水奈新生
ふぅ……いい湯だな、しばらくぶりの水やぬるま湯じゃない風呂は。
「はふぅ……お湯のお風呂ってこんなに気持ちのいいものなんですねぇ~」
お湯風呂初体験な六花も気持ちよさそうにしている。これだけでも風呂を温泉にして変若水質にしたかいがあったな。
「…………ァ……」
「ん?何か言ったか、六花?」
なんか声が聞こえたような気がしたが……。
「いえ、わたしは何も……」
「それじゃあ久遠達か?」
「クゥゥン」フルフル
違うのか……空耳かな?
まぁいいか、それより刹那は相変わらずこっちに来ないな。なんでいつも俺から離れた位置にいるんだか……。
「…………ァパ……」
…………やっぱり空耳じゃねぇな。
「あの主さま……」
「六花にも聞こえたか」
小さな声ではあるものの、確かに声がした。それもわりと近くから。
どこだ?周りを見渡し警戒していると、
「……パァパ」サバァー
温泉からなにかが勢いよく現れた。
湯の中から現れたのは水色で半透明な小さな女の子、年齢は……3・4歳くらいか?
え? なにこの娘? とりあえず明らかに人間じゃないけど何者?
「……パァパ」
……パァパ……って、パパ!?
俺、娘ができるようなことをした覚えなんてがないぞ。
「あ、あの……主さま……」
「いや、六花、これは何かの間違いだ」
──特殊条件を満たしましたので水妖・水奈は変若水比女・幼体に進化しました
訳もわからずとりあえず六花に言い訳をしていると、システムメッセージが聞こえてきた。
……え、この娘が水奈?
「……お前、水奈なのか?」
「……ぅん、パァパ」
水奈で間違いないようだが……メッセージが遅い!しかもいつもなら『○○しますか?』なのにそれもなしかよ……。
「あ、やっぱり水奈ちゃんだったのですね」
あれ?
「六花は気付いてたのか?」
「はい、水奈ちゃんはお風呂から上がっていませんでしたし、変若水は霊厳あらたかな水ですから水の性質の強い水奈ちゃんなら何かあってもおかしくはないかな、と……」
気付いていたなら教えてくれても……って、遮って妙な言い訳を始めたのは俺か……。そもそもなんで俺は六花に言い訳を始めたんだ?
とりあえず水奈のステータスを確認してみると
名前:水奈
レベル:6
種族:水妖
性別:女
クラス:変若水比女・幼体
称号:《主の使徒》《主の義娘》《奇跡の生還者》
スキル:《主の祝福》《水態・秀》《下級流水魔法》《変若水・劣精製》
◆能力値
HP:133
MP:172
STR:102
SOL:170
INT:80
MIT:142
MIN:83
DEX:91
AGI:69
LUK:129(+777)
進化した分仕様変更した六花達よりも少しステータスが高くなってけど……なんかLUKに半端ない補正が入ってんな。
え~と、
《奇跡の生還者》
ほぼ助からない状態から生還した者に与えられる称号
か……奇跡ってのは初級ダンジョンに普通重態を回復させる手段なんてないから、そのことかな?
まぁ、その辺りはいいんだけど《義娘》って何よ?いきなりそんな称号付いててビックリなんだけど?確かに俺が生み出したし、進化前から妙に懐いてきてたけどさ……。
「なぁ、水奈」
「……なに、パァパ……?」
「この義娘ってのは……」
「……だめ……?」
くっ、そんな悲しげな上目遣いは反則だろ……。
と、言うわけであっさり義娘と認めました……決して認知じゃないので悪しからず。
「ぁぅ……水奈ちゃんが主さまの義娘ということは、わたしたちは叔母さんなのです……」
そういやこの娘たちは義妹だっけ。見た目幼女なんだから気にすることないのに……。
ふぅ、久しぶりのお湯の風呂を堪能したぁ。ポイントがほとんどなくなったけど、水奈も進化したし作って良かったな。
ただ最初の計画にあった1層にこの周囲のモンスターを放つ予定はしばらく延期かな。管理者の大蜘蛛夫婦には延期中は待ち伏せからの不意討ちでなんとかしてもらうか……。
ただ、これからは人間も侵入してくることになるだろうから気をつけないとな。侵入者曰く近くに街道があって宿場町ができるらしいから、町ができる前に露払いで一気に攻め落とされるか、町ができてら継続的に攻められるか……。
初級ダンジョンは初心冒険者の訓練にうってつけの場所だから、初級を維持して外へ進出しないようにすれば大丈夫だとは思うが……。う~ん、今日の侵入者を全滅させたのは失敗だったか?
……まぁ気にしても仕方ないか、あいつらバカっぽかったから退きそうになかったし。うん、次から気をつけよ。
はて、おかしいな
水奈は単なる触手要員で人化する予定なんてなかったはずなのに
今回のなぜか水奈メイン回になったけど、本当になんで水奈がメインキャラになったんだろ?