第十二話 塩と胡椒を売ってみた
今朝は、フェルが朝から昨日と同じステーキが食べたいと言うから、朝から大量のステーキを作る羽目になった。
さすが肉食。肉の消費量が半端じゃないぜ。
今朝はレッドボアの肉がまだ残ってたから良かったけど、それもフェルの朝食で尽きた。
これはすぐにでもフェルに獲物を獲って来させないとダメだな。
そうなると、冒険者ギルドにも登録しなきゃだし。
商人ギルドに行って塩と胡椒を買取してもらったら、冒険者ギルドに行ってみるか。
今日も忙しくなりそうだな。
ちなみに俺の朝食はハムとチーズの簡単サンドイッチとオニオンスープだ。
さすがに朝からステーキはかんべんだ。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
予定どおり商人ギルドに来ている。
この後に冒険者ギルドに登録に行くつもりだからフェルも一緒だ。
窓口には昨日担当してくれたミカエラさんがいた。
「ミカエラさん、おはようございます」
「おはようございます、ムコーダ様」
「昨日言ってた買取をお願いしに来ました。これをお願いしたいんですが」
そう言って塩の入った麻袋と胡椒の入った器をアイテムボックスから出した。
「拝見いたします。これは……ちょっと失礼いたします」
ミカエラさんは胡椒を見て席を立った。
あれ、やっぱ胡椒はマズかった?
地球でも昔は同じ重さの金と胡椒が取引されてたっていうからな、100グラムは多かったかもしれない。
少ししてミカエラさんが戻ってくると、別な部屋へ案内するというので、フェルには待っててもらいミカエラさんの後に続いた。
部屋の中には50代くらいの恰幅のいいおっさんがいた。
「どうぞこちらにお座りください。私は当ギルドのギルドマスターをしておりますロベールと申します。どうぞお見知りおきを」
おう、ギルドマスターのお出ましかよ。
やっぱ胡椒マズかったかなぁ。
別な職員の人が俺の塩と胡椒を置いて出て行くと、ギルドマスターは「拝見します」と言って検分開始。
さすが商人ギルドのギルドマスターにまでなった人だ、鋭い目つきで味や香りを確認している。
「私も長年商売にかかわってきましたが、これほどの品質の良い塩と胡椒は初めてです。濁りのない真っ白な雑味のない塩に鮮烈な香りと味の胡椒。素晴らしいとしか言いようがありません」
そうですか、でもそれネットスーパーで買うと塩は5キロで銅貨5枚くらいだし、胡椒も100グラムで同じくらいの値段だったんだけどね。
「是非とも買取らせていただきたいと思っておりますが、これはどちらで入手されたのですか?」
はい、ネットスーパーです。異世界産の塩と胡椒なので品質は保証します。
って言えるかよ。
「旅の途中でちょっと……」
言葉を濁すとギルドマスターは「私が野暮でしたな。商人がおいそれと仕入先を漏らすわけにはいきませんな」と言って笑っていた。
「それで、金額の方なのですが、塩が金貨4枚で胡椒が金貨10枚でどうでしょうか?」
「…………え?」
う、嘘だろ?元値2つ合わせても銀貨1枚程度なのに、塩が金貨4枚?胡椒が金貨10枚?
え、え、え、この世界で塩と胡椒が高値だってのは知ってたけど、そこまで高くなるのか?
「やはり低すぎますか……。では2つ合わせて金貨15枚ではいかがですか?」
うおっ、買取金額が上がったぞ。
黙ってたのを渋ってると思われたのか?
いやただ単に驚いてるだけなんだが。
「く……それでは2つで金貨17枚です。これ以上は上げられませんぞ」
ギルドマスターが何を勘違いしたのかはわからんが、また買取金額が上がった。
「は、はいっ。そ、それでいいです」
き、金貨17枚かよ……。
元値銀貨1枚だぞ、それが金貨17枚。
こりゃぼろ儲けだぜ。
持ち込みで買取お願いしたから何度も効く手じゃないけどな。
何度も持ち込みしてたらさすがに疑われるだろうから一ギルド支部に1回が限度だろう。
それでもある程度の金額を入手できる手段ができたのはありがたい。
俺は金貨17枚をもらうと、未払いだったアイアンランクの年会費と税金を支払うことにした。
こういうのは払えるときに払っといた方がいいんだよ。
期限近くなってから金がないなんてなったら大変だからな。
「アイアンランクの年会費金貨1枚と税金金貨2枚、確かにお預かりいたします」
ふぅ、これで1年間は大丈夫。
年会費と税金を支払っても金貨14枚は俺の懐に。
残ってる手持ちと合わせると金貨20枚と銀貨5枚、銅貨と鉄貨数枚ずつ。
何とかなりそうだな。
まぁ、足りないときは考えもあるし。
商人ギルドのギルドカードがあると、他の店に卸すときも信用されやすいって聞いてるからな。
俺にはネットスーパーもあるし、卸す品はたくさんあるってこった。
商人ギルド入って良かったぜ。
さて、次は冒険者ギルドに登録に行きますか。
俺は塩と胡椒の売上金で懐が温まったところで商人ギルドを後にした。