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第二話 子供にいろいろ聞いてみた

 王都の街は中世ヨーロッパのような街並みだ。

 俺はまずそこら辺にたむろっていたストリートチルドレンに声を掛けた。

「ちょっといいか?俺は田舎から出てきたばっかりで、この国のこととか疎いんだ。そこの屋台の串焼きおごってやる代わりいろいろと教えてほしいんだけど」

 最初は訝しがっていたが、食欲には勝てなかったのかOKしてくれた。

 子供たちに屋台の串焼きを2本ずつ渡して話を聞いた。

 まず一番大事と言っても過言ではない貨幣価値。



   鉄貨1枚  → 10円

   銅貨1枚  → 100円

   銀貨1枚  → 1,000円

   金貨1枚  → 10,000円

   大金貨1枚 → 100,000円

   白金貨1枚 → 1,000,000円



 いろいろ聞いてみて判断すると、こんな感じだろう。

 子供たちに奢った屋台の串焼きが1本鉄貨5枚。

 1か月4人家族で金貨6枚もあれば最低限暮らしていけるそうだ。

 他にも国に依存しない冒険者ギルドと商人ギルドというものがあり(これはファンタジー系の小説では定番だね)このどちらかに所属していると、国から国へ街から街への移動がスムーズにいく。

 要は余計な金がかからないということらしい。

 冒険者ギルドか商人ギルドのギルドカード以外の身分証か身分証なし(田舎者や自分たちのようなストリートチルドレンは身分証を持ってないということだった)の場合は国や街によっても違うが入るのに税金がかかるらしい。

 この辺りはテンプレだな。

 それとこの国のことも聞いてみた。

 そしたら魔族と争いがあるのは本当らしいが、どうもこの国の方から仕掛けているらしい。

 人族に仇なす魔族を滅ぼし云々というのが上が言っている理由らしいのだが、結局のところ魔族の国の領地狙いってことのようだ。

 人族の治める近隣諸国ともキナ臭いことになっていて、この国から逃げ出す人も少しずつ出てきているとのことだった。

 自分たちも戦で親を失った孤児だと言っていた。

 子供たちは意外にも物知りだった。

 いろんな雑務を請け負って日銭を稼いで生きているから、いろんなものを見聞きすると言っていた。

 ストリートチルドレン逞しい。

 ともかくだ、今晩はここの宿屋に泊まって明日この王都を出る。

 子供たちに聞いたら、王都から隣国との境にあるキールスの街までの乗合馬車が毎日運行されているとのことだったから、それに乗って王都を脱出するつもりだ。

 その後隣国に行き、そこからはまた考える。

 とにかくこのレイセヘル王国を離れることが第一だ。

 そのためには元手が必要になってくるわけだが、それについては考えがある。

 それに、俺が国から支給された金貨20枚があるしな。

 1人分としては少し多めにくれたのは、一応は自分たちの都合で誘拐まがいに召喚した詫びの思いが多少なりともあるのだろう。

 この胡散臭い国がこれだけくれたのは俺にとっては好都合だ。

 とりあえずこれで当座はしのいでいこう。





◇ ◇ ◇ ◇ ◇




 俺は子供たちに聞いた手ごろな値段の良心的な服屋に来ていた。

 今の俺は召喚されたときのスーツ姿のままで目立ってしょうがないからだ。

 通りを歩く人と同じようなくすんだ色のシャツに茶色いズボンを購入した。

 服は思ったよりも高くて銀貨7枚したが、俺が着ていたスーツとワイシャツとビジネスバッグを店が金貨3枚で買い取ってくれたから差額の金貨2枚と銀貨3枚は俺の懐に入った。

 ビジネスバッグに入っていた筆記用具や書類、スマホなどの小物類をアイテムボックスに入れようかとも思ったのだが、この世界でアイテムボックスがどういう扱いなのか不明なので、ここは安易に見せない方がいいだろう。

