六花
「ところで、お前名前はないよな?」
ステータスに名前は空欄だったから名無しのはずだ。
「はい、ですが……そのぅ、主さまはダンジョンコアはご存知ですか?」
「名前だけなら知っているが?」
確か羊皮紙に書かれてたな。
「ダンジョンコアはダンジョンの秘宝と呼ばれています。これを奪われると主さまはお亡くなりになりダンジョンは崩壊いたしますので、主さまのもう一つの命とも言えますね」
そういや、羊皮紙にもダンジョンコアを守れってかいてあったけど、そういう意味か。
「外の方々には破壊不能の神秘の宝と思われていますが、その実態はダンジョンの運営・維持装置なのです。主さまが腕輪を介して扱うあらゆる機能を行うのがこれですね、まさにダンジョンの核なのです。更にコアはダンジョン内で作成されたモンスターや主さまの配下に加わった者の情報を記録し、死亡時にレベルの低下と引き換えに一定時間後にモンスターを自動復活いたします。復活にかかる時間はモンスターによってまちまちですが、強い者やレベルの高い者ほど時間を要します。
また、レベルの低下具合は主さまが設定できますが、低下の度合いを低く設定しますと復活までにかかる時間が延びてしまいます」
「つまりそれがある限りモンスターは不滅なのか……」ヒョイ
「はい、ですが例外があります。ダンジョンマスターは復活いたしませんし、名前付きモンスターは復活に条件がついてしまいます」
「条件?それはどういうものだ?」ナデナデ
「それは名付きモンスターの強さや種族、死亡状況や死体の状態によって区々(まちまち)なので一概には言ないのですが、共通するのはすべてダンジョンポイントを消費しちゃいます」
「……名前付きモンスターの復活は高コストなのか……」ナデナデ
逆に言うと名無しモンスターはレベル低下以外はノーコストで復活可能なんだな……。
「はい、しかも時間制限もあるのです……」
「つまり、常にある程度ポイントを確保しておかないと泣きを見る訳か……ちなみに名前付きには何かメリットはないのか?」ナデナデ
モンスターがノーコストで復活できるのは望外の喜びだが、名前があるだけでそれが困難になるのはそれだけの理由があって然るべきだ。
「はい、当然あるのです。
それはレベルアップした時に能力の成長率にボーナスが付くのです。得意能力であれば成長率5倍ですし、苦手能力──全く成長しない能力でであっても最低3の成長が保証されるのです」
ふむ、成長率5倍とはまた豪勢な……最低保証も魅力的だな。レベルが高くなるほど恩恵は大きくなる
ステータスか復活か、か……。
「なぁ、お前は名前はいるか?」ナデナデ
「……はぃ、主さまはご存知ないと思うのですが、わたし達ダンジョンモンスターにおいては主からの祝福であり、寵愛の証とも言えます。
それに……主さまのお役に立ちたいです」
なに、この可愛い生き物?持って帰りたい、説明に一生懸命で抱き上げられて撫で回されているのに気付いてないのも高ポイントだし。
「そうか、それならお前の名は…………六花だ。」ナデナデ
「あ、ありがとうございます、主さ……」ボンッ
あ、やっと俺の膝の上にいるのに気付いた。でも、撫でるのやめないけどな。
そういや、俺の名前もつけないとな。う~ん、最初に作ったのは青い炎で、ダンジョンマスターはRPGの魔王みたいなもんだから……蒼魔にするか。