初めての対人戦
石仮面を装着したところで、4人の男が大部屋に入って来た。
「む、ここは大物用の部屋で御座るな」
「うむ、更に下に階層があるやも知れぬが……。おそらく、魔物や迷宮の質から考えると迷宮主の部屋はすぐそこであろうな」
「ああ、まったくシケたダンジョンだぜ!」
「まぁそう言うなって、どう見ても出来立てダンジョンなんだから運がいいじゃねぇか」
「ったく、てめえはいいよな、そんな武器を手に入れやがったからよ!」
「へへっ、まぁな。確か刀っつったか、これ? 一緒に見つけたのに本当に俺がもらってもよかったのかよヒデアキ?」
「刀は武士の魂、確かにそれは業物ではあるが我は既に自分の魂を持っておるのでな。ミツヒデ殿も持っておるから我らには必要ない。だがお主はよく扱えるな?」
「確か俺らの使うような剣とは扱い方が違うんだったか? 俺にもよくわかんないだがよぅ、なんとなく身体が動くんだよ」
「もしかすると刀に選ばれたのやも知れんで御座るな、佳き道具は主を選ぶと申すし。拙者のこの火縄銃との出会いと同様、運命で御座ろう」
まだこっち気付いてないらしく、話し込んでる……。ダンジョンで暢気に話しとは思っきしナメられてんな……。まぁいいか、罠には引っ掛かってくれてるし。
《妖刀》
刀の妖怪で、自ら浮いて斬りかかって来たり、手に持った者を操る能力がある。
野生動物を退治して貯めたポイントを使って二鬼作成してみた。一鬼は俺が腰に差し、もう一鬼はダンジョンに設置。
つまり侵入者が持っているのがもう一鬼の妖刀だ。
ダンジョンに設置した方に出した命令は2つ。手にした者が外に出ようとするか、大部屋に来たときにタイミングを見計らって同士討ちをさせるというもの。
そして、妖刀を手放さないように持った者の身体を操る能力を応用して刀の使い方をアシストすることだ。
ちなみに、刀の使い方のアシストは俺もしてもらっている。
「お、モンスターがいやがるぜ!」
やっとこっちの誰かに気付いたな。
「金毛の狐とは珍しい」
「へへっ、毛皮が高く売れそうだな」
気付かれたのは久遠か……。それなら、
「「「クケェ!」」」
河童たちが相手になるな。
六花、久遠、刹那に攻撃しようとすると河童たちが守りに動く。
「な、なんだコイツらは!?
こんなモンスター見たことねぇぞ!」
「コイツらは……亀か?」
何で亀?甲羅はあるけどさ……。
「いや、こやつらは河童で御座る。拙者たちの故郷固有の魔物……妖怪の一種に御座る!」
「だが、なぜこのようなところに……」
ふむ、妖刀じゃない自前の刀を差してる二人は河童を知っていて、大剣を持っているのと妖刀を持っている奴は知らないのか……。『故郷固有の』や『なぜこのようなところに』ってことは刀持った二人の故郷は遠い地にあって、この辺りには妖怪のことを知ってる奴は少ないと見てよさそうだな。
この情報が入ったのは嬉しいが、数少ない妖怪を知っている奴に出会すとは運が悪いな。妖刀と気付かれる前に片付けた方が良さそうだ。
「クォォォォン!」
「「「クケェェッ!」」」
ウェアウルフ戦と同じように久遠が河童たちの幻影をつくり、河童たちはそれに紛れ侵入者たちを取り囲む。
「ちっ、数が増えやがったぜっ!」
「惑わされるな、狐のあやかしは人を化かす、幻影であろう」
ああ、やっぱり手の内がバレているのは厄介だな。まぁ幻影だとバレても時間稼ぎはできