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第三十七話 フェルさんのブートキャンプ~ダンジョン編~(前編)

今日は36話、37話更新です。

 俺とフェルとスイでダンジョンに入って、一番最初に遭遇したのはスライムだった。

 スイをかわいがっている俺としてはスライムはちょっとなぁなんて思っていると……。

 「へっ?」

 スライムがジュワっと溶けていく。

 えぇ?何が起こったんだ?

 『スイ、なかなかいい攻撃であったぞ』

 え、今のスイが攻撃したの?

 ってか同族なのに躊躇ない攻撃。

 『スイが酸を飛ばしたのだ』

 フェルがそう言うと、スイがやって見せてくれた。

 スイの触手から水鉄砲みたいにビュッと酸液が飛んでいった。

 かなり高濃度な酸液なのか、当たった石が煙を上げて溶けている。

 …………何、その強力な攻撃は。

 え、スイってそんな強かったのか?

 『これだけの攻撃をするということは、スイは特殊個体なのかもしれんな』

 特殊個体……そ、そうなのか?

 スイはこのままレベルを上げていったら、いったい何に進化するんだろう?

 ま、まぁ、強いに越したことはないんだけどさ。

 『次が来たぞ、今度はお主がやってみろ』

 俺はフェルに言われるまま、スライムにショートソードを叩き付けた。

 スライムはベチャッと潰れて、少しすると地面に吸い込まれていった。

 「ダンジョンって死体とか残らないのか?」

 『ああ。ダンジョンとは魔素を吸収しながら生きている生き物のようなものだ。ダンジョンに入った者は、魔物だろうと人間であろうとダンジョン内で死ねばダンジョンに吸収されその糧となる』

 ああ、この世界のダンジョンはそういうタイプのなんだ。

 絶対ダンジョンでは死にたくないなぁ。

 『次だ。次は魔法を撃ってみろ』

 俺は頷いてファイヤーボールを撃った。

 ファイヤーボールがスライムに当たり爆散した。

 おお、いつもより威力が高いような気がする。

 ネットスーパー(異世界)の食材の効果か。

 俺とスイは湧き出るように次々と襲ってくるスライムを倒していった。

 『よし、次の階に行くぞ。次の階はホーンラビットが出る。角に注意するのだ』

 階段らしき段差を下りていくと、すぐにホーンラビットが襲ってきた。

 頭部に付いた鋭い角を武器に飛び掛ってくる。

 「うおっ」

 咄嗟にショートソードを振ったが致命傷にはならない。

 ビュッ。

 スイの酸液攻撃でジュワっと溶けていった。

 「おお、スイよくやった」

 俺がスイを褒めると嬉しそうにプルプルと震えた。

 『まだまだ来るぞ。油断するな』

 そうだな。

 ここはダンジョンの中だった。

 『それとお主、土魔法を使え。使わねばいつまでたっても習得できんぞ』

 ぐっ……痛いところを。

 それからはストーンバレットを使ってホーンラビットを倒していった。

 しかしながら、所詮は小石1つ飛ぶだけ。

 撃ちもらしたホーンラビットはスイとフェルが倒している。

 『なかなか上達せんな』

 「ハァ、ハァ、そんなすぐに上達するわけないだろっ。っとストーンバレットッ」

 飛び出してきたホーンラビットにストーンバレットを撃ち当てる。

 『やはり小石1つか。もう少し強い魔物でないとダメか?』

 今だってギリギリなのに何を不穏なこと言ってんの?

 「そんなことよりさ、こいつ等フェルがいるのに何で寄ってくるんだ? 森ではフェルが強過ぎて魔物は寄ってこなかったろ? 何でここのはお構いなしに来るんだ?」

 いつもだとフェルが強過ぎるからなんだろうけど魔物がまったく近寄ってこないのだ。

 フェルが気配を消している場合は近寄ってくることもあったが、姿を確認すると一目散に逃げていく。

 だから、旅の途中で魔物に会うことはほとんどなかった。

 それなのにダンジョンの中では雑魚だと言われるスライムもホーンラビットも気配を消していないフェルがいるにも関わらずバンバン襲ってくる。

 『ダンジョンの魔物というのはな、相手の強弱に関わらずダンジョンに進入してきた者は敵とみなすのだ』

 そ、そうなんだ、ダンジョン怖い。

 襲われるの分かってるのに入るとか意味分からん。

 俺はもう絶対ダンジョンなんか入らないぞ。

 『おい、ボーッとするな。次が来てるぞ』

 「おわっ、ストーンバレットッ」

 やっぱダンジョンなんか入るんじゃなかったぜ。

 ホーンラビットを倒しながら、ようやく次の階へと降りていった。

 『この階はゴブリンだ』

 げっ……ゴブリンかよ。

 前回のアレもう思い出したくないぜ。

 『来たぞ』

 げげっ、通路からゴブリンが3匹こっちに向かって走ってくる。

 「ファ、ファイヤーボールッ」

 ファイヤーボールが当たってゴブリンは黒焦げに。

 『土魔法を使えと言っておるだろう』

 そうは言ってもゴブリンが迫ってくると怖いんだよ。

 そうなると多少は使える火魔法の方を咄嗟に使っちまうんだよ。

 『次が来たぞ』

 ギャーッ、また来た。

 しかもゴブリンの数が増えてるっ。

 「ストーンバレットッ、ストーンバレットッ、ストーンバレットッ!」

 小石一つしか飛ばないストーンバレットではゴブリンを減らすことができず、生き残ったゴブリンがどんどん迫ってくる。

 「うわッ、来んなッ。ストーンバレットッ、ストーンバレットッ、ストーンバレットッ」

 ストーンバレットを撃つが、それでもしぶとく1匹が生き残りこん棒を振りかざしてこちらに向かってきた。

 「ひぃぃぃぃぃぃっ」

 悪夢再来だ。

 ビュッ。

 スイの酸液攻撃でゴブリンの上半身はグズグズに溶けていた。

 「スイ~ありがとな。お前強い。最高」

 スイを抱きしめてスリスリする。

 『お主よりスイの方がよほど度胸があるな』

 ぐぬぬ、ゴブリンにはトラウマがあるんだよ。

 誰かさんのせいでな。

 ゴブリンだらけのこの階には苦労したが、スイの助けもあって何とか乗り切った。

 『では、次の階に行くぞ』

 次は4階か。

 その次に5階もあるし……。

 もう地上に戻りたいぜ。

 ハァ。






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