決着と反動
幻術で自分と同じ姿を作り出し、その中に紛れる……擬似的な分身の術だ。
狂骨は何も考えていないのか、複数あらわれた俺に動揺するそぶりを見せず一番近くの分身に斬りかかり……炎に包まれる。実はこの分身、中に狐火を仕込まれているので、分身に攻撃したときは火だるまになる仕様。
だが狂骨は火だるまになりながらも怯むことなく次々と分身を攻撃して消していく。
……アンデッドっぽいから怯んだり戸惑ったりはしないのか? アンデッドなら炎は効きそうなもんなんだがな…。………アンデッドか……それなら。
「《変若水・劣》」
試しに回復効果のある水奈の変若水をぶっかけてみる。
「………」ジューッ
すると人体に酸がかかったみたいに白い煙をあげ始めた。
狂骨自身は無反応だが…効いてる?
「…凍風」
六花の氷雪魔法で狂骨に変若水を凍らす形で貼り付け、
「死ねっ」
そして斬りかかる。
キンッ
「………」
だが、狂骨に宝剣で防がれ、鍔競り合いをするもこちらが僅かに優勢ではあるものの征することができない。
「ちっ…」
いったん狂骨を押し払って距離をとり、再び斬りかかる。狂骨は当然宝剣で受け止め防ごうとするが、
「《光風霽月》」
俺はスキルを使い……狂骨を真っ二つにする。
《光風霽月》
相手の防御をすり抜け攻撃を通すことができる。
最大MPの10%を消費する。
この効果で宝剣をすり抜けた結果だ。
──狂骨を撃破しました、狂骨が支配下に入ります。
ふぅ、なんとか倒せた…けど、ポイントはなしか。まぁ一応ダンジョン側の存在だもんな…。
戦闘は終わったので、とりあえず《百鬼徒花》を解除して六花達を解放し……、
「ステータス確認、狂骨」
狂骨のステータスを確認してみる。
名前:???
種族:死霊系妖怪
レベル:105
性別:♂
クラス:狂骨
称号:《魂に刻まれた無念》《魂の絆》
スキル:《輪廻せぬ魂》《聖剣技》《狂化》《騎乗》
◆能力値
HP:/3807
MP:/2324
STR(筋力):3186(-1593)
SOL(耐久):2504
INT(知力):2780(-2780)
MIT(魔力):2122
MIN(精神):3506(-3506)
DEX(器用):3042
AGI(敏捷):4113
LUK(幸運):704(-704)
かなり強い……けどいろいろ減少補正がついてる上に、気になる称号やスキルがあるなぁ。
──▽称号詳細
《魂に刻まれた無念》
幾度生まれ変わろうとも晴らせない無念を抱えた者に与えられる称号。
1.死を迎えようとも何らかの形で復活していまい、その後も復活を繰り返す。
2.一度死を迎えるまで全能力が90%低下。
3.ダンジョンモンスターとして復活した場合、5割の確率で命令違反。
4.生前の能力を引き継ぐ。
5.STRが半減、INT・MIN・LUCが100%低下。
《魂の絆》
強く繋がれた絆を持つものに与えられる称号。 絆を持つものと共にいる場合一部ステータスが変化する。
なるほどねぇ……あの生前倒せた理由と、今回やけに強かった理由はこれか。今回の強さでもかなりギリギリだったけど、最盛期はもっと強かったとか……まぁそうでもなければ、一騎士が王女と結婚できないか…。
しっかし、確率5割で命令違反って……しかもスキルで《狂化》持ち………よし。
「隔離部屋を作成──承認」
封印しとこ、危険過ぎるわ。
さ~て、次は侵入者たちをどうするかだな。
今は久遠のおかげで寝てるけど、起きたらめんどくさそうだな…。
侵入者たちはいつも通り身ぐるみを剥いでダンジョン入り口にポイ捨て、一応今回のことはダンジョンでもトラブルだったとメモ書きを添付しておいた。
さて、今度は六花達を部屋に運ばないと。……こんなときはあれかな。
一旦一人で部屋まで戻り…、
「《百鬼夜翔》」
《百鬼夜翔》
1.配下の妖怪系モンスターを召喚する
2. 同階層に居る妖怪系モンスターを強化する
《百鬼夜翔》の効果で行動不能になったみんなを召喚する。
「……よいしょっと……あ」
召喚した六花達をベッドに寝かせ、最後にコクホウとアスラをベッドに運んだ瞬間《魔人化:ぬらりひょん》が解け、全身から力が抜ける。
そして、
──《魔人化:ぬらりひょん》が解けました。反動として、
1.1日間行動不能になります。
2.3日間全能力が80%低下します。
3.5日間《魔人化:ぬらりひょん》使用不能になります。
《百鬼繚乱》の反動として、
強化に影響した配下の数×3時間、行動制限(強)になります。
《百鬼徒花》の反動として、
強化に影響した配下の数×時間(分)×12時間、行動制限(中)になります。
反動が一気に身体にのし掛かる。
なんとか魔人化が解ける前に六花達を寝かせるのに成功したか。
ちなみに行動不能は強制的な昏睡状態(健康に影響なし)で行動制限(強)は寝たきり状態、行動制限(中)は戦闘行動に支障をきたす状態になる。
段々意識が遠退いていく中、
「……るじさま……る…さ……」
六花の声が聞こえてきたような気がした。