第十五話 俺には肉が必要なんです
日間総合2位になりました!
お読みいただいている皆様のおかげです。
でも、に、2位ですよ。
嬉しいけど、ちょっとビビッてます。
冒険者ギルドに入ると、まだ早い時間だったのか冒険者の数も少なかった。
もう少ししたら依頼帰りの冒険者でごった返すことだろう。
今のうちに依頼達成報告とフェルの獲物の換金しておくか。
マージュ草も摘んできたから掲示板からマージュ草採取の依頼書も剥がしておく。
俺は一番空いている窓口に並んだ。
俺の前に2人しかいなかったからすぐに順番が回ってきた。
受付嬢にギルドカードを渡すと「キアユ草採取ですね?」と聞かれたから、頷いてキアユ草を差し出した。
「え?今朝受注したばかりでこんなに採取できたんですか?」
キアユ草を40本出すと少し驚かれた。
「え、あ、たまたま見つけて……」
げ、40本は多すぎたか?
これも鑑定様様ではあるんだけど、変に目をつけられるのもあれだから気を付けよう。
「群生地帯を見つけたんですね。運が良かったんですね」
受付嬢がそう言ってなんか1人で納得してる。
まぁそういうことにしておいてもらおう。
「それではキアユ草×5で一組。8組ありますので、銀貨8枚となります。ご確認ください」
銀貨8枚を受け取り、「あとこれお願いします」とマージュ草採取の依頼書を渡す。
依頼受注の手続きをしてもらった後に「マージュ草もあるんで」と今度は5本だけ渡す。
摘んできた分全部渡したらまた何か言われそうだし。
余ったマージュ草はアイテムボックスに保存しておいて、次の街で依頼を受けた分に回せばいいや。
「マージュ草もあるんですね。こちらはマージュ草×5で一組。1組ですので銀貨1枚と銅貨3枚となります。ご確認ください」
安心した、こういうのもありなんだね。
受注してすぐ達成っていうのだと何か言われるかともちょっと思ったけど大丈夫みたいだ。
鑑定が役立ってくれたから思ってたよりも稼げたな。
さて次はフェルの獲物の分だな。
「あと、レッドボアとかあるんですけど、買い取ってもらえますか?」
「えっ?レッドボアですか?でも、あなたGランクじゃ……」
どうやらレッドボアはGランクの身分で狩れるような魔物ではないみたいだ。
まぁ、見た目からしてデカい猪だからな。
あんなの狩れって言われても絶対無理だし。
「いやいや、私ではないです。私の従魔が獲ってきたんですよ」
俺がそう言うと、受付嬢はフェルを見て「ああ、なるほど」と言って納得した。
「大きい魔物等の買取はここの隣の買取窓口になってますので、そちらでお願いします」
了解ですー。
うん、今の受付嬢はなかなか良かったな。
ここは受付嬢によって対応が違うのかも知れんな。
まぁこれで依頼もこなしたし、さっさと次の街に移動するつもりだからもうここに来ることもないけどね。
では隣の窓口でフェルの獲物を換金してもらいますか。
もちろん肉は全部こちらで引き取るぜ。
「すみません、買取お願いします」
「おう、じゃここに出してくれ」
冒険者上がりっぽい厳ついおっさんが対応してくれた。
「えーっと、けっこう数があるんですがここに出して大丈夫ですか?」
「数があるって、お前アイテムボックス持ちか?」
「はい、一応。それじゃ出しますね」
まずはオーク×5を出す。
次はレッドボア×2だ。
「ちょ、ちょーっと待て。まだあるのか?」
え、まだまだあるけど。
頷くと、おっさんに「ここじゃ置き場がねぇ、付いて来い」と促された。
「あ、ちょっと待ってください。従魔がいるんで、一緒にいいですか?」
おっさんに許可をもらってフェルを呼んだ。
俺とフェルはおっさんの後について買取窓口の裏手にある倉庫に入った。
「そうか、お前が噂のヤツか」
え、噂って何よ?
「フェンリルを従魔にしたヤツが街に来たって噂の的になってんぞ」
げっ、そんなことになってんのかよ。
フェルがいるから、まぁ目立つとは思ったけどさ。
「これも従魔が獲ってきたやつか」
「まぁ、そうですね。それじゃ残り出しますね」
俺は残りの魔物を出していった。
ロックバード、ジャイアントドードー、ブラックサーペント、コカトリス×3、ジャイアントディアー、マーダーグリズリー。
「これで全部です」
おっさんはあんぐり口を開けて呆然としていた。
おい、おっさん大丈夫か?
全然動かないから「大丈夫ですか」って声をかけて、ようやくハッとしたようにおっさんが我に返った。
「こ、こりゃあまた、すげぇな。数もだが獲ってきた魔物がまたすげぇ。ロックバードにジャイアントドードー、ジャイアントディアーはBランクだし、ブラックサーペントとマーダーグリズリーに至ってはAランクの魔物だぞ」
え、そんなすごい魔物だったの?
やけにみんなデカいなぁとは思ってたんだけどさ、全部それなりとはねぇ。
あ、物騒な名前なのだけはある程度のランクがあるのかなとは思ってたけどさ。
どっちにしろみんなフェルが獲ってきたから俺は関知してないんだけどね。
それより俺は切実に知りたいことがある。
「あ、あの、その魔物たちって全部食えますよね?」
そうだ、肉だ。
俺にとってはフェルの食べる分の肉の確保が第一だぜ。
「ああ。こいつ等の肉は全部食えるぞ。しかもみんな高級品だ」
おお、やったぜ。
フェルが獲ってきたんだから一応食えるとは思ってたけど、ちゃんとプロ?に聞いておいた方が安心だしな。
「それじゃ肉は全部こちらにいただけますか。肉以外の素材は全部買取でお願いします」
「ん? 肉もけっこういい値が付くけど、買取らなくていいのか?」
「ええ。大食らいがいるもんで」
フェルをちらっと見ながらそう言うと、おっさんも「ああ」と納得顔だった。
「こんだけの数だからすぐにはちょっと無理だな。急ぎでやるから、明日の朝また来い。あ、そうそう、解体の費用は差し引かれるからそこんとこよろしくな」
はいはい、ってあ、明日じゃ困るんだ。
とりあえずどれか1匹分の肉だけでも欲しい。
「あの、すみません、どれでもいいんで1匹分の肉だけでももらえませんかね?」
「んぁ?ああ、そっちの従魔の飯か。じゃ、ちょっとだけ待ってろ」
そう言っておっさんがレッドボアを捌いてくれた。
おっさんの解体の腕は鮮やかで、そんなに時間もかからずに皮と内臓と肉に分けられていく。
皮は素材として、内臓は廃棄処分、肉は俺へと渡る。
「んじゃ、これな」
おっさんから渡されたレッドボア1頭分の肉は200キロくらいありそうだ。
これならフェルでもしばらくは持ちそうだな。
俺はレッドボアの肉をアイテムボックスにしまい、おっさんにお礼を言って倉庫を出た。
冒険者ギルドの受付の前を通ると、そこにいた冒険者たちからガン見された。
やっぱあんなに多く買取に出したのはマズったかな・・・。
でも、フェルの飯のこともあるし、できるだけ肉は確保したいところなんだよな。
この街も長居するわけじゃないし、ここは我慢我慢。
俺は冒険者たちの視線をすり抜けそそくさとフェルと共に冒険者ギルドを後にした。