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第三十六話 異世界料理てんこ盛り

今日は36話、37話更新です。

 フェルがいきなり止まった。

 「おい、どうしたんだ?」

 『降りろ』

 降りろっていうなら、降りるけどさ、飯の時間まではもう少し時間があると思うんだけど。

 『実戦をするぞ』

 は?いきなりなんなの?

 『お主、火魔法のときは実戦を踏んで上手く出来るようになっただろう。次は土魔法のためにやるのだ』

 やるのだって、何勝手に決めちゃってるんですか?

 「何を勝手に決めてんだよ。俺、やらないからな」

 『いいや、やるのだ。このままだと土魔法の習得がいつになるやらわからんだろう。無駄に時間をかけるより一度の実戦が功を奏す。火魔法で証明されているだろう』

 くそう、俺だってがんばってるんだぞ。

 なかなか成果がでないのが悲しいところだけどさ。

 火魔法のことがあるから、フェルの言ってることもわからなくはないんだけどさ、いきなりってゴブリンの集落に連れて行かれるとかは止めてほしいわけ。

 「やるやらないは別として、何させようと思ってたんだ?」

 『あれだ』

 そう言ったフェルが見ている方を見ると、洞窟が口を開けていた。

 「洞窟が何だよ?」

 『あれはただの洞窟ではない。ダンジョンだ』

 …………は?

 ダ、ダンジョン?

 ダンジョンって、あのダンジョンか?

 な、何でこんな森の中にあるんだ?

 『まだ出来たばかりの若いダンジョンだ。魔素が濃い場所に時々こういうものが自然にできるのだ』

 魔素というのはその名のとおり魔力の素となるものなのだそう。

 その魔素を取り入れて魔力に変えて魔法を使うということだ。

 分かったような分からんような。

 フェルが言うには、高ランクの魔物(魔石持ち)の亡骸があったり、魔素が溜まりやすい地形であったりすると、稀にダンジョンが生まれるらしい。

 「いきなりダンジョンなんて、また無茶苦茶なこと言い出しやがって。ダンジョンなんて無理に決まってるだろうが。俺は入らないからな」

 『無理ではない。中を調べたが出てきたのはスライムにホーンラビット、ゴブリン、コボルトとたいした魔物はいなかった』

 いやいやいや、俺からしたらたいしたことなくないからね。

 ってか、中を調べたって入ったのか?

 帰りが遅かったと思ったらダンジョンに潜ってたんだな。

 『5階層と浅いダンジョンでお主のような初心者でも大丈夫だろう』

 5階層で浅いって、俺からしたら全然浅くないからな。

 ってか俺はダンジョンなんぞ潜らん。

 『では、行くぞ』

 「待て待て待てっ。行くぞじゃねぇよ。何普通にダンジョン入ろうとしてるんだよ。俺は行かないからな」

 『まったく、なぜお主はそう腰抜けなのだ?』

 フェルさん、そこは腰抜けじゃなく慎重って言ってくれないかな。

 「俺は慎重派なだけだ。いきなりダンジョンなんて無理過ぎだろうが」

 『フンッ、物は言いようだな。お主のやり方で順調に魔法の習得ができれば我とて口出しはせん。しかし、お主のやり方では火魔法の習得でさえ怪しかっただろう』

 ぐぅ……それは確かにそうかもしれないけど。

 『分かったろう。我の言うことが正しいのだ。お主とスイには結界を張ってやるから心配はいらぬ。行くぞ』

 フェルは何としてもダンジョンに連れて行くつもりなんだな。

 それならば……。

 「ちょっと待て。どうしてもダンジョンに行くならば、準備が必要だ」

 ここで活躍してもらうぜ、ネットスーパーさん。

 ネットスーパー(異世界)の食材でステータス値の底上作戦だ。

 怪我したくないし死ぬなんてとんでもない。

 ダンジョンなんて未知の世界に入るんだから、少しでも強くなっておかないとな。

 「フェルには言ってなかったんだけどさ、異世界の食材を食うと強くなれるんだよ」

 『なぬ?』

 俺は、ネットスーパー(異世界)の食材を食うと時間制でステータス値が上がることをフェルに話した。

 よくは分かってないが、食材の種類とか何の料理かとか食べる量によっても時間やステータスの何が上がるのかが違うことも説明した。

 「ほら、前に異世界の食材でご馳走しただろ。そのときフェルが気力が漲るって言ってたじゃん。あのときはめっちゃ上がってて、こっちがびっくりしたぜ」

 『ほう、そういうことだったのか』

 ネットスーパー(異世界)の食材を食うと調子がいいというのはフェルも感じていたみたいだ。

 『ということは、異世界の食い物を食ってからダンジョンに入るということか』

 「そういうこと」

 調理すると時間がかかるから、とりあえずすぐ食える惣菜類を中心にネットスーパーで購入していく。

 唐揚げ、コロッケ、メンチカツ、厚切りロースかつ、焼き鳥、酢豚、アジフライ、海鮮ちらし、スモークサーモンのマリネ、ポテトサラダ、ピザ、シュークリーム、ケーキ、etc.

