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銃弾

すみません、少し遅れました

「ちょ、ちょっと待ってくれないか?」


「そちらから交渉を持ちかけておいて、ふざけた要求を出した上に、今度は待てと?」


「う……でも……」


 さ~て、主導権も握れたし、とっとと追い出すかな。


「貴様らの目的などどうでもいいが、ダンジョンに侵入しておいてただで帰れると思っているのか?

 だいたい、剣をよこせだと? 奴は確かに我がダンジョンの者ではないが、剣については有用ゆえ、今は奪えぬともいずれ奪うため封印しているのにふざけたことを……。

 見逃して欲しいのなら武装をすべて置いて去るのだな」


 まるで盗賊みたいな物言いだが、うちでは侵入者を追い出すときには身ぐるみを剥いでいるので平常営業だ。


「ふざけているのはどちらだ!」バンッ


 だが、普段のうちの対応を知らないのか、侵入者の一人、銃を持った男が激昂して発砲してくる。

 あ、まずい、ちょっと調子に乗りすぎたか……。

 貧弱ステータスの俺では銃弾を躱せるはずもなく、胸に吸い込まれるように着弾──


「お兄さまっ!」

「兄さま!」キンッ


 する直前に久遠と刹那の声が聞こえたかと思うと、すぐ目の前に何かが飛んできて、俺の胸に来るはずだった銃弾を防ぐ。


「これは…………妖刀?」


 目の前に飛んできたそれはいつも俺が腰に差しているはずの妖刀。

 何でこいつが飛んで……って言うか、ずっと腰に差してうたはずだが。


「あれ? ……ない」


 腰を確認してみると、そこには妖刀はなかった。

 いったい、いつから居なくなってた? 雷ヶ原に行った時にはあったはずだが。


「なんとか間に合ったわね」

「兄さま、大丈夫ですかっ!?」


 疑問に思っていると久遠と刹那が駆け寄ってきた。


「ああ、大丈夫だ、助かったぞ」


「それは良かったです」

「お姉さまの要請を聞いて正解だったわね」


 六花の要請?


「この妖刀は六花が?」

 もしかして説教されてる時に部屋に置いてきたか?


「違うわ、お兄さまが無理している気配がするとかで、私たちにここに行くよう頼んできたのよ」


「気配って……いつから六花はそんなものを感じ取れるように?」


「さぁ……、私も最初に聞いた時は、お姉さまも疲れているんだと思ったわ」


 ……いったいどうなっているんだよ、六花。


「それなら、この妖刀は? ……ずっと腰に差していたはずなんだが……」


「そちらは一方踏鞴さんと百々眼鬼さんからです。何でもお兄さまの為に妖刀さんを強化したみたいです」


「…………あいつらに渡した覚えはないんだが……」


「え~と、そのぉ……百々眼鬼さんがスリ取っていたみたい……です」


 …………何してくれてんの、あいつ?

 


「そんなことより、侵入者の方をなんとかしないといけないんじゃないの、お兄さま?

 今は車妖怪たちが抑えているけど……」


 色々思うところはあるが、確かにそんなことより侵入者をなんとかしないといけないな。

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