上手い具合に出来てるし、そのことで威力も強くなっている」
直径1メートル半くらいのファイヤーボールは維持するのが大変だけど、いざというときの大技として使えそうだ。
何だよ、加護(小)でも案外いい仕事してんじゃん。
次は、土魔法を試してみよう。
まずは……。
「ストーンバレット」
コンッ、コンッ、コンッと複数音が鳴った。
狙った木の近くまで行って確認すると、
「7個か、石礫の数が増えてる。それに木にめり込んでるってことは威力も増してるみたいだな……」
その後、魔力を増やしながら何度かストーンバレットを撃ってみると、
「散弾銃みたいだな。これってけっこう威力ありそうだな。これもいざというときの大技で使えそうだな」
あと、試してみたい魔法があったからやってみる。
「ストーンウォール」
縦横2メートルくらいで厚さ10センチくらいの石壁が、俺の前面に現れる。
「おおっ、出来たっ」
最初だから少し多めに魔力を込めてみたけど、それでちょうどいい感じの石壁ができるのか。
魔力も多く抜けていく感じだ。
やっぱりストーンバレットとは違うね。
石壁を作り出すんだから、それだけ魔力も必要ってことか。
でも、これができるなら、ずっとあったらいいなと思っていたあれができそうだ。
試してみたいけど、少し休憩して魔力を回復させてからの方がいいかも。
ステータスを確認してみると、魔力が半分近くまで減っていた。
少し疲労感もあるし小腹が空いたから、少し甘いもんでも食って休憩だ。
ネットスーパーで菓子パンやらを買い込んだ。
「スイ~、少し休憩しよう」
いつの間にか1人で水魔法の練習をしているスイを呼ぶと、すぐにこちらにやって来た。
「はい、おやつだよ」
『ご飯じゃないのに、食べていいの?』
飯時じゃないのに食ってもいいのかとスイがオロオロしている。
「いいよ。でも今日だけね」
『やったー!』
スイが食い始めたのを見て、俺も食い始める。
俺の定番の缶コーヒーとあんぱんだ。
うん、疲れた時の甘い物は美味いね。
1時間近い休憩の後、再びステータスを確認してみた。
満タンとはいかないけど、9割くらいにまで回復しているな。
スイは菓子パンを食ったら眠くなってしまったのか、鞄の中でお昼寝中だ。
スイを起こさないようにちょっと離れる。
よし、試してみるとするか。
「フ~、何とか出来た」
試行錯誤して何とか出来た。
ストーンウォールができたから、出来るんじゃないかと思ったんだ。
俺が試したかったのは土魔法で家を作ることだ。
加護(小)だから、そんなに複雑なものは出来なかったけど、これでも十分役に立つ。
俺が作った家は(家と言っていいのかどうかは疑問だが)、おおよそ10畳くらいの箱型の家だ。
壁があって屋根があって出入り口があるだけの簡単なものだけど、旅の途中にこれがあるのとないのとでは大違いだ。
フェルの結界で防御万全だし雨風はしのげるのだが、透明だから落ち着かないんだよねぇ。
一番問題なのが寝るときだよ。
安全なのは分かってるんだけど、丸見えだからなんか落ち着かないんだよね。
やっぱり寝るときくらいは壁のあるところでゆっくり落ち着いて眠りたい。
そこでこの家だ。
寝るだけならこれで十分だよ。
うんうん、いける。
魔力の3分の2くらいゴッソリ持っていかれるけどね。
まぁ、それでもゆっくり落ち着いて眠るためなら致し方ない。
それにしても、加護(小)だけどホントいい仕事してくれるよ。
最初はこれでそんなに変わるものか?と思ってたけど、うんうん、良いよこれ。
なかったら多分こんなこと出来なかったと思うし。
いやー、加護(小)もらっといて良かったぜ。