子河童
一週間オムツ生活を乗り越え、ようやくオムツとおさらばすることができた。
行動制限(強)って解けたからってすぐに動けるようになる訳じゃないんだね。約4日間の寝たきり生活のあと、3日ほど回復に時間がかかったよ。
4日間の屈辱的な日々を乗り越えて、行動制限(強)の解けた5日目にベッドから起き上がろうとして身体に力が入らなかった時は心が折れるかと思ったぞ。
六花たちが甲斐甲斐しく介護してくれるのは嬉しいが、それだけに余計下の世話をされるのが辛かった……。
もうあれだね、オムツは俺の宿敵だ。
「主さま、もう起き上がっても大丈夫……失礼しました」
宿敵と別れ、久々の解放感を満喫していると、部屋の外からリッカが入ってきて……即座に出ていった。
…………大人しくパンツを穿くか……さらば解放感よ。
まだ身体中に倦怠感が漲っているが着替えをすませ部屋を出る。
俺が寝込んでいる間ダンジョン内の指揮はクオンに任せていたが、その間にある問題が発生していた。その問題のこともあって余計にリッカたちの世話になるのが心苦しかった……。
その問題とは……、
「「クケッ」」
「「「け~」」」
カッパたちのベビーラッシュだ。
生まれてきた河童は全部で5鬼……卵自体は4個だったのだが、双子がいたのだ。
種族的には親達の前身である小河童で、身体のサイズは小さいものの、生後数日なのにもう自由に動き回っている。
……自由過ぎて親達だけでなく、六花たちも困るくらいに。
河童の生息領域は2層なのだが、他の階層に行こうとしたり、封印してある狂骨のいる隔離部屋に穴をあけようとしたり……。1層は侵入者の出入りがそこそこあるし、他の層は子供の河童では命の危険すらある(名付きじゃないので自動復活できるけど)場所なので心臓に悪かったらしい。
とりあえずお仕置きとして、河童の苦手な金物の多い武器庫(ダンジョン内に配置する宝箱の中身用に設置した)に閉じ込めたり、蓼を与えたりしたら大人しくなったらしいけど。
子育てって大変だね……少ししたら、今度は蜘蛛夫婦とコクホウ・ナデシコ夫婦の卵が孵るからもっと大変になるだろうけど。
「クケッ? クケケ、ケケ」
「「「け~?」」」
どうやら親側の河童が俺に気付いたらしく、子供たちを連れて挨拶にやってくる。
「ケケ、クケクケケ、ケケ」
「ああ、俺がここのマスターの蒼魔だ、大きくなれよ」
「け~?」
「そうだ、お前たちの親より偉いコクホウよりも、そして六花たちよりも偉いぞ」
大人の河童が紹介してきたので名乗ると、子供の1鬼が「コクホウさんよりも偉いの?」と聞いて来たので肯定する。
「……パァパ」
河童の子供たちを相手にしていると、水の中から水奈があらわれた。
「「け~」」
水奈は子河童たちに人気なのか、子河童たちが群がっていく。
「……ん、今はパァパに、話があるから、後でね」
ふぅん、うちのメンツで一番性格が幼かった水奈もお姉ちゃんやってんだな。
子河童たちを宥めている水奈にそんなことを思っていると……、
「……しかたない、一回だけよ…………えいっ」
水奈は腕を触手状にして子河童の1鬼を掴み…………投げた!?
投げられた子カッパは綺麗な放物線を描き着水。
…………この娘は何やってんの?
「……どんどん、いくよ……」
そして次々と河童を掴み……驚くことに自前の腕だけでなく、周囲の水も触手にし、残りの4鬼を同時に放り投げる。
「え~と、水奈は何をしてるんだ?」
寝たきりで、放っておいたからグレたのか?
「……?……いつもの遊び、河童たちに頼まれた」
話を聞くと、あれは河童に伝わる遊びで、子供のうちはああやって泳ぎや投げの感覚を学ぶらしい。
水奈がやる理由は、ステータスの差で河童よりも水奈がやる方が効率がいいからだとか……。