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第六十六話 ギルドマスターからの依頼

※ 討伐報酬がなかったので入れてみました。あと少しだけ、文章を変えました。しかしながら、これ以上変える予定はありませんのでお知らせしておきます。

 金貨の詰まった麻袋をアイテムボックスにしまい終えると、ギルドマスターが待ってましたとばかりに話し始めた。

「それでだな、依頼の方なんだがな二つほど頼みたいのだ。一つはメタルリザードの討伐でもう一つがブラッディホーンブルの群れの討伐だ」

 メタルリザードは分かる。

 冒険者ギルドに買取ってもらったばっかりだし。

 ブラッディホーンブルってのはどんな魔物なんだ?

 血濡れの角だなんて穏やかでない名前だね。

 ブルっていうんだから牛みたいな魔物か?

 血濡れの牛……なんかヤバそうな名前だな。

「まずメタルリザードなんだが、ここから馬車で2日ほど行ったところにパスクアル山という山があるんだがな、その山の麓に住み着いてしまってな。メタルリザードがいるということは、パスクアル山に何がしかの鉱物があることは確実なんだが、調査にさえ入れなくてなぁ。まぁ、この領地には他に鉱山があるから、それほど困っているわけではなかったから後回しになっていたのだが、鉱山が増えるならそれに越したことはないからな。この依頼の討伐報酬は金貨238枚だ」

 ずっと依頼はだしていたんだけど、なかなか受ける者がいなくて少しずつ報酬も増やしてはみたものの受注されないまま残っていた依頼だそうだ。

 メタルリザードなら大丈夫そうだ。

 何たって前に獲ってきてるからな。

 フェルがさ。

「もう一つのブラッディホーンブルなんだが、初級冒険者の狩場の一つになってる西の草原に群れを作って住み着いてしまってなぁ。初級冒険者からは何とかしてくれと陳情は上がってきていたのだが、街道があるわけじゃなしで、これも後回しになってたんだ。こっちの討伐報酬は金貨324枚だ」

 これもメタルリザードと同じく依頼していたが、なかなか受ける者がいなくて……という理由らしい。

 聞いたところによるとこのブラッディホーンブルというのは、サイくらいの大きさの気性の荒い牛のようだ。

 群れに近づく者は、その名のとおり2本の鋭い角で突き刺して血祭りにあげるらしい。

 ブラッディホーンブル自体はBランクの魔物らしいが、その気性の荒さと必ず群れで行動することから討伐にはBランクからAランクの冒険者のパーティーが4つ以上は必要なんだそう。

 それにしても、群れに近づく者を2本の鋭い角で突き刺すとは、異世界の牛コワッ。

「この二つの依頼、受けてくれるか?」

 ギルドマスターにそう聞かれたけど、受けるのは俺じゃないからねぇ。

「フェル、話聞いてたか? 受けても大丈夫そうか?」

『当然だ。我に出来ぬわけがなかろう』

 まぁ、そうだろうね。

「ギルドマスター、大丈夫みたいです」

「そうかそうか、良かった」

『ブラッディホーンブルか。あれの肉はなかなかに美味いのだ。早速行くぞ』

 フェルがやる気だな。

 ブラッディホーンブルの肉美味いのか。

 やっぱ牛肉に似てるのかな?

 そうだといいな。

 オークも美味いけど、久しぶりに牛肉が食いたいし。

「ああっ、すまぬがメタルリザードの方を先にお願いしたいのだ」

『ぬっ……』

 あらら、ギルドマスターとしてはメタルリザードを先にってことみたいだ。

「まあまあ、ギルドマスターがこう言ってるんだし、メタルリザードの討伐依頼を先にこなそうぜ。ブラッディホーンブルだってその草原に住み着いてるっていうんだから、すぐにいなくなるってことはないだろうしさ。それに楽しみは後にとっておいた方がいいだろ」

『楽しみとは何だ?』

「ブラッディホーンブルの肉を焼いて、あれで食ってみたくないか?」

『あれとは……あれかッ』

「そうそう、焼いた肉によ~く合うお前の好きなあれだよ」

『フッ、美味そうだな』

 ステーキ好きのフェルなら釣れると思ったんだよね。

「あ、ギルドマスター、ブラッディホーンブルの肉はもらえるんですよね?」

「もちろん二つの依頼のどちらとも討伐した魔物はお主たちの物だ。ただブラッディホーンブルの肉は高級だが美味くて人気があるからな、半分はギルドにも回してほしいぞ。買取価格も少し上乗せするから、できればお願いしたい」

 半分はギルドに卸して、半分はこっちの分か。

 いいんじゃないの。

 何頭いるかはわからんけど、群れだっていうから、結構な頭数何だと思うし。

 しかも1頭がけっこうな大きさのようだし。

 何頭くらいいるのかわからんけど、けっこうな量の牛肉が手に入るのは間違いないね。

『では、メタルリザード討伐に行くぞ』

「いやいや、待て。いくらフェルが早いって言っても、今の時間から行ったらこの街に帰ってくるのは真夜中だぞ。門も閉まってて街の中に入れないじゃないか。それだったら明日の朝早くに街を出た方がいいんじゃないか? それなら夕方には帰ってこれそうだし」

『ぬ、そうか?』

「そうだよ。ギルドマスター、メタルリザードの討伐は明日でもいいですか?」

「そりゃあかまわんが、1日で終わるのか?」

「え? 多分大丈夫だと思いますけど。馬車で2日の距離なら、フェルならそんなかからないで着けると思いますし、メタルリザードの討伐自体もそんな時間かからないと思いますけど……フェル、メタルリザードの討伐って時間かかるのか?」

『フンッ、あんなトカゲなどに我が手こずるわけがなかろう』

「だそうです」

「そ、そうか……。あのメタルリザードをトカゲと言い放ちてこずるわけがないと言い切るとは、フェンリルというものは我々には計り知れない圧倒的な力を持つ者だと改めて感じるな。敵対しなかったこの国の王を褒めてやりたいぜ」

 ギルドマスター、そんなしみじみ言わないでくれますかね。

 こちとらそのフェンリルと四六時中一緒にいるんですから。

「それじゃ、明日の早朝にメタルリザードの討伐に向かいます」

「おう。すまないが頼む。帰ってきたらギルドに一声かけてくれ」

「承知しました」

 ギルドマスターの部屋から退室して、倉庫に向かう。

 肉を忘れたら大変だからな。

 倉庫にいたヨハンのおっさんから大量の肉を受け取って冒険者ギルドの外に出る。

「あ、フェル、まだ時間あるから、ランベルトさんの店に寄りたいんだがいいか?」

『あの商人の店か』

「ああ。金も手に入ったことだし、鞄を新調したいんだ」

 そう言って俺はスイがいる布の鞄を撫でる。

『随分汚れたな』

「まぁな。スイがしょっちゅう出たり入ったりしてるし、元々この鞄も中古だからな。だから思い切って新調することにした。ランベルトさんの店は革製品を売ってる店だそうだからな」

 スイにも居心地を確認してもらって、良いのを買うぞ。

 少々高くても妥協はしないぜ。

 何せスイのためだからな。

「あ、フェルも何か欲しいものあったら言ってくれよ」

『我が欲しいものなぞ特にないわ。しいて言うなら美味い飯だ』

 おまえそればっかだな。

「あ、首輪なんかいいんじゃないか」

『グルルルルッ。我に首輪など着けようとしたら噛むぞ』

「ヤ、ヤダな、じょ、冗談だよ」

 唸るなよ。

 ちょっと言ってみただけじゃんか。






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