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警告文

「主さま~、どちらですか~?」

「クゥ~ン?」

 

 近くの小岩に腰掛け水奈を膝にのせて考えていると六花と久遠の声が聞こえてきた。

 

「お~い、こっちだ」

 

「!主さま、ご無事ですか?」

「クォ~ン?」

 

 

 六花達には侵入者が来た際に俺が近くにいなかった場合の指示を出していて、六花は雪原の、久遠にはマスタールーム……俺の部屋の守りをそれぞれ任せている。

 さっき、侵入者の心折りメッセージが聞こえたから俺を探しに来たみたいだ。

 

「ああ、大丈夫だ。侵入者は河童たちに任せてある」

 

「そうですか、それは良かったのです。ところで、そちらの女の子は……」

「クゥ?」クンクン

 

 六花がorz状態の刹那を見ながら、聞いてくる。ちなみに久遠は刹那の匂いを嗅いでいる。

 

「その娘は猫ショウに進化した刹那だ」

 

「あ、やっぱりそうなのですね。刹那ちゃんが進化できて良かったのです。でもいったいどうしてあんなに落ち込んでいるのですか?」

 

「それはな……」

 

 さっきの戦闘について説明する。

 

「狂化の状態異常ですか……。それで刹那ちゃんはあんな格好に……」

 

「クゥ~ン」ポンポン

 

 事情を聞き慰めるように頭を刹那の頭を撫でる久遠。

 

「とりあえずどうしようか考えてたわけだ」

 

「それなら主さまは何もしないのがいいと思うのです。慰められたりすると逆に辛いと思いますし」

 

「やっぱりそうか」

 

「はい、わたし達でなんとかしてみせます」

 

「そうか、なら任せた」

 

「水奈ちゃん、行きますよ」

 

「……う~、うん」ピョン

 

 そう言うと六花は水奈を連れ刹那の方へ歩き出す。

 それじゃあ、俺はしばらくそっとしておくとして……侵入者たちの成れの果てを見に行くか。どうなったか気になるし。

 

 

 

 

 

「……うわぁ……」

 

 侵入者たちの成れの果てを見て思わず口から漏れ出た一言。うん、社会的には間違いなく死んだな。

 六花達を連れて来なくて正解だ、目に毒過ぎる。

 

「クケ」

「「「クケェ」」」

 

 河童たちはいい仕事したぜ、って表情だから満足な出来みたいだ。

 

「後はこれをダンジョンの外に放り出せば……いや、ついでに何かメッセージを付けて宿場町の奴らに警告をだしとくか」

 

 紙とペンを作りメッセージをしたため……あ……しまった、俺この辺りで通じる文字なんて使えねぇや。

 侵入者を追い出すときに荷物を落として行ったりするんだが、その荷物の中には手紙らしき物があったりするけどまったく読めなかったんだよな……。

 六花達も読めなかったし、外と交流を持つつもりもなかったから放置してたけど……ここまで『惨い』仕打ちをした以上、何らかのアクションをしないとまずい。

 誰かに文字能力の付加でもするか?でも能力付加はかなりポイントがかかるし……文字に特化したような妖怪なんて……いたな。

 

「文車妖妃を作成──承認」

 

 恋文の妖怪と言われる文車妖妃を作成する。

 作成を承認すると現れたのは一人の女性……ただしめちゃくちゃ小さい。だいたい15cmくらいか? 1/10スケールの人型だ。

 

「お初に御目にかかります、主殿」

 

 文車妖妃は一礼し挨拶をする。こっちも言葉を返そうとするが、話すには文車妖妃は小さすぎてこっちが屈み込まないといけない。

 

「机を一つ作成──承認。ちょっと失礼」

 

「……あら」

 

 だから机を一つ作り、文車妖妃をその上にのせる。

 

「これはお手数をおかけして申し訳ない」

 

「いや、気にするな。それよりお前はこの辺りで使われている文字がわかるか?」

 

「……そうでございますね……サンプルがあればだいたいは……」

 

 サンプルか……部屋まで手紙の類いを取りにいくのは面倒だが取りに行くか。

 

「クケ」

 

 そう考えていたら、河童のうちの一鬼が一枚の紙を差し出す。

 

「ん?

 ああ、あいつらが持っていた物か……よくやった。

 これでわかるか?」

 

「あ、はい

 これはレノン地方の国々で使われているセルノ文字でございますね。ちなみに内容はこのダンジョンの入場許可書です。読み上げましょうか?」

 

「いや、それはいい。文字が読めるなら書くこともできるか?」

 

「はい、もちろんでございます」

 

「よし、それなら今から言う内容を……この紙に書いてくれ」

 

「はい」

 

「それじゃあ言うぞ……」

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