久遠?
え、なにコレ? 初級ダンジョンに来る奴のレベルじゃねぇよ!
天馬聖騎士とか明らかに上級職だし。つーか、100がレベルキャップじゃなかったのね。
…………ん?天馬聖騎士ってことは天馬が相棒でいてもおかしくないわけだが侵入者には居ない。まさか人馬一体とかで、表示されなかったけど天馬もいるってオチじゃないよな?
……それよりどうするよ? こんな化け物の相手なんてできそうにないぞ……。
「パァパ」
どう采配すべきか悩んでいると水奈が帰って来た。
「どうした水奈、六花と一緒だったはずだろ?」
「……うん、六花ねぇがね……内部のしんにゅうしゃは、六花ねぇがなんとかするから、パァパは入り口のをおねがいって」
うん、頼もしい言葉だけど入り口にいるのは半端なく強そうな人なんだよね……六花は侵入者が来たってことしかわかってないから数の少ないこっちを任せたんだろうけど。
さて、どうするか……って格上が侵入してきた時用にトラップルームは試作してあるんだが、そこに引き込むしかないか……ちょうど入り口付近にそこへのポータルが用意してあるし。問題は格上過ぎて効果があるのかわからんことだが……。
「今回の敵はレベル105と強力だからエクストラルームに引き込む。
水奈は2層の連中に、刹那は3層の連中に2層のエクストラルームに集合をかけてくれ。その後六花と合流して内部の侵入者を撃退したらお前たちもエクストラルームに。
俺と久遠は入り口の奴をエクストラルームに引き込む」
「ニャ、ニャア!」
命令を告げると刹那が危険だと止めてくる。
「危険なのはわかっている、だからなるべく早く合流して来い。さぁ、行くんだ」
「ニャッ、ニャニャア」
「パァパ、久遠ねぇ、しんぢゃ、や、だよ」
だが他に手がないので刹那には悪いが説得を交えながら断る。
すると、刹那と水奈は納得はしていないものの、なんとか呑み込み、それぞれそう言って部屋を出ていった。
「すまんな、久遠」
「クゥン、クォンッ<気にしないで、お兄様>
クォンックゥ-ン<アタシの命はずっと貴方と伴に……>」スリスリ
道連れにしてしまった久遠に謝ると、久遠の鳴き声と重なるように、何者かの声が聞こえてきた、それも耳にではなく、頭に直接響くように。
「今の……久遠……か?」
「クゥン?」
久遠は何の事、という風に首を傾げているが、その表情はどこかイタズラっぽい。六花曰く、刹那は俺の事を『兄様』、久遠は『お兄様』と呼んでいるらしいのでたぶん当たりなのだろう。
「いや、何でもない。それじゃあ行くぞ、久遠」
「クォン!」
元気付けてくれた久遠を一撫でし、共に1層に向かって歩き出す。