久遠たちの要望
「あら、お兄様、面白そうなことを考えているわね」
六花に説明していると、久遠が部屋に入って来た。
久遠だけでなく、刹那と水奈も居るが……何で久遠と刹那は水奈を捕まえるような感じなんだ 刹那なんかわざわざ人型になってるし。
「何か意見や案、希望があるなら遠慮なく言っていいぞ」
水奈には悪いが、なんとなく触れない方が良さそうな気配がするのでスルー。
「意見と言うか、ツッコミならあるわね。
これ、今のダンジョンよりも階層が多くないかしら」
「……お? 言われてみれば……」
現段階の予定では10層……現ダンジョンの階層はこのマスタールームを除けば5層なので倍だな。
そのうちに増築するつもりだったから、頭から抜けてたな。
「……はぁ、言われてみれば、じゃないわよ。
まぁ、私はとりあえず大豆をとお米、それとニンジンとシイタケ、ゴボウにタケノコ、あとはゴマがあれば文句はないわ」
いなり寿司を作る気満々だな、それも五目いなりとプレーンないなり寿司の両方を。
タケノコか……竹林も追加だな。
「刹那と水奈は何かないか?」
「そうですね、わたくしはお魚が既に予定があるようなので特には」
刹那は特になし……それならマタタビでも作ってみようかな?
「水奈は?」
水奈に話を向けると、
「っ!」
視線を向けた途端水奈は逃げようとする……が、
「はい、逃げちゃだめよ」
久遠が押さえ込んで逃がさない。
水に溶けないよう水奈の一部を凍らせる程の徹底振りだ。
水奈には氷耐性があるのに凍らせているあたりかなり本気でやっているな……。
「まったく、どうしてお兄様から逃げようとするのよ。さっきもお兄様のことを話題にあげるなり逃げ出そうとするし……」
「う~」
「あ~、さっき子河童たちに俺との事をからかわれてな、それからずっとこの調子なんだよ」
水奈が一方的に悪いみたいな空気では可哀想なので弁護しておく。
「……またあの子たち?」
うん、またあいつら。
あいつら孵化してから起こる面倒事は基本的にあいつらか、触発された父河童たちの所為だもんな……。
「で、どういう風にからかわれたのかしら?」
「さぁ?」
「さぁ? って、お兄様も一緒に居たんじゃないの?」
「居たけどな、あいつらの言葉は拙すぎていまいち聞き取れないんだよ」
「ふ~ん、それじゃあ水奈……は話しそうにないわね………まぁいいわ。
内容はこの際関係ないし、予想もつくしね。
とりあえず、あの子たちにはそろそろお仕置きが必要かしら?」
やっぱりそろそろ一回〆ておかないといけないよな……。子供だから、で大目に見てやるのにも限界があるし、子供だからこそ色々わからせておかないといけないしな。
「……まぁいいわ、詳しい事情は後でじ~っくりと水奈から聞くから」
……水奈、御愁傷様。
とりあえず水奈の希望は聞けそうにないな。
それならこっちで適当に水奈の喜びそうなものでも作るか。水奈の喜びそうなものは……何があるかな?
水妖だと……人肉? ………いや、これはないな。
……う~ん、山フィールドに上物の岩清水を湧き出させればいいかな?
「六花は何か希望がないか?」
「う~ん、わたしは特に食生活に思うところはないので……」
……いや、うちで一番食事が貧困なのは主食がかき氷な君だよ。誰よりも要求する権利があるんだよ。
六花ちゃん控えめ過ぎるのもどうかと思う……。
……仕方ない、六花のも俺が勝手に決めるか。
とはいえ、六花が食えるものは限られているから……まずは氷にこだわるか。
まずは四季のある自然豊かな山を作って泉を作成。それを4つ作って常にどこかが冬の状態を保たせて、そこから氷を切り出せばいいな。
あとは果物類を多く作ってシロップを豊富にして、乳牛も育てて練乳を……いや、いっそかき氷だけでなくアイスクリームもつくれるようにするか。
六花の案を規模がでかすぎるとダメ出ししといて、自分の方がさらにでかい改装案を企画……しかも久遠にツッコミをされるまで気付いてません。