閑話 女神様は異世界甘味の虜
今日は閑話2話続けて更新です。
「はぁ……」
ため息が出るのじゃ。
異世界人が次の供えを差し出すまでは時間があるのじゃ。
その間、甘味はお預けなのじゃ。
あんぱんとじゃむぱんとくりーむぱんは美味しかったのう。
美味しすぎて初日に全部食べてしまうとはのう。
もう少し多く供えるように申し伝えておけば良かった。
はぁ、早く次の供えの時が来ればよいのに。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
次の供えを心待ちにしながら、いつものように水鏡で下界を覗いていた。
「むっ、あ、あれはなんじゃ?」
異世界人が『ねっとすーぱー』で召喚したあの茶色い板は何なのじゃ?
甘い物と言っておったな。
あれは甘味なんじゃろうか?
そのようには見えんのじゃが……。
何々、あれはちょこれーとと言う菓子なのか。
従魔のスライムがねだっておるのう。
彼奴等は基本何でも食するが、ねだるほど欲しがるのは珍しい。
相当に美味しいのか?
ぐぬぬ、妾も食べてみたいのじゃ。
あのあんぱんとじゃむぱんとくりーむぱんを作った世界のものじゃ、不味いはずがないのじゃ。
妾の本能がそう言うておる。
じゃが、次の供えの時ではない。
しかし、あのちょこれーとは食べたいのじゃ…………。
えーい、妾は女神なのじゃ、ちょっとくらいは許されるのじゃ。
要はバレないように気をつければ良いことよ。
そうじゃそうじゃ、そうしよう。
妾は早速異世界人に神託を送った。
「そなた、妾は風の女神ニンリルじゃ。今すぐちょこれーととやらを供え祈るのじゃ。あ、どら焼きも一緒に供えるようにするのじゃ」
この際だからちょこれーとと彼奴等がこの間美味しそうに食しておったどら焼きも所望するのじゃ。
異世界人が妾の神託に驚いておるな。
これが神託かだと?
「そうじゃ。神託なのじゃ。早くするのじゃ」
”お菓子のおねだりに神託って神様としてそれいいのか?”じゃと?
いいに決まっておろう。
甘味は至高なのじゃ。
”威厳もへったくれもない”じゃと?
異世界人め、言いたい放題言いおってからに。
「うるさいのじゃ。神だって楽しみが必要なのじゃ」
ごちゃごちゃ言わず早くちょこれーととどら焼きを供えるのじゃ。
異世界人が『ねっとすーぱー』でちょこれーととどら焼きを召喚している。
祭壇にちょこれーととどら焼きを供えて祈っておるな。
よしよし、それではちょこれーととどらやきを神界へと転送させるのじゃ。
異世界人よくやったのじゃ。
「ぐっじょぶじゃ」
水鏡で地球を覗いたとき良いことをしたときにこう申しておったのじゃ。
「おおう、これがちょこれーととどら焼きかっ」
どれどれ、ではちょこれーとから。
異世界人はこの包みを取ってから食しておったな。
あの異世界人がやっていたように、包みを剥がしてと。
包みから出て来たのは茶色い板じゃった。
うむ、これを食しておったな。
「それにしても、このちょこれーととやらは良い匂いだのう。ずっと嗅いでいたいような甘い匂いがするのじゃ」
それでは一口。
パリンッ。
小気味よい音とともに茶色い板が割れた。
ふおーっ、く、口の中で溶けていくのじゃ。
甘いぞ、そしてほんの少しの苦みもあって独特な味わいじゃ。
これは美味しい、美味し過ぎるのじゃっ。
こんなものは妾の世界には存在せぬ。
このちょこれーとを発明した者も天才なのじゃ。
あんぱんもじゃむぱんもくりーむぱんもこのちょこれーとも美味し過ぎるのじゃ。
どの甘味も、まるでこの世のものとは思えぬほど美味なのじゃ。
羨ましい限りじゃ。
妾の世界にもそういう天才が生まれてくれればちょっとは甘味が発展していくであろうに。
未だに干した果物やハチミツ漬けだけではのう……。
ちと寂しいのじゃ。
はー、ちょこれーと美味かったのじゃ。
次はどら焼きだの。
って、ダメじゃダメじゃダメじゃ。
これでは前回の二の舞になるのじゃ。
このどら焼きはとっておいて明日食べるのじゃ。
…………ゴクリ。
ど、どら焼き、美味そうなのじゃ。
はっ、異世界人に多く供えるよう申し伝えるのを忘れていたのじゃ。
次の供えは多くするよう神託をせねば。
それをするならば、今どら焼きを食っても問題はなかろう。
うん、そうなのだ。
次はたくさん供えがあるはずじゃからな。
よし、どら焼きじゃ。
パクリ。
うむむむむ、美味いッ!
あんぱんと同じ甘く煮た豆だな、これは。
それをしっとりとした甘いパンのようなもので挟んでおる。
両方甘いのじゃが、これがクドい甘さではなく絶妙なバランスなのじゃ。
このどら焼きを発明した者も天才なのじゃ。
妾は
はぁ、次はどんな甘味を食せるのか楽しみじゃなぁ。