水奈の思い
とりあえず水奈を追いかけないと。
ウィンドウを展開し、ダンジョンマップを出して位置検索機能を起動する。
「え~と、2層の火山か……」
何でよりによってそこに行くかな?
現在このダンジョンで最も危険な場所は2層だ。その理由は侵入者たちの転移マーカーと狂骨の隔離部屋があるからだ。どちらも階層固定で設置してあり、どのフィールド設定しても2層にあらわれるようになっている。
まぁ転移マーカーを仕掛けた侵入者はギルド所属だから、今はそこから侵入者が来る可能性は低いけどな。
「じゃあちょっと迎えに行ってくるか」
また出歩くと六花に怒られそうだが……まぁ、今は侵入者も居ないし大丈夫だろ。
Side 水奈
「……パァパ……」
またにげちゃった……。
この前かっぱたちに囲まれてからかわれてから、なんかおかしいよ。
パァパを見るだけで胸がドキドキして苦しくなるから、ついにげちゃう……。これじゃパァパに嫌われちゃう。
久遠ねぇと刹那ねぇと……いっぽんだたらの人パァパがあたしを嫌ってないって言ってたし、それはほんとうだったけど…………からだがあつくなって、パァパの顔が見れないよ……。
う~、どうしよ?
またにげちゃったから、今度こそパァパに嫌われちゃった?
やだ! ぜったい、やだよぅ……。
──ブーブー
侵入者が2層に現れました。
侵入者? 2層ってここだよね?
…………ひとりで、やっつけたら、パァパも嫌わないでいてくれるかな? 褒めてくれるかな?
うん、がんばってみよう。
Side 蒼魔
──ブーブー
侵入者が2層に現れました。 二層に足を踏み入れた瞬間、侵入の存在を告げるシステムメッセージが聞こえてきた。
……運命を司る神が居るなら、そいつはSだと思う。
何故よりによって今、このタイミングで侵入者が転移を使ってやって来るかな……。
また六花にお説教されちまうじゃねぇか。水奈も火属性フィールドである火山だとちからを発揮できないから危ないし。
──ブーブー
聖獣一体とヒューマン一体と獣人三体の侵入を確認しました。
運命の神とやらはSではなく、ドSのようだ。明らかに強敵臭のする聖獣なんてものが侵入してやがる。侵入者の中に魔物使い的な奴がいるらしいな。
──詳細
聖獣・一角天馬レベル74。
冒険者・魔法騎士レベル37。
国仕兵・騎士レベル42、国仕兵・戦士レベル34、国仕兵・騎乗銃士レベル40。
どうやらただのドSでは物足りないらしい……上級ドSか。
レベル40越えが居るし、国仕兵とかいう正規兵が居やがる。あと上級ジョブくさいし。何より一角天馬がレベル74て……。
魔物使い的なのは……魔法騎士か騎乗銃士かな? そのレベル差でよくテイムできたな。
とりあえず水奈が出くわすと危ないから回収しないと……。
マップを出して水奈の居場所を確認する。
「は?」
「ご主人?」
「……どうかした?」
マップからわかった水奈の居場所に呆けた声を出すと、一緒に火山にやって来た一本踏鞴と百々眼鬼が質問してくる。
「なんかな、水奈がまっすぐ侵入者の方に向かって行ってるだが……」
水奈的には侵入者を討ちに行ったのだろうが、水奈では勝てないと思う。
侵入者の詳細がわかるのはマスターだけなのはちょっとまずいよな……。せめて車妖怪たちが一緒に居てくれれば良かったのだが、少し離れた場所に居るし。
「とりあえず水奈を回収してくる、レベル1のお前たちでは歯が立たないからここで大人しくしていろ」
「……ん」
「ご主人も気をつけてね」
「ああ」
一本踏鞴たちを残し、急いで水奈の元へと駆け出した。
「あ~あ、やっぱあたいらは足手纏いか……でも、あたいらはあたいらに出来ることをやるよ」
「……ん」