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第十九話 国産黒毛和牛ステーキ肉

 「フェル、今日はこの辺で野営にするか」

 『うむ』

 フェルが獲ってきた魔物で大分儲けさせてもらったから、今日はご馳走だ。

 異世界の肉を大盤振舞いするぜ。

 「なぁ、フェル。フェルのおかげで儲かったから、俺のスキルで取り寄せられる異世界の食い物をご馳走するよ。何がいい?」

 『異世界の食い物か、やはり肉だな』

 やっぱりそうくるか。

 俺はネットスーパーを見ながら、何がいいかと選んでいく。

 フェルが俺の隣で期待した目でスタンバイしてるから、とりあえずはすぐに食べられるものがいいな。

 そうなると惣菜だな。

 どれがいいかな……お、鶏肉の竜田揚げがあるからそれと肉団子、メンチカツもいいな。

 それからハンバーグだな、それから厚切りロースかつ、あとから揚げがあるからそれも。

 ポチポチとカートに入れていく。

 『おい、ま、まだか?』

 フェルさん、画面見ながら涎垂らすのは止めてくれる?

 我慢できないといった感じで涎を垂らしまくってるフェルのために、惣菜分を先に精算することにする。

 1メニューにつき何個か買ったから全部で銀貨4枚と銅貨7枚。

 とりあえず金貨5枚チャージして、そこから支払った。

 代金を支払うと、すぐにダンボールが現れる。

 ダンボールの中から惣菜を取り出すと、すべて温かいままだった。

 「おおー温かいままじゃんか。これはいい」

 温かい惣菜をパックから取り出して皿に盛りフェルの前に並べていく。

 「ほら、どうぞ」

 そう言うや否や、フェルは惣菜に飛びついてバクバク食い始める。

 でも、まだまだ食うぞこりゃ。

 用意した惣菜だけでは足りないだろうから、もう少しネットスーパーで見繕っておくのと考えてたメインディッシュ用の肉を買わないとな。

 あらびきソーセージと焼き豚(パック入り)でいいか。ソーセージは軽く塩胡椒で焼いて出して、焼き豚はフェルならそのまま出してもいいな。

 あとはメインの牛肉だな。

 メインディッシュは国産和牛のステーキを考えていた。

 この世界のいろんな肉を食べてみて思ったんだけど、割と美味いんだよな。

 だからそれ以上のものをって考えたら、やっぱり国産和牛でしょ。

 ちょっと高いけど大奮発だ。

 国産黒毛和牛ステーキ用(モモ肉)があったからこれにした。

 ステーキ肉1枚(250グラム)で銀貨1枚と銅貨5枚だった。

 さすがに高いぜ。

 フェルの食べ具合から考えると10枚くらいは食うな。

 あとは俺の分として、おお、これとこれがいい。

 あらびきソーセージ、焼き豚、ステーキ肉、俺の食う分で金貨2枚也。

 ネットスーパーで買い物をしてる間にフェルは惣菜を食べ終えていた。

 『何だ、次はそれを食わせてくれるのか?』

 フェルさん、食うの早いです。

 「ちょっと待ってて、火を通した方が美味いものもあるから、とりあえずこれ食っててくれ」

 パックから出した焼き豚の塊を5つほど皿に出してやった。

 フェルが食っている間にソーセージを塩胡椒で軽く焦げ目が付くくらいに焼いていく。

 「ほれ、これもどうぞ」

 ソーセージを出してやるとフェルは嬉々として齧り付いた。

 『どれもこれも美味いぞ』

 それは良かった。

 でも、最後にメインディッシュがあるからな。

 国産和牛ステーキの最初の2枚は塩胡椒のみで焼いていく。

 「メインディッシュの国産和牛のステーキだ。まずは塩胡椒で」

 『ふむ。はぐはぐ…………む、この肉は何と柔らかく美味いのだっ。これは美味い、美味いぞっ』

 「ふふん、そうだろうそうだろう。この肉はな、俺の国で美味くなるようにってこだわって育てられた牛って言う動物の肉なんだ」

 『何と?! 異世界のお主の国では食うために牛とやらを育てているというのか?』

 「え? ここでは畜産、動物を育てて肉を食べたりしないのか?」

 『せんな。この世界には魔物があふれている。その魔物を狩ってその肉を食えば事足りる』

 なるほどな、確かに魔物の肉はけっこう美味いし、その魔物がたくさんいるんならわざわざ牧畜する必要性もないのかもしれない。

 フェルと話しながらも追加のステーキを焼いていく。

 今度は以前にも使ったステーキ醤油だ。

 にんにく風味、おろし風味、玉ねぎ風味、バター風味のコンボで次々とステーキを出していく。

 『それにしても美味くなるように育てるとは、お主の国は随分と食にこだわりがあるようだな』

