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第四十一話 そういうことは早く言ってくれよ

今日は41話、42話更新です。

 フェルの背に乗せてもらいながら、気になっていることを聞いてみた。

 ちなみにスイは肩掛け鞄の中で大人しくお昼寝中だ。

「なぁフェル、森を抜けるのにまだ時間がかかるのか?」

 エルマン王国かレオンハルト王国に行こうと思うって言ったら、フェルが森を突っ切って行った方が東への近道にもなるって言うからそのまま付いてきたけど、森に入ってから既に3週間は経ってるんだけど。

『お主に合わせて速度を落として進んでいるからまだかかるぞ。我の思うままの速度で突っ切ればもっと早いのだがな』

 あ、それなら我慢します。

 フェルの思うままの速度だなんてもっての外だよ。

 そんな速度出されたら掴ってられなくて振り落とされるじゃん。

『それでも人の作った道なりに行くよりは早いはずだぞ』

 あ、そうなんだ。

『この森にはオルトロスの縄張りとグリフォンの縄張りがあってな、人の作った道はそこを大きく迂回しているから遠回りになるのだ』

 …………あれ、俺の耳おかしくなったのかな?

 今聞いちゃいけない名前を聞いた気がするんだ。

 オルトロスって言ったか?

 グリフォンって言ったか?

 オルトロスは双頭の犬の魔物だった気がするし、グリフォンは鷲の上半身とライオンの下半身の魔物だったような。

 俺はゲームや小説のイラストで見たオルトロスとグリフォンを思い浮かべた。

 それってどっちもボスキャラ級のダメなやつじゃないかーーーッ!

「何でオルトロスとグリフォンの縄張りだって分かってんのにこの森通ってんだよっ」

 普通そんな魔物がいたら通らないだろうが。

『うるさいのう。オルトロスもグリフォンも我の敵ではないわ』

 我の敵ではないわってオルトロスとグリフォンだぞ。

『前にも話したと思うが、我と対等に渡り合えるのは古竜(エンシェントドラゴン)くらいのものだ。オルトロスもグリフォンも敵ではない。それに、彼奴等も我には敵わぬと分かっておる。もし、我に挑んでくるとすれば年若い怖い物知らずのオルトロスかグリフォンよ』

 ん?ちょっと待て。

「あのさ、フェルの言い方だと、オルトロスもグリフォンも複数いる感じに聞こえるんだけど……」

『何を言っておる。オルトロスの縄張りもグリフォンの縄張りもそれぞれの繁殖地だ。複数いるに決まっておる』

 ハァーーー?

 そ、そういう大事なことは早く言ってくれよっ。

 ボスキャラ級の魔物が複数いるって、それダメじゃねぇか。

 一頭でもいたら普通はアウトだぞ。

 それが複数って…………。

 アカン、これはアカンぞ。

「な、なぁ、オルトロスとグリフォンの縄張り避けていこうぜ」

 うん、その方がいい。

 主に俺の精神面で。

『何故避けねばならんのだ? このまま行くに決まっておろう。それにもうオルトロスの縄張りに入っておるのだぞ』

「はぁぁぁ?そ、そういうことは早く言えよッ」

『だから今言っただろうが。まったく、お主は何を怒っているのだ?』

 そう言ってフェルはどんどん先に進んでいく。

 はぁ~。

 ため息が出るぜ。

 ってまぁフェルだからしょうがないか。

 フェルにしてみたら、自身が強過ぎるからオルトロスもグリフォンも歯牙にも掛けないってことなんだろうけどさ。

 俺からしたら、これからオルトロスやグリフォンに出会うかもしれないと思うとめっちゃビビるわけよ。

 だってあのオルトロスとグリフォンだぞ。

 へタレだって?それで結構だよ。

 普通はあんなのが出て来たらビビるだろう。

 あんなのが近くに来て平然としていられるのは、フェルみたいな強者だけだ。

 フェルがいるから襲われることはないのかもしれないけど、やっぱり出会いたくはないよな。

 フェルの話だともうオルトロスの縄張りに入ってるみたいだし……。

 オルトロス、出てくるなよ。

 フェルの方が強いのはオルトロスも分かってるみたいだし。

 あ、ただ若いオルトロスが挑んでくるかもしれないってフェルが言ってたんだ。

 いや、まさかね……。

 このまま大人しくして出て来んなよ、オルトロスー。






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