第四十二話 フェルVSオルトロス
今日は41話、42話更新です。
戦闘シーン難しい……。
犬の鳴声がかすかに聞こえた。
「…………ゥ……ウォン……ウォンッ……」
ゲッ……。
な、何か犬の鳴声がこっちに近づいてきてるんだけど。
く、来るのか、オルトロス。
「ウォンッ、ウォンッ、ウォンッ、ウォンッ、ウォンッ、ウォンッ」
バサァっと枝を掻き分けて俺たちの前にやってきたのは黒い毛並みの二つの凶悪な顔を持つオルトロスだった。
大きさもフェルに引けを取らない大きさだ。
しかも全部で5匹。
「フェ、フェルッ……」
ヤバイ、ヤバイ、ヤバイ、オルトロス来たよ。
『大丈夫だ。彼奴等など恐れるに足りん』
い、いや、そう言っても凶悪そうなのが5匹もいるんだぞ。
特に真ん中にいるヤツなんて、二つの頭とも口から涎垂らして歯をむき出しにしてめっちゃ凶暴そうだし。
んん?あれ?なんか様子がおかしいぞ。
真ん中のヤツは唸ったり吠えたりしてさっきからフェルを挑発してるけど、その他の4匹はどっちかっていうと真ん中のヤツを止めようとしてるっぽい。
『中央にいるのが怖い物知らずの馬鹿な若造か』
ちょ、ちょい待て。
何かフェルが挑戦的なんですけど。
フェ、フェルさんや、ヤル気なんですか?
『お主はスイと一緒に少し避難していろ』
は、はい、もちろん避難させていただきます。
俺は急いでフェルの背から降りて木の後ろに避難した。
木の陰からそっと覗くと、フェルとオルトロスが対峙している。
何かめちゃくちゃヤバい雰囲気なんですけど……。
『我に歯向かうことがどういうことかわかっているのか? 我は手加減などできんぞ。死を覚悟しているならば、来るがいい』
フェルがそう言い放つと、真ん中にいたオルトロスが「ヴヴゥゥゥッ」と唸る。
そして「ウォンッ」と力強く一声鳴いた後フェルに跳びかかった。
それに対してフェルは避けるでもでもなく、ただ右前足を上から下に大きく振り下ろした。
「キャンッ」
フェルが右前足を振り下ろすと同時に光の鋭い爪の幻影が現れてオルトロスを切り裂いた。
「な、な、な、なんじゃありゃ……」
スキルなのか?
魔力が組み合わさった技なんだろうけど。
フェルのステータスを思い浮かべた。
そう言えば、スキルに爪斬撃ってあったような……。
『散れ』
残っていた4匹のオルトロスにフェルがそう言うと、脱兎のごとく逃げていった。
『おい、もう大丈夫だぞ』
フェルにそう言われてスイを抱えて恐る恐るフェルに近寄った。
このころにはスイも騒ぎを聞きつけて起き出して、心配そうに俺の腕の中に収まっていた。
『フェルおじちゃん強いねー』
「ああ、強いな。フェル、さっきのってスキルか?」
『そうだ。
腕一振りであの切れ味、凶悪過ぎるスキルだな。
『これは600年ほど前に我が編み出したのだ』
フェル、そんなドヤ顔しなくていいから。
それにしても我が編み出したって、今更だけどお前本当にチートだよなぁ。
『ねぇねぇ、スイもフェルおじちゃんみたいに出来るようになるかなぁ?』
「うーん、スイには爪がないからちょっと無理かな。でも、スイだってすごいスキル持ってるじゃないか。あの酸を飛ばす酸弾っていうのめちゃくちゃすごいぞー」
『ホント? スイ、すごい? すごい?』
「うん、すごいぞ~。スイが一番だ」
スイをぎゅーっと抱きしめる。
さっきまでは殺伐としてたからなぁ、あー癒される。
とは言っても、ここは血生臭いままだけどな。
「おい、このオルトロスどうすんだ?」
フェルの爪斬撃を食らい息絶えたオルトロスがいた。
ウエップ、こりゃあひどい。
胸から腹にかけてザックリいってるよ……。
『オルトロスなど不味くて食えん』
不味くて食えんって、フェルこのオルトロスを食おうとしたことがあるのか?
チャレンジャーだな。
この姿見たら食おうなんて普通思わないぞ。
『確かそれの皮や牙は人の間では貴重なものとして扱われているはずだ』
おお、そうなのか。
でも、これ出したら確実に騒ぎになるような気がするんだ。
アイテムボックスに確かキマイラもあるんだよね……。
キマイラとともにオルトロスもアイテムボックスの中で永遠に眠っていてもらおう。
うん、それがいい。
やっぱり平和が一番だよ。