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再会

「くっ、仕方ない、


 宝剣ウィル・カルブネイよ

 その身に封じられしちからにて

 我が身に降りかかる災厄を祓いたまえ

《ウィル・リパルション》!」


 三鬼の車妖怪が侵入者にぶつかる直前、そのうちの一人──騎士の男が剣を掲げて詠唱らしきものを唱える。すると、その剣から光が溢れだし、すぐ目の前にまで迫っていた車妖怪たちを弾き飛ばす。


「ふぅ、間に合った……」


「ちょっと、あんた! 今の何よ!?

 そんなこと出来るなら最初っからやりなさいよ!」


「ちょっ……こ、これには、訳が……」


「落ち着くがよい。今のは其奴の切り札、日に一度しか発動できず、発動後は体力と魔力が枯渇するゆえ、仕方ないのだ」


「……しかも、発動が、一瞬だから、さっきの熔岩にも……使え、なかったんだよ」


 侵入者の方が何やら揉めているが、こっちはこっちで緊急事態発生。せっかくのコンボ攻撃が失敗したのは残念だが、その失敗の仕方がまずい。

 車妖怪が弾き飛ばされたことで、奴らが身に纏い溜め込んだ劫火、及び火の魔力が周囲に撒き散らされて一部の熔岩が再加熱されたり、熱風や小規模の炎の嵐が発生している上に、それよりも更に大きな問題が発生してしまっている。

 それは車妖怪、その中でも最も大きな輪入道が弾き飛ばされてめり込んだ結果、崩れつつある壁にある。


ガラガラ

「………………」


「ヒヒィーン!」

「あ、だめ……あぶない」


 その壁とは以前ダンジョン内で暴れ回った狂骨を封印している隔離部屋の壁であり、崩れた結果、中から狂骨が現れる。

 その狂骨を目にした一角天馬(アルミューン・ペガサス)は水奈の制止も無視し、待ち焦がれたものを迎えに行くかのごとく駆け寄って行く。

 ああ、一角天馬(アルミューン・ペガサス)は狂骨の生前の天馬聖騎士の天馬の部分を担当していた天馬か。



「…………」カタカタ、ブンッ


「ヒィ!?」

「……ん!」


 感動の再会と思いきや、狂骨はその空洞の眼窩をチラリで一角天馬の姿を確認すると、その手に持つ剣で殴りつける。 

 …………あれ? 感動の再会とかじゃないん? 君ら確か《魂の絆》とかで結ばれているはずだろ? 剣が当たるより先に攻撃を予測していた水奈が弾いたから事なきを得たけど、今のは角の側面直撃コース(一角獣は角側面を攻撃されると脳震盪を起こすので、角側面は弱点)だったぞ。

 ……いや、まぁ、聖騎士を殺したりした俺がツッコむのはアレなんだけどさ……。

 もしかして、人違い? ……いや、それはないか、何しろ魂で繋がれてるんだから。だが、それならそれで何で攻撃するかが激しく疑問だ。確実に角を狙っていたから、背中に張り付いている水奈を引き剥がそうとしていたわけでもなさそうだし。


「あぁん、新手かぁ!?」

 揉めていた侵入者の方もこちらの音を聞きつけのか、狂骨の存在に気付く。


「む、スケルトンとは……我らにとって相手の悪い……」


「槍と銃だと骨相手だと相性が悪いわね。となると剣のこの人の出番なわけだけど……」


「うむ、今は動けぬのでな……」


「はぁ……、またあたしがやるのね。追加報酬は弾んでもらうわよ」


「……! ちょっと待って!」


「何よ、これだけ働かせて報酬をケチ……」

「そうじゃなくて、あのスケルトンの持っている剣、あれ《宝剣エルディオン》だよ!」


 ………………どうやら、侵入者と狂骨にはなにやら因縁があるらしいな。

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