 「うん、それは間違いないね。俺のいた国は食には妥協しないし、人一倍こだわりを持っていたと思うよ」

 B級グルメから高級フレンチまであらゆる店があるし、東京なんか海外に旅行しなくてもたいがいの国の料理が食えるもんな。

 『なるほど。だからお主の作る料理も美味いのだな』

 まぁ、ネットスーパーとあらゆる調味料を作ってくれた食品会社の勝利なんだけど。

 フェルは国産和牛ステーキを存分に堪能して満足したようだ。

 『うむ、美味かった。それにしても、前から思っていたが、お主の料理を食うと活力が漲るな。今日は特にだ。今ならかつて引き分けた古竜(エンシェントドラゴン)にさえ余裕で勝てる気がするぞ』

 え、まさかあのとんでもない威力発揮してる?

 って、あーーーっ、今日は全部ネットスーパー(異世界)の食材だったんだ!

 いつもはメインの肉はこっちの食材を使ってるから、異世界産の食材はたいした量つかってなかったんだ。

 だから威力を発揮したとしても、フェルくらいになるとたいした威力にはなってなかった。

 それが今日は、フェルが食べたものは全部ネットスーパー(異世界)の食材。

 フェ、フェルさん、活力が漲ってるって……

 フェルを鑑定してみる。



 【 名 前 】 フェル

 【 年 齢 】 1014

 【 種 族 】 フェンリル

 【 レベル 】 906

 【 体 力 】 9843(+5118)

 【 魔 力 】 9481(+4550)

 【 攻撃力 】 9036(+4518)

 【 防御力 】 9765(+4394)

 【 俊敏性 】 9684(+4551)

 【 スキル 】 風魔法 火魔法 水魔法 土魔法 氷魔法 雷魔法

         神聖魔法 結界魔法 爪斬撃 身体強化 物理攻撃耐性

         魔法攻撃耐性 魔力消費軽減 鑑定

 【 加 護 】 風の女神ニンリルの加護



 …………。

 あれ?俺の目がおかしくなったか?

 何度も瞬きしてからもう一度フェルのステータスを見る。

 おう……フェルのステータスが約5割増になってるよ。

 このステータスの上がり具合は食った量とか材料の質とかどんな料理かってのが関係してるんだろうなぁ。

 何がどうなってこうなったのかわからんけど、ネットスーパー(異世界)の食材のせいなのは間違いない。

 でも、だけど、きっと大丈夫。

 だって前に確認したときには時間制限があったし。

 フェルは異世界産の食材をたくさん食べたけど、遅くとも明日の朝までには元に戻ってるはず。

 多分……。

 『おい、活力が漲ってジッとしているのが惜しい。狩りに行って来るぞ』

 「ちょ、ちょ、ちょい待ち。ま、魔物が俺を襲ってきたらどうすんだよっ?」

 もう日も落ちて暗くなってるってのに一人にしないで欲しいぜ。

 『ぬ、お主の周りに結界を張っていく。今の我が張った結界なら余裕でドラゴンのブレスも弾き返すだろう』

 ドラゴンブレスも弾き返すって、あんた……。

 『では行って来る』

 そう言ってフェルは暗い森の中へと飛ぶように駆けていった。

 「……はぁ、自分の飯でも食うか。って真っ暗じゃねぇか」

 フェルがいたときは、フェルの銀色の毛並みの体が淡く発光してるようで(魔力とかそういうものの影響か?)暗くてもあまり気にならなかったのに。

 「こういうときこそネットスーパーだな」

 俺はネットスーパーの画面を開いて電池付きの懐中電灯を購入した。

 「これでよしと。飯食おう」

 ずっと肉続きだったから、これ見たら食いたくなった。

 幕の内弁当だ。

 それと缶コーヒー。

 日本にいた頃は毎日飲んでいた。

 「はぁ、少し冷めちまったけど幕の内弁当美味いな。それに缶コーヒーもウメェ」

 じっくり食事を楽しんだ後、やることもないから寝ることにする。

 マントにくるまって寝ようとしたが、ちょっと待てよと思いとどまった。

 確かあったような……。

 ネットスーパーの画面を出した。

 「えーっと、お、あったあった。枕と敷布団と毛布っと」

 フェルのおかげで大分金の余裕がある今、枕と敷布団と毛布は買ってもいいだろう。

 これがあったらこれからの野宿も随分快適になる。

 よし、買っちゃおう。

 ポチっとな。

 「よしと。フェルの結界魔法もあるから心配いらないし、これで今日はグッスリ寝れそうだな」

 野宿とは思えない寝心地の良い寝具に包まれながら俺は眠りに落ちていった。






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