 とにかく目に付いたものをどんどん購入していく。

 どれが何のステータス値を上げるかなんてわかってないから、とにかくいろんな種類を食ったほうがいい。

 とは言っても、いくらなんでも全部は食えないから全種類少しずつ食って、残りはフェルに食ってもらおう。

 残り物で申し訳ないけど、こういうことになったのもフェルのせいだしな。

 あ、スイにもあげないと。

 異世界ゴミでレベルアップはもちろん、ステータス値も底上げだ。

 あと飲み物も買ってと、よし、こんなもんかな。

 ネットスーパーで買った惣菜類を並べていく。

 異世界料理がてんこ盛りだ。

 「どれが何のステータス値を上げるのかわからないから、俺はとにかく多くの料理を食わなきゃならない。でも、俺の腹にも限りがある。少しずつ食ってくから、残りはフェルとスイで食ってくれるか? 残り物で悪いとは思うけど、ダンジョンに入るためだからな」

 『あい分かった』

 フェルさんや、涎が垂れてるよ。

 スイも高速プルプルして興奮しないの。

 さて、食いますか。

 俺は一口食って残りをフェルに渡していく。

 惣菜が入っていた容器類はスイに。

 「ああ、言い忘れてたけど、異世界の食材以外のものを食うとレベルアップするみたいだ。こういうのとか、こういうのな」

 惣菜の入っていた容器類を指しながらフェルに説明する。

 『む、そうなのか。そうなると、スイはレベルアップし放題だな。異世界のものは不思議なのだな』

 「不思議って俺がいた元の世界でだってそんなことはなかったんだぞ。こっちにきたらこんなことになって、俺だって不思議だよ」

 本当にどんな原理でそうなってるか俺の方が聞きたいくらいだぜ。

 まぁ異世界転移だなんて摩訶不思議な現象に遭ったんだし、何でもありの世界だな。

 どんどん食い進めていく。

 スイには容器類を食わせてレベルアップを図りつつ、ステータス値底上げの為に惣菜もちょこちょこ食わせていく。

 フェルも俺の残りをガツガツ食っている。

 「ふー、食った食った。最後にデザートだ」

 最後にシュークリームとケーキを一口ずつ。

 残りはフェルとスイで美味そうに食っている。

 「うぷっ、もう食えない」

 どれどれどれくらいステータス値上がってるかな?

 


 【 名 前 】 ムコーダ(ツヨシ・ムコウダ)

 【 年 齢 】 27

 【 職 業 】 巻き込まれた異世界人

 【 レベル 】 3

 【 体 力 】 110(+24)

 【 魔 力 】 110(+23)

 【 攻撃力 】 83(+19)

 【 防御力 】 82(+17)

 【 俊敏性 】 78(+16)

 【 スキル 】 鑑定 アイテムボックス 火魔法

         従魔

        《契約魔獣》 フェンリル ベビースライム

 【固有スキル】 ネットスーパー



 えーと、2割ちょいアップってところか。

 もう少しアップしてくれてたら良かったけど、贅沢はいえないな。

 フェルとスイはどうなってるんだろう?

 二人を鑑定してみると、フェルはステータス値が軒並み3割弱アップしているし、スイはレベルが16にアップしてステータス値は俺と同じく2割ちょいアップしている。

 『お主の言ったとおり、ステータス値が上がっているな』

 フェルも鑑定したみたいだ。

 『これでダンジョンも問題ないな。行くぞ』

 問題なくはないけど、というか大アリなんだけど、ここで入らないって言ってもきっとフェルにダンジョンに引き擦り込まれるだけだろうしね。

 俺はアイテムボックスからショートソードを取り出した。

 覚悟を決めて入りますか。

 「あ、フェル、結界はしっかり張ってくれよ」

 へタレと言うべからず。

 安全第一なんだよ、俺は。

 


 



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