 小説だとアイテムボックスが貴重なスキルのパターンもあるからな。

 ありがたいことに店主が布製の肩掛け鞄をおまけにくれたのでそれに入れることにした。

 靴はこのまま革靴でも大丈夫だろう。

 服屋を去る前にこの辺で手ごろな値段で泊まれる宿屋を聞いた。

 ここから3軒先の宿屋がおすすめということなので、その宿屋に向かった。

 服屋の店主おすすめの宿は1泊食事つきで銀貨4枚だった。

 夕食の後に部屋に戻り、確認するべきことをする。

 まずは……

「ステータスオープン」



 【 名 前 】 ツヨシ・ムコウダ

 【 年 齢 】 27

 【 職 業 】 巻き込まれた異世界人

 【 レベル 】 1

 【 体 力 】 100

 【 魔 力 】 100

 【 攻撃力 】 78

 【 防御力 】 80

 【 俊敏性 】 75

 【 スキル 】 鑑定  アイテムボックス

 【固有スキル】 ネットスーパー



 城で説明を受けたとおりステータスオープンと唱えると、俺の目の前にステータスが書かれた半透明のウィンドウが出現した。

 何でも鑑定のスキルのある召喚勇者だけは(とは言っても俺は勇者じゃないけど)、いつでも自分のステータスを確認できるそうなのだ。

 普通は街のギルド支部や神殿に備えられているステータス確認の魔道具で自分のステータスを確認するのだと言っていた。

 そういえば、このステータス確認の魔道具は我が国の魔道具職人が心血を注いで開発したとかなんとか言って自慢してたな。

 まぁそんなことはさておき、この世界の一般人のステータス値が70前後だというから、俺は一般人よりもちょっと強いくらいか。

 スキルの鑑定とアイテムボックスについては、他の3人にも漏れなくついていたから召喚者特典なのだろう。

 城にいたときに、アイテムボックスは召喚者の場合はとにかく容量がたくさんあるらしく、過去の召喚勇者で魔物が1000匹以上入ったという言い伝えもあるというようなことをチラっと言っていた。

 それと言語についても召喚者はこの世界に召喚された時点からこの世界の言語が理解できるとも言っていたな。

 これも召喚者特典の類なのだろうと思う。

 そういうのは異世界もののテンプレだしな。

 一番の問題は、俺の固有スキルであるネットスーパーだ。

 これがなんたるかはもちろん分かる。

 休みの日は家に篭りたいタイプの俺は大いに利用させてもらっていたからな。

 料理は嫌いじゃなかったから届けてもらった食材で料理してそれを食いながら撮りためたドラマを見たり、ビールを飲みながらネット小説を読み漁ったりして過ごすのだ。

 それが俺の休日の定番だ。

 ただこの固有スキルのネットスーパーをどうやって使うのかが問題だ。

「ネットスーパー」

 唱えてみても変化なしか。

 なら触れてみたらどうか?

 固有スキルのネットスーパーの文字に触れてみると、画面が変わった。

「まんまネットスーパーのサイトじゃねぇか」

 よく利用していたエオンのサイトそのまんまだった。

 とりあえず鉄貨8枚の500ミリリットルの水と1個銅貨1枚の菓子パンを2つをカートに入れてみた。

 どうやら価格は日本での価格が反映されているようだ。

 購入手続きの画面になると、『残金が不足しています。チャージしてください。』と表示された下に四角い枠があった。

「金をチャージしろってことだよな? この四角のところにか?」

 恐る恐る銀貨をその四角い枠に近づけると……枠の中に銀貨がスッと吸い込まれていった。

 そして注文を確定させると、目の前に銀色の粒子が集まって徐々にその姿を現した。

 注文すると配送されてくる段ボール箱である。

 段ボール箱を開けると中にはさっき注文した水と菓子パンが入っていた。

「おおーっ、これはかなり使えるぞ!」

 王国のお偉いさん方にはネットスーパーが戦闘スキルじゃないってこと以外何のこっちゃわからなかったろうし、一緒に召喚された勇者3人は笑っていたが、これはかなり使える良いスキルだぞ。

 金さえあれば食うに困らないし、その金だってこのスキルで稼げるかもしれない。

 勇者みたいなチートじゃないが、このスキルがあればこの世界で俺は大金持ちになれるかもしれないぞ。

 俺が子供たちから得た情報だと、塩も海に面していない国は高値らしいし、胡椒なんかのスパイス類や甘味を口にできるのは貴族くらいなものだそうだ。

 俺はこのネットスーパーで塩やら胡椒やら砂糖やらを日本で買っていた時の価格でじゃんじゃん入手できる。

 だが、その塩やら胡椒やら砂糖やらは、こちらの世界では高値で売れるわけだ。

 そうなれば俺にはかなりの利益が入ってくる。

 それに探せば他にも利益を生む商品があるはずだ。

 何せ今のネットスーパーは食材だけじゃなく日用品から衣類まで幅広く扱っているからな。

 そういうことを考えると商人ギルドに登録したいところだが、この国で登録するのはマズいだろう。

 何かの拍子で俺のスキルのことや金が稼げることが分かった場合、この国から横やりが入る可能性があるからな。

 登録するのなら隣国に入ってからだ。

 ともかく明日だ。

 早くこの街を離れて、更には隣国へ。

 明日からは旅路でしばらくはベッドで眠ることもできないだろう。

 俺は明日のために眠りについた。






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