刹那の異変
本当にどうしたんだ?
「ステータス確認、刹那」
心配になって刹那のステータスを開き状態を確認する。
名前:刹那
レベル:25
種族:妖猫
性別:♀
クラス:猫ショウ
称号:《主の使徒》《アイドル》《主の義妹》
スキル:《主の祝福》《舞踏》《供吸精》《感覚共有》《愛らしい微笑み》《親衛の庇護》《仙術》《変化・劣》
状態:狂化(仙術)・人化
◆能力値
HP:527
MP:553
STR:360(+2)(1086)
SOL:208(+2)(315)
INT:295(+2)(0)
MIT:323(+2)(487)
MIN:312(+2)(0)
DEX:320(+2)(483)
AGI:381(+2)(574)
LUK:363(+2)(547)
いつの間にかレベルが上がっているのはさておき、狂化ってのが原因か。
症状はSTR2倍、INT・MIN0、痛覚麻痺、理性・判断力欠如……。
その狂化の原因は仙術みたいだな。
《仙術》はMP継続消費で全能力1.5倍、さらに固有技あり。ただしランダムで狂化のバッドステータス付加。確率は未熟なほど高く、仙術の発動時間に比例して高くなっていくのか。
……仙術と狂化が重複して攻撃力3倍になってんぞ、おい。
仙術は限界以上の力を得る代わりに暴走の危険を内包したスキルって感じか……。う~ん、どうすっかな……。
「……パァパ」
「ん、どうした?」
どうしたものかと、悩んでいると水奈が話しかけて来た。
「……刹那ねぇだけズルい。わたしもギュッてして」
いや、ズルいとか言われても……。
「これは刹那が狂化でおかしくなってるから、暴れないように押さえているだけだぞ」
幸い狂化状態でも俺に対しては命令に微妙に逆らう以外の行動はないので、多少もがきはしているものの安全に押さえていられる。
「……むぅ……。その『きょーか』っていうのがなくなったら、わたしもギュッてしてくれる?」
「……まぁ、別に構わんが……」
「……ん、わかった……刹那ねぇ」
「……なんですか、水奈ちゃん。」
会話中も俺の腕から脱出して侵入者を殺ろうともがいていた刹那が動きを止め、水奈に返事を返す。
「そうだ、水奈ちゃんからも兄様に……」
「……えい」パシャッ
水奈はそれに対して応えずに……むしろ刹那の言葉を遮って水をぶっかける。
「わぷっ、何をするの、水奈ちゃん!?
……はれ、ここはいったい…………!?
に、兄様っ!?どうしてわたくしのことを抱きしめて!?
あ、あの……嫌というわけではありませんが……むしろ、抱きしめられるのは嬉しいのですが、その……水奈ちゃんが見てますからっ」
刹那は水奈に水をぶっかけられたことに抗議の声をあげると同時に正気に戻ったようだが、狂化状態の時の記憶はないみたいだ。
……狂化状態の時と同じようなことを言ってるけど。
「……狂化状態ってのは水をかけるだけで治るのか?」
「へ?狂化状態?」
「……うぅん、変若水」
あ~、なるほどね変若水なら納得だわ、癒しの水だしな。
刹那のステータスを確認してみると、確かに狂化の文字は消えている……が。
状態:興奮(仙術・劣化)
なんか他のがついている。詳細はSTR10%上昇とSOL・INT10%下降、理性・判断力弱低下か。
狂化よりもメリット・デメリットともにだいぶ劣化しているな。完全に治ってないのは水奈の変若水が正確には《変若水・劣》だからか?
まぁ、このくらいなら押さえなくても大丈夫か。
そう考え刹那を解放する。
「……ぁ……」
なに、その名残惜しそうな声?
「い、いえ、なんでもありません」
「そうか……ところで刹那、どの辺りまで覚えている……いや、お前どの辺りで記憶が途絶えてる?」
刹那がごまかしているから聞かなかったことにし、話題を振る。
「……そうですね……。猫ショウに進化したあと猫の姿のままでは勝てないと思い変化の術で人の姿をとったところまでです」
ってことは仙術の発動は刹那の意思じゃないのか?仙術のトリガーは人化?
「仙術を使った覚えは?」
「仙術……ですか?いえ……ただ、朧気ながら力を求めた記憶なら……」
それなら人化とは別か……人化と力を求めたからかな?
とりあえず先ほどの刹那の状態を説明する──途中で「侵入者が戦意を喪失しました」ってメッセージが聞こえてきたのでどうやら河童は侵入者の心を折るのに成功したらしい──と、
「そ、そんなはしたないことをわたくしが!?それに兄様に逆らうだなんて……!!?」
激しく動揺し、落ち込む。まぁ普段の刹那からは考えられない姿だったからなぁ……。
「……パァパ」
刹那にどう声をかけたもんか悩んでいると水奈が不機嫌な顔で声をかけてきた。
「……約束」
約束?……ああ、ギュッてして、ってやつか。
「ほれ」
「……えへへ」
ふぅ、水奈には癒されるが、刹那はどうしたもんかな……。