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白銀の少女

 

 刹那のステータスを開いて確認してみたいが、今はその余裕があまりない。剣士は刹那が相手しているし、斧男も片腕が斬り落とされてもがいているが、いつ復活するかわからないので油断できない。

 今のうちに止めを刺せばいいのかも知れないが、あまり殺したくはない。最初の4人組の失踪は以後は人死にを出していない──今日1人増えたけど──このダンジョンと関係がないと見られているっぽいので、このままできるだけ人を殺さないダンジョンと思われていたい。

 

 

 光が収まり、刹那が再び姿を……え?

 

「なっ!?」

「お覚悟を!」

 

 刹那が立っていた場所には銀髪の女の子がいた。

 年齢は六花より少し上の10歳ほど、髪の長さは肩よりも少し長い程度で薄桃色の着物を着ている。

 そして何よりも特徴的なのは頭についた猫の耳と、腰から生えた二本の細長くしなやかな尻尾だ。

 

 白銀の髪の女の子はその手の爪を伸ばし、剣士に襲いかかる。俺の目がおかしくなければ女の子の周囲には白銀のオーラが漂っているようにも見える。

 ……あれ、刹那だよな?

 刹那のいた場所に現れたし、白銀の体毛に2本の尻尾と猫の耳なんて進化した刹那の特徴だし。

 う~ん、進化したばっかで気が立っているのか、珍しく防戦に徹しろと言った俺の指示を無視してる。幸い進化した影響で強くなったため攻勢に出ても危うげな様子はないので、やり過ぎない限りは問題ないが……つーか、強すぎねぇ?

 なん剣士が防戦一方なんだけど。

 最初はガードしながらも反撃してたけど、今は反撃どころかガードすらちゃんと間に合っていないぞ。

 

 ……っと、そろそろ止めないとマズイな。

 

「水奈、そこで呻いている男を拘束しておいてくれ」

 

「……わかった、パァパ」

 

 斧男を水奈にまかせ、刹那の背後から近付き、

 

「兄様のため、お消えくださ……「はい、ストップ」……兄様!?」

 

 剣士に止めを刺そうとする刹那を抱きしめて止める。

 ……ふぅ、なんとか間に合ったか。

 

「兄様、離してくだ……いえ、抱きしめられるのが嫌なわけではありませんが、むしろ抱きしめていただいて嬉しいのですが、今はお離しください。その方を殺せません」

 

「うん、だから離さない、殺すのはなしだ」

 

 なんか妙に興奮してんな。普段からできるだけ殺すな、って言ってあるはずなのに。

 

「でも……」

 

「とりあえず落ち着け」

 

「はい」

 

「水奈、そっちの男を持ってきてくれ」

 

 水奈に命令して斧男を持ってこさせる。水奈は身体の一部を切り離してゼリー質の物体をつくることができ、今回はそれで縄作って拘束してもらったわけだが……何で亀さん縛り?

 

「なんでその縛り方……つーか、どこでその縛り方を覚えた?」

 

「……だめ? このまえ久遠ねぇがおしえてくれた」

 

 犯人は久遠か……あいつはあいつでどこで覚えたんだよ? 後で問いただすか……。

 

 

「さて、お前たちここらでもう帰ったらどうだ」

 

 とりあえず諸々のことは後でやるとして、侵入者たちに降伏勧告。

 

「何をふざけたことを……こちとらこいつが腕を持ってかれて……」

 

「だから腕以外もなくならないうちに帰れって言ってるんだよ」

 

 そんなぼろぼろな状態で凄まれても恐くない。たぶん今なら俺でも素手で殺れるくらいに弱っている。

 

「だ、だれがそんな脅しに乗るもんか。知ってんだぞ、このダンジョンが人死にを出したことがないってことを」

 

 う~ん、死人を出してないとやっぱナメられるか。実際には5人死んでるけど。

 やっぱりここいらで外の奴らにもわかる形で……ってダメだな。無駄に警戒されても面倒だし。

 

「「「クケー」」」

「「…………」」カサカサカサ

 

 おっ、河童たちがやって来たな。ついでに大蜘蛛夫婦も。

 

 

「ちょうどいいところに来たな

 アスラとツムギは糸で腕のないやつの止血を……「へっ、やっぱり殺せねぇチキンじゃねぇか」……そのあと河童たちはコイツらの身ぐるみを全部剥いでダンジョンの外に投げ捨ててきてくれ。

 ああ、そのときこれでもかってくらいに恥ずかしい格好にデコレーションしてな」

 

 命令の途中なにやら雑音が聞こえてきたが、無視してマジックやリボンなど、デコレーショングッズを作成して河童たちに渡す。

 

「なっ、てめっ」

 

「「「クケー」」」

 

「てめっ、この……モンスターが……」ジタバタ

 

「刹那、あいつの精気を死なない程度まで……いや、やっぱいいや」

 

 暴れてるから抑えようと思ったが、今の刹那だと殺しちまう可能性がある。つーか、今命令してた段階で目が殺る気満々だったぞ。

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