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第四十四話 ヒーリングマッシュルーム

今日は44話、45話更新です。

「フェル、そう言えばグリフォンの縄張りってどの辺なんだ?」

 そうなんだよ。

 オルトロス騒動で忘れていたけど、グリフォンの縄張りもこの森にはあるのだ。

『グリフォンの縄張りはもう少し先にある』

 もう少し先か、ならもう少し時間があるな。

「なぁ、グリフォンの縄張りは避けて行こうぜ」

 グリフォンもヤバい。

 しかも、グリフォンは羽があるから飛べる。

 そんな魔物がいるのが分かってるなら避けるべきだろう。

『だから、何故避ける必要がある?』

 そう言えるのはフェルだけだからな。

『彼奴等など恐れるに足りん。それにな、彼奴等の縄張りはオルトロスより広く、ここまで来ては避けては通れんぞ』

 な、何それ……。

「だからさ、何度も言うけどそういう話は早く言えって」

『だから今言ったではないか』

 はぁ~、ダメだこりゃ。

 避けては通れんって、グリフォンの縄張り通るのは決定ってことか。

 ヤダなぁ。

 グリフォンとは遭遇しませんように。

 グリフォンさん出てくるなよー。

『そう心配せんでも大丈夫だ。お主とスイには常に結界を張っているし、グリフォンの縄張りはまだ先だ』

 そうは言っても通るのは確実なんだろ。

 気が重いぜ。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇




『ぬ、珍しいな……』

 フェルが歩みを止めてそう呟いた。

「ん? 何が珍しいんだ?」 

 フェルの視線の先を見ると、木の根元に淡い水色のきのこが生えていた。

 辺りを見ると、同じようなきのこが木の根元に生えている。

『これはな、ヒーリングマッシュルームと言ってとても珍しいきのこなのだ。我も久しぶりに見た』

 ヒーリングって名前が付いてるってことは、食べると回復魔法みたいな効果があるとか、ポーションの材料になるとかか?

 それに1000歳超えのフェルが久しぶりに見たって、よっぽど珍しいきのこなのかも。

『このヒーリングマッシュルームはな、そのまま食ってもそれなりに高い効果がある。深い切り傷や骨折もすぐに治るぞ』

 へぇー、食べるだけでその効果はすごいじゃん。

「そんな効果があるなら少し採っていくよ」

 フェルの背から降りてヒーリングマッシュルームを採っていく。

 すると、スイが鞄から這い出してきた。

『なんかいい匂いするー』

 いい匂いってなんだ?

 スイがヒーリングマッシュルームに近寄っていく。

『ねぇねぇあるじー、このきのこ美味しそう。食べていい?』

 さっきフェルがそのまま食っても大丈夫なようなこと言ってたから大丈夫だよな?

「フェル、これ食っても大丈夫なんだよな?」

『ああ。回復効果があるというだけで、特に問題はないはずだ』

「スイ、食ってもいいぞ。だけど、ほどほどにな」

 何かあったときのためにある程度確保しときたいからな。

『わーい』

 スイが喜々としてヒーリングマッシュルームを取り込んでいく。

『そうだ、思い出したぞ。このヒーリングマッシュルームは”エリクサー”とかいう薬の材料の一つなのだ。その”エリクサー”とかいう薬は、どんな病気でも治すことができるらしい。それこそ死期が近い者もたちどころに元気にするうえに寿命も伸ばすと言っていた』

 で、出た、エリクサー。

 エリクサーって秘薬のことだろ?

 このヒーリングマッシュルームが材料の一つってことは、作れることは作れるんだな。

 でも、他の材料が確保するのにめちゃくちゃ難易度の高いもんだったりするんだろ、きっと。

 で、作るのが超難しいとかなんだろ。

 あと手に入れるとすれば、高難易度ダンジョンとかの宝箱に稀に入ってるとかなんじゃねぇの?

 ゲームとか小説とかだとそんな感じだったしさ。

 まぁ、エリクサーを手に入れるのはほぼ無理として、ここでヒーリングマッシュルームを手に入れることができたのはラッキーだよな。

 いっぱい採っていこう。

 主に俺のためにね。

 だって今の面子の中でこれが必要になりそうなのって、どう考えても俺だしさ。

 俺からしたら食いしん坊キャラにしか見えないフェルだって伝説の魔獣って言われてその名に相応しい強さだし、スイもなんか特殊個体っぽくて雑魚とはまったく思えない強さのスライムだし。

 俺だけが凡人なんだよなぁ。

 魔法も使えるようになったし、ちょっとずつは強くなっているんだけどね。

 まぁフェルとスイにがんばってもらって、俺はいざと言うときの備えをしとかないとね。

 せっせとヒーリングマッシュルームを採っていると、隣でヒーリングマッシュルームを取り込んでいたスイが青白く光りだした。

「うおッ、ス、スイッ?!」

『あるじー、スイの体がなんかピカピカしてるの』

「ス、スイ、大丈夫なのかッ? 痛いとかないか?」

『痛くないよー』

 スイの青白い光は1分くらい続いた後収まった。

「スイ、どこかおかしいところないか?」

『何ともないよ。スイ、元気』

 そう言ってスイはピョンピョン飛び跳ねている。

 今のは何だったんだ……。

 大丈夫みたいだけど、とりあえず鑑定しておくか。



 【 名 前 】 スイ

 【 年 齢 】 21日

 【 種 族 】 スライム

 【 レベル 】 17

 【 体 力 】 367

 【 魔 力 】 361

 【 攻撃力 】 354

 【 防御力 】 357

 【 俊敏性 】 363

 【 スキル 】 酸弾 回復薬生成



 スイってば、もうレベル17なんだね……。

 異世界ゴミを毎日食ってるからレベル上がるのが早いな。

 ん?なんかスキルが増えてる。

 回復薬生成って……は?

「なぁフェル、スイのスキルに回復薬生成ってあるんだけど、間違いないよな?」

 鑑定が出来るフェルにも確認してもらう。

『ああ、あるな。おそらくヒーリングマッシュルームを大量に食ったせいなのだろうが……』

「え? そんなんで新しいスキル取得することってあるのか?」

『それはスイがスライムだからであろう。昔、金属ばかり食っていたスライムがメタルスライムに進化したのを見たことがある。それに伴って硬化というスキルも取得していたからな。おそらくそれと同じなのだと思うぞ』

 食ったものによって進化先が違ったり、スキルを取得するってことなのか。

 回復薬生成って悪いスキルじゃないし、というか、俺にしたらむしろありがたいスキルだぜ。

「スイ、でかした!」

『ん? スイ、いい子?』

「ああ、スイは最高にいい子だ」

『やったやった! スイ、いい子』

 スイが嬉しそうに俺の周りをピョンピョン飛び跳ねた。






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