第四十五話 スイ特製上級ポーション
今日は44話、45話更新です。
「スイー、お話があるから、ちょっと止まってくれるか」
俺の周りをピョンピョン飛び跳ねていたスイに声をかける。
『なにーあるじー?』
スイが俺の目の前で止まって念話を送ってくる。
「スイ、あのな、スイに新しいスキルが出来たんだ。回復薬生成っていうんだけど、使えるか?」
『うん? よくわかんないけど、やってみるっ』
そう言ってスイがうんうん唸りながら回復薬生成~と念じている。
『あ、できた。あるじー、出来たよ!』
「本当か?!」
『うん、これ』
スイの突き出した触手の先からポタポタと雫が垂れていく。
「おおっ、ちょっと待った」
俺は急いでアイテムボックスから空のペットボトルを取り出した。
「これに入れてね」
スイの触手の先にペットボトルを近づけた。
ペットボトルの中に少し青みがかった透明な液体が溜まっていく。
『あるじー、今作ったのはこれだけだよ』
「そうかそうか、ありがとうな」
スイが作ったおそらく回復薬だろう液体が、ペットボトルの半分ほど溜まっていた。
これ、回復薬なんだよな?
匂いを嗅いでみるが、特に匂いはなく無臭だ。
ペットボトルの中の青みがかった透明な液体を鑑定してみた。
【 スイ特製上級ポーション 】
「は?」
エ?ナンデスカコレ……。
スイ特製とか出ちゃってるんですけど。
上級ポーションになってるんですけど。
スイちゃん教えて。
「スイ、これな、スイ特製上級ポーションって出てるんだけど、なんでか分かるか?」
『んとね、スイが作ったからだよ。あとね、それはいっぱい痛いのが治るお薬だからなの』
そ、そうか。
「他のお薬も作れるのか?」
『うんっ。中くらい痛いのが治るお薬と、ちょっと痛いのが治るお薬も作れるの』
中くらい痛いのが治るお薬ってのが中級ポーションで、ちょっと痛いのが治るお薬ってのが下級ポーションか。
あとは、上級、中級、下級それぞれどれくらいの効果があるかなんだけど……。
「スイ、そのお薬はどれくらい効果があるのかわかるか?」
『んとね、いっぱい痛いのが治るお薬はいっぱい痛いのが治って、中くらい痛いのが治るお薬は中くらい痛いのが治って、ちょっと痛いのが治るお薬はちょっと痛いのが治るんだよ』
うん、そうか。
スイに聞いたのが間違いだったな。
あとは使ってみて確かめるしかないか。
それにしても、回復薬生成か。
酸弾もあるし、これで回復もばっちりだし、スイめちゃくちゃ強くね?
『我も長い間生きてきたが、さすがに回復薬を生成するスライムを見たのは初めてだ』
1000歳超えのフェルでも初めてなのか。
「スイは特殊個体じゃないかって言ってたもんな」
『特殊個体なのは間違いないのだろうが、スイはスライムにしては知能も高い。真に特別な個体なのだろうな』
フェルにそこまで言わせるくらいだから本当にスイは特別なんだろうな。
スイを見てたらスライムが雑魚だなんて思えなくなるな。
ってかスライムが雑魚だって誰が決めたんだ?
ピョンピョン飛び跳ねるスイを見ていると、スイが『あるじー』と言って俺の胸に飛び込んできた。
もちろん俺はしっかりキャッチ。
あースイかわいい。
癒される~。
って、スイに聞いておかないとな。
「スイは、特製上級ポーションは1日にどれくらい作れるんだ?」
『うーん、わかんない』
あ、そうなのね。
「じゃあ、とりあえずこれがいっぱいになるまでさっきと同じ薬を作ってみてくれるかな?」
そう言ってスイに”スイ特製上級ポーション”が半分くらいまで入ったペットボトルを見せる。
『うん、わかった』
スイが”スイ特製上級ポーション”を作っていく。
ペットボトルがいっぱいになるまでそんなに時間はかからなかった。
「いっぱいになったな。スイ、ありがとうな」
これでよしと。
ヒーリングマッシュルームもあるし、スイ特製上級ポーションもあるから、これで余程のことがない限り死ぬことはないだろう。
まさか回復薬が手に入るとは思ってなかったな。
スイ様様だぜ。
『おい、もうそろそろ行こう』
「あ、ごめんごめん。スイ、おいでー」
スイを鞄の中に入れて、フェルの背に跨る。
『では、行くぞ』