大改装案
「とりあえずコクホウには後で聞くとして、お前たちは何か要望はないか?」
「シュー……」
「シュシュ……」
「シャー……」
まぁいきなり聞かれてもパッとは出てこんか。
「参考までに言っておくと、火山はメンバー増員とフロアの改装。
雪原は食糧の拡充、雷ヶ原は拠点の増築と1層への配置回数の増加だな」
……こうまとめると、雪原だけダンジョンに関係ない要望を出してるように見えるな……。
実際のところは火山は遊び場の増築だし、雷ヶ原は本来の要望とは別な上にゼンとツグミの新居(予定)だけど。
「シュー」
「シュシュー」
「ん、お前たちはもう決まったのか?」
「シューシュー」
「シュー」
ふむ、現段階だと要望はないから、次の機会に今回の分を上乗せか、無理なら俺に任せる、か……。
……次の機会ってことは生まれてくる子供のために取って置きたいってことかな?
「そうか、じゃあ今回は保留だな」
特に断る理由はないので保留を認め…………断る理由あったわ。
生まれてくる子供が子河童みたいなアホの子だとろくな事にならんぞ。
……その時は蜘蛛夫婦には悪いが要望は突っぱねさせてもらうか……。
「シャシャー?」
え゛、ナデシコさん、うちも同じでいいですか?』って……蜘蛛夫婦よりもあんたの子供の方がアホの子が生まれる確率が高いんだが……。父親が例外的に知性が高いとはいえ、河童なんだからさ。
「あ、ああ、構わんぞ」
とはいえ、断れんわな……目の前で同じ条件を認めてたんだから。
う~ん、河童たちはどうにかした方がいいんじゃなかろうか? と思う今日この頃。
知性が子供な結果、子育てもまともにできない……いやメス河童は比較的まともだから、育児自体はできているのだが、オス河童が情操面でかなりよくない。
子供は親の背中を見て育つとはよく言ったもので、わんぱく坊主なオス河童のせいで子河童はアホの子街道爆進中なんだよな……。
この間なんか皿の堅さ自慢大会とかで頭をぶつけ合って最後まで皿が割れなかった奴が優勝、ってワケわからんことやってたし……ちなみに参加者全員皿が割れて全滅のノーコンテストとなった。
とりあえず、今後生まれる子供たちは悪影響を受けないようある程度しっかりするまで河童たちから隔離しといた方が良さそうだな……。
「お前たちの意見はわかった、ナデシコ一応コクホウにもこの件は伝えておいてくれ。湿地帯のボスであるコクホウの意見もきいておかないといけないからな」
「シャー」
蜘蛛夫婦とナデシコから話を聞いたあとは部屋に戻る。今日1日見廻ってやるべきこと、やりたいことが色々理解できた。
まずやるべきこと、それは、
「主さま、何をしているのですか?」
「ダンジョンの改装案の作成だ。今日見廻ってみて色々気になることがあったからな」
ウィンドウを出して改装案を練る。
気になったこと、それは、
「食糧問題……ですか?」
「ああ」
「特に問題はなかったような気がしますが……わたしたち妖怪は種族にもよりますがわりと食べなくても平気ですし」
確かに食べなくても平気なやつは多い。九十九神なんかは周囲の生き物が自然に放出する生気だけで生きていける上に、それが少なくても休眠状態になって生き長らえることが出来るし。
ただし、それは肉体的に、という条件がつく。
「確かに肉体的には食べなくても平気だけどな、旨いものを食べたいって欲求は誰にでもあるもんだ。それにいくら旨いものでもそればかり食べているとそのうち飽きる」
「あっ、確かにそうなのです」
精神的にとなると別問題だ。
今のところ食糧資源に乏しい雪原にしかその兆候はなかったが、他のところも時間の問題だろう。
同じく食糧資源に乏しい火山は現在1層なので、侵入者から食糧を奪っているはずだから今日はその不満が現れなかっただけだろう。
「そういうわけだから、ちょっと食糧生産用に階層の増築と妖怪の増員をしようかと思うんだよ」
一応予定では、
・魚介類確保のために海
・果物確保のために森
・野菜確保のために平原
・高山植物確保のために山
・米確保のために湿地帯
を新たに作ろうかと思っている。
当然侵入者が直接入れないようにした上で、気候調整のために森と平原は複数作る予定だ。