2層への侵入者と……
ダマれ! の先輩がた曰く侵入者はかなり鬱陶しい存在だが、来ないなら来ないで困るらしい。
何でもダンジョンの維持にはポイントが必要で、実は撃破時などで手に入るポイントは維持分を天引きされたものとのこと。
維持コストの支払いは天引き支払いのみだから侵入者が来ないダンジョンは自然消滅するとか。
なので、殺られないようにしつつも侵入者が来たくなるようなダンジョン経営をしなくちゃいけない。故にせっせとアイテム製作。
「妖剣、妖鎧、妖弓、妖短剣、妖盾、妖槌、妖棍棒、妖槍、妖杖を5鬼ずつ作成。
仕様変更、デザインランダム変更──承認」
まぁ普通のアイテムだけを設置するようなことなんてしないけどね。
今作ったのは妖刀と同じく憑依スキル持ちの妖武具シリーズ、分類上は九十九神の一種だ。
その後、他のトラップアイテムや非トラップアイテムも作り……、
「1・2層にランダム設置──承認」
フィールドに設置する。
さて次は何をしようかな……。
──侵入者が2層に現れました。
って侵入者かよ。しかも昨日1層が突破された時に転移マーカーをしかけられたのか、いきなり2層から。
まったくタイミングの悪い。コクホウとナデシコは不在だから名無しの連中だけでなんとかしないと……水奈でも向かわせるか?
どうするか考えていると……、
──『打ち捨てられた死体』『激しい負の感情』『水の底』の条件が満たされたので2層に狂骨が発生しました。
こんなメッセージが聞こえて来た。
はい?狂骨が発生しました?狂骨ってあれだよな、平たく言うと和製スケルトン。
確か井戸から現れる激しい怨みを原動力に動く骸骨だったはず。
何で2層に…………ってそういや2層で落とし穴に嵌めてフルボッコにした奴がいたなぁ……あいつか。
どうするかな……。単純に考えると戦力が増えたと見るべきなんだけど、激しい負の感情/怨みってのがちょっと引っ掛かる……。
こっちの敵になる可能性もありそうだよなぁ……似たような感じで生まれた犬神と違って承認の是否もなかったし。
とりあえず様子見でもするか。幸い侵入者たちも偵察が目的らしく、斥候職しかいないし。
「2層でちょっとトラブルが発生しそうだから様子を見てくる。六花と水奈はついてきてくれ。
久遠と刹那は何かあった時のためにここで待機な」
「はいなのです」
「……ん、わかった」
「ええ、わかったわお兄様」
「にゃ~」
みんなの返事を聞きながら装備を調え腰に妖刀を差して出撃準備をし、
「よし、それじゃあ行くぞ」
「はい」
「……うん」
「いってらっしゃい」
「無事で帰って来てくださいね」
六花と水奈を引き連れ、久遠と刹那の声を背に2層に向かう……って、刹那は見送りの為だけに人化したのかよ。