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六花へアドバイス

 部屋に戻って刹那を寝かせ、今度は雪原に向かう。

 ふぅ、ここは火山とは逆に心地良いな。天気もいいし、ちょい昼寝でも……。

 

「主さま?」

 

 真っ白な雪をベッドに昼寝をしようとしていると六花に声をかけられる。

 さっき下半身丸出しの姿で遭遇したから気まずいな……。

 

「もう、まだ出歩いちゃだめなのです」

 

 六花はそんなこと一切気にしていないようだが……この数日で見慣れたか?

 

「いや、戦闘行動が取れないだけだから出歩くには問題ないだろ」

 

「で、でも侵入者が……」

 

「今日は火山が1層なんだから突破は無理だって。火山自体が難所だし、車妖怪たちの無限追跡轢き逃げから逃れるなんて……」

 

「う~、でも……」

 

 まったく六花は心配性だな……。

 

「それに今日はここが4層だから侵入者が3層に来たら部屋に引っ込むから、な」

 

 いざという時はしっかり逃げることを伝え、六花を説得する。

 

「わかったのです。

 ところで、主さまはどうしてこちらに?」

 

「ダンジョンのみんなに俺の快復を知らせるのと……あとは何かしらの要望の聞き取りだな」

 

 六花にも俺の来層目的を伝える。

 

「要望……ですか?」

 

「ああ、その層に住む奴らの意見を聞いて、改善してほしいところなんかだな。

 ちなみに火山はレースコースの作成と車妖怪の増員。雷ヶ原は階層ボス唯一の独り身のツグミの恋愛相手となる可能性のある妖怪の作成だ」

 

「ツグミさんがそんなことを?」

 

「いや、これは雷山猫たちからの要望だな。何でも階層ボス唯一独り身って立場だからか情緒不安定らしい。

 ちなみに却下しといた」

 

「え、どうしてなのですか?」

 

「恋愛っていうのは自由にすべきもんなんだよ。いくら候補でも俺が準備するのは何か違うだろ?

 まぁ、蜘蛛夫婦は例外だけどな」

 

 蜘蛛妖怪のメスは(つがい)がいないと誰彼構わず襲う──暴力的な意味でも、性的な意味でも──性質があるから半端なく危険。

 

「とりあえず雷山猫リーダーを焚き付けといた。明日からしばらくは雷ヶ原が1層になる予定だ」

「ゼンさん、ですか……」

 

「ああ、ゼン自身ツグミのことを気にかけてるだけあって、まんざらでもない感じだったからな。

 ……まぁ、鵺と同格になるのは大変だろうがな」

 

 別に同格にならんでもツグミを振り向かせればいいんだけど。

 

「鵺はかなりの高位妖怪なのですが……ゼンさん頑張ってください」

 

「それはそうとして、六花はどうしてここに?」

 

「あ、はい。わたしは妖術の特訓をしに来ました。やっぱりここだと調子がいいのです」

 

 ふむ、久遠もそうだったが、六花も術の練習か……刹那も気絶さえしてなかったら同じようにしてたのかな?

 

「それならそのうちで良いから他の場所での練習をしてみたらどうだ?」

 

「他の場所で、ですか?」

 

「ああ、例えば火山……は無理として、森や湿地帯とかだな」

 

 いつも雪原みたいに周りに雪があって、氷系にブーストがつく環境で戦えるとは限らんからな。

 例えば森なんかはその典型例、氷系に特に有利不利に働く場所じゃないから実力を知るのに丁度いい。

 湿地帯なら氷属性ブーストは付かないが、周囲に多量の水分があるので、それを利用した戦い方を身に付けることができる。

 逆に、できれば火山みたいな苦手フィールドでの経験も積ませてみたいが、最初から火山はあり得んよなぁ……。

 もうちょい暑さの弱いフィールドでも作るか?

 ……いや、そんなの作っても俺が嫌だな。つーか、そもそもこっちがホームなんだから六花が不利なフィールドで戦うことなんてないよな……。

 

「森と湿地帯、ですか?」

 

「森はともかく湿地帯は分かりやすいだろ、ちょくちょく水奈と組ませてるんだから」

 

「ああ、なるほど!

 周りの水を凍らせたりして利用するのですね」

 

「まぁ、そういうことだ」ナデナデ

 

「えへへ」

 

 

 

 

「ウォ?」

 

「ウォウォ」

 

「ウォォォォォ」

 

 しばらく六花と話しながら歩いていると、ナマハゲたちの住み処に着いたらしく、数匹のなまはげと遭遇。全員赤い顔なのでリーダーはここにはいないようだ。

 

「ウォウォ?」

 

「ん、ああ、もう大丈夫だ。ところでお前たちのリーダーはどこに居るんだ?」

 

「ウォンウォウォン」

 

「ああ、土蔵の辺りに居るのか」

 

「ウォウォウォン」

 

「アラサルシも一緒にいるのか……なら丁度いいな」

 

 それなら一緒に要望が聞ける。

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