雪原の食糧事情
てな訳でナマハゲ村の土蔵にやってきたわけだが……、
「ウォウォン」
「グルル」
「グルァ?」
アラサルシ二鬼とナマハゲリーダーが話し合ってる。
内容は話を聞く限り、アラサルシの食糧問題のようだ。
あ~、そういやナマハゲたちには餅をやったけど、アラサルシには野生動物を放った程度でその後は何もしてなかったな。
「ウォ? ウォウォン」
「グルァ」
「グルルル」
っと、あっちも俺に気付いたな。
「ああ、もう大丈夫だ。その快復の報せも兼ねて見廻りに来た。
ところで何を話してたんだ?」
知ってはいるけど、知らない体で聞いてみる。
「グルルゥ」
「グル」
「ウォ……、ウォウォン」
アラサルシたちは遠慮しているのか話そうとしないが、ナマハゲリーダーはそんな二鬼に呆れ気味に事情を話す。
ふむ、どうやら野生動物……肉ばかりの食生活に飽きたらしく、他の物を食べたいらしい。
ナマハゲたちもアラサルシから肉の分け前をもらっているので味付けや調理などで協力していたがそれも限界のようだ。
……食事に対する不満……それも食糧不足じゃなくて、飽きたって話じゃアラサルシたちも言い出し辛いか。
ついでにナマハゲたちも微妙に現在の食生活に飽きがきているらしい。こっちはまだ好物の餅なのでアラサルシほどの深刻さではないようだが。
「新巻鮭と蜂蜜を作成──承認」
とりあえず、クマといえばこの2つが好物ってイメージがあるから作ってみた。
「グルル」
「グラァ」
「「グルル、グル」」
二鬼の前に二つを差し出すと二鬼とも蜂蜜には目もくれず新巻鮭に食い付く。
そういや、アラサルシはヒグマ──雑食でも肉食寄りのクマの妖怪だから蜂蜜はあまり好まないのか……。
それなら……、
「フィールドの仕様を変更、小川を作成。生態系を調整、小川に魚を追加──承認」
雪原に川を追加し魚を放流す……あ、しまった。川を作って魚を放っても鮭はいない。
いや、いないこともないけど、コイツらが食うようなサイズの鮭は川よりも栄養が豊富な海から遡上してきた奴だから、川だけで完結しているここにはいない。
「新巻鮭を100個土蔵に作成──承認」
仕方がないので、新巻鮭を土蔵に置き、週一くらいのペースで我慢してもらうことにする。
まぁ、鮭は川にいないけど、山女やニジマスあたりは捕れるから大丈夫だろう。
「さて、ナマハゲたちは何か要望はあるか?」
「ウォ……ウォッ! ウォンウォウォウォン、ウォゥ」
ふむ、酒が欲しいのか。
酒ね……ナマハゲはホロ酔い以上の酔い方をすることはないらしいから良いか……。コイツらは米系の食べ物が好きだから酒も米の酒がいいかな?
「純米酒と米焼酎を作成。……ついでだ、煎餅、ポン菓子れとおはぎとレモンと炭酸水、それと甘酒を一月分を土蔵内に作成──承認。
あまり飲み過ぎんなよ」
飲み過ぎないよう釘を刺しながら土蔵内に酒とつまみになるような米菓、それと酒が飲めないやつもいるかもしれないので甘酒と、蜂蜜レモンを作れる材料とおやつにおはぎを土蔵内に作成する。
「ウォウォ」ペコリ
ナマハゲリーダーは礼を言って一礼する。
ここはこんなもんかな。