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第二十八話 ボッタクリに遭った

2つ目のレビューいただきました。

嬉しいです。ありがとうございます。

 「地図があればなぁ……」

 「ん?何だ、お前地図が欲しいのか?」

 リーダーが俺のつぶやきを聞いていたのかそう言った。

 「え、ああ、はい。大雑把なものでもいいので地図があれば助かるなと思いまして」

 そう言うと4人の冒険者たちが互いに目を合わせながら小声で話し出した。

 「おい、実を言うとな、俺たちは地図を持っている」

 えっ、マジで?

 「俺が懇意にしていた先輩の冒険者がいたんだが、その冒険者が引退するときに譲ってもらったんだ」

 おーいいなぁ、羨ましい。

 俺も地図欲しいぜ。

 「もちろん軍のお偉いさんが持ってるような詳細なもんじゃなく、どこら辺にどの国がっていう大雑把なもんでしかないがな」

 うんうん、別にそれほど詳細じゃなくていいんだよ。

 国々の位置関係っての、そういうのが分かればいいんだよね、俺としても。

 「それでな、欲しければお前に譲ってやってもいい」

 そ、それホントか?!

 「この地図はもう俺たちの頭に入っているからな。これがなくてもなんとかなる。それでな、金貨1枚でどうだ?」

 金貨1枚か、うーん……。

 地図は欲しいけど、金貨1枚ねぇ、紙が貴重なことももちろん分かってはいるんだけど。

 金貨1枚ねぇ、悩むな。

 「その地図を見せていただけませんか?」

 見てから判断した方が良さそうだ。

 「おう、いいぞ」

 リーダーが懐から折りたたまれた地図を取り出した。

 「これだ」

 地図を開いて見せてくれた。



 挿絵(By みてみん)



 うん、本当に大雑把だね。

 でも、これで国の位置関係とかは分かる。

 欲しいんだけど、これで金貨1枚はちょっと躊躇するよな。

 「言っとくけどな、こりゃあ貴重なもんなんだぜ」

 それは分かってるよ。

 本屋にも置いてないし、図書館にも見当たらなかったんだから。

 「だが、こうして酒奢ってくれたあんただからな、少し負けてやるよ。そうだな、銀貨8枚でどうだ?」

 銀貨8枚か。

 地図は欲しいし、紙も貴重だし、うーん……。

 よし、買おう。

 あった方がいい物だし、銀貨8枚くらいは経費としてしょうがないか。

 「銀貨8枚でお願いします」

 「よし、売った」

 俺はリーダーに銀貨8枚を渡して地図を手に入れた。

 「んじゃ、俺たちゃ明日早いからこれで帰るとするぜ」

 「はい。為になるお話ありがとうございました。それに、地図も」

 「ああ、いいってことよ。それじゃあな」

 そう言って4人の冒険者たちは帰っていった。

 おおー、地図が手に入ったよ。

 本屋にもなくて、図書館で昔の地図があればそれを元に冒険者に話を聞いて自作できないかって考えてたけど、結局図書館にも地図らしきものはなかったしな。

 もう地図を手に入れるのは無理かもって考えてたけど、こんなところで手に入れられるとはね。

 運が良かった。

 「プッ……」

 「クスクス」

 ……何だ?何か俺の方見て笑ってる冒険者らしき奴等がいるんだが。

 「ブッ、おい、お前ら笑っちゃ悪いだろうが」

 冒険者の一人が笑ってる奴等にそう言った。

 そう言ってるお前も笑ってるだろうが。

 「あのー、俺に何か?」

 これ俺怒ってもいいよな?

 笑われて、ちょっとムッとしながら男にそう言うと、男は「悪い、悪い」と返すが全然悪びれてないような感じだ。

 「さっきさ、あんたらの話聞いてたけど、あんた騙されてるぜ」

 は?何言ってんの?

 騙されてるって、どういうことだ?

 「あんた、冒険者から地図買ってただろ?」

 買ったけど、それがどうしたって言うんだ?

 「あれな、冒険者ギルドで普通に売ってるぞ」

 ……………………は?

 いやいやいや、ちょ、ちょっと待て。

 冒険者ギルドで、普通に、売ってる?

 ……はぁぁぁぁぁぁぁあ?

 「俺も持ってるし。ほら」

 そう言って見せてくれたのは、俺がさっき冒険者から銀貨8枚で買った地図とまったく同じものだった。

 俺が同じ地図を見て唖然としていると、さらに男が爆弾を投下してきた。

 「ちなみにそれ、冒険者ギルドじゃ銀貨1枚で売ってるからな」

 ギンカ、イチマイ……。

 銀貨1枚を銀貨8枚だとぉーーーっ?!

 ぬおぉぉぉぉっ、騙されたーーーっ!

 「あいつら銀貨1枚を銀貨8枚だなんて随分ボッタクったよなぁ。ガハハハハ」

 その言葉に酒場にいた冒険者たちが笑った。

 チクショー、笑うんじぇねぇよ。

 こっちは泣きたいくらいだぜ。

 「この地図はな冒険者ギルドで冒険者たちから話を聞いて独自に作ってるもんなんだ。だから紙だが値段も俺らでも手に入れられる設定になってる」

 「そうそう。まぁ、地図買わずに自分の記憶頼りだって冒険者もいるけど、地図買ってる奴もけっこういるよな。そんで、自分の通った街とか村を書き込んだり、この途中には湖があるとか、この街までの通り道はにこういう魔物が出るとか、いろいろ書き込んで自分なりの地図にしてくんだよな」

 「自分の国で活動することが多い冒険者なんかは、その国だけ大きく書き写して、自分で細かく書き込んでいく奴もいるよな。もっとも、そういうのは財産だから他人にホイホイ見せないけどな」

 「そう言えば、商人ギルドでも同じような地図売ってるみたいだぜ」

 「まぁ冒険者も商人もいろんな国渡り歩いてるからな」

 笑っていた冒険者たちが次々とそんなことを言ってきた。

 冒険者ギルドだけじゃなく、商人ギルドでも売ってたのか。

 本屋の主人は一言もそんなこと言ってなかったんだけどな。

 本屋も商人ギルドに入っているんだろうけど、本屋っていうと他の街や国に売り歩くってこともなさそうだし、その辺のことには疎かったのかもしれない。

 何にしろ、そこで笑ってる冒険者たちよ、そういうことは俺が騙される前に言ってくれよー。

 「「「「「「そりゃ、騙される方が悪い」」」」」」

 ……ごもっともです。

 ぐぬぬぬ、悔しいが正しい。

 この世界じゃきっとこの程度のこと罪にもならないだろう。

 こりゃ勉強したと思って諦めるしかないな。

 トホホ……。






地図は位置関係がわかればいいということと、大雑把に作ったものなので……

突っ込まんといてください。

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