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猫ショウ

  

「せいっ……ぐっ」

 

 ギリギリで身体を割り込ませることに成功した俺はその勢いのまま斧の腹を拳で弾く。当然ながら素手で斧を弾ききれる訳がなく拳は裂けてしまう。

 

「……パァパ!?」

「ニャッ!?」

 

 また逸らしきれなかった斧で脚も少し斬られてしまい、背後の水奈達に飛び散った俺の血が降り注ぐ。

 

「大丈夫だ、こっちのことは気にせず攻撃を凌ぎ続けろ」

 

「……う、うん」

 

「おーおー、優しいね~。モンスターなんか庇っちゃって……下吐がでる」

 

「うるせぇよ」

 

 さぁ~て、どうすっかな。ただでさえヤバいのに右手と右脚が使えなくなってヤバさが加速しちまった。おまけに入り口付近には特に仕掛けは作ってないから打開策もない……って、あれは……。

 斧男に注意しながら周りを見渡していると、斧男の背後に……一振りの刀……妖刀がある。……ああ、普段から腰に差したり罠として使ってたから忘れてたけど……。

 

 ヒュン、ザクッ

「ウギャァァアア!?!??」

 

 妖刀って自立行動ができたっけ。

 

「よくやった」

 

 妖刀は斧男の腕を斬り落とし、俺の手元に飛んでくる。

 よしこれならなんとかなる……。

 そう安堵しかけたそのとき、

 

「……ウニャア……」ドクンッ

 

 刹那から妙な感じの鳴き声が聞こえて来た。

 

「どうした刹那!?」

 

 斧男はしばらく放っておいても大丈夫そうなので刹那の方へ振り向き安否を確認。

 

「何だかわかんねぇが、厄介なことになりそうだから止めさせてもらう、ぞっ」ビュンッ

 

 すると剣士が刹那に剣を振り下ろしているところだった。

 

 ──化け猫刹那がステータス条件を満たし、特殊条件『浴血』を達成しましたので猫又に進化できま……ザーザー……特殊条件『主の血』を満たしたので猫ショウに特殊進化します。

 

 

 だが、それと同時に刹那の進化を告げるシステムメッセージが聞こえて来た。

 

「ニャァァァァアア!!!!」

「ぐっ……」

 

 メッセージが流れた瞬間、刹那を中心に衝撃波が発生し、その身体が輝き出す。

 

「水奈、掴まっていろ」

「……ぅん」

 

 飛ばされないよう水奈を抱きしめ、衝撃波に耐える。

 

 水奈と同じ強制進化か……。

 

 光が収まったので刹那の姿を確認すると……尾が二本に増えている。

 確か猫ショウは猫又の一種だから外見は猫又と同じ尾が二本の猫。そして元から銀色ではあった体毛が、全く汚れやくすみのない白銀に変化している。

 

「ぁん? いきなり光ったかと思ったら、尻尾が二本になっただけかよ」

 

 衝撃波に吹き飛ばされていた剣士は再び刹那の前に立ち斬りかかろうとする。

 

「ウニャア! ニャン!」

「ぐっ……」

 

 だが刹那は一鳴きして躱し、逆に攻撃を加える。その動きは普段のものよりも格段に速く、そして正確な動きだ。

 その素早く正確な攻撃に剣士は防戦一方、いくらかはガードしているがガードをすり抜けている攻撃の方が多い。

 

「ニャッニャン、ニャァ」

 

「く、この……調子に、のん……なっ!」

「ニャッ!?」

 

 素早く正確ではあるものの、先程までよりは大きいが、まだ子猫な刹那の攻撃は軽く、防戦一方だった剣士は防御を捨て攻撃を無視しながら乾坤一擲の一撃を放ち刹那を吹き飛ばす。

 

「ニャ」

 

 しかし刹那は猫の身のこなしで空中で体勢を整え難なく着地する。

 

「ニャア……ニャァァァァァァァァァアアア!」

 

 そして覚悟を決めたかのように頷き、雄叫びをあげ再び輝き出す。

 

 また進化……じゃないな。

 

 メッセージもないし、見たところ刹那の意思で光りだしたみたいだし。それなら進化したことで出来るようになった新スキルかな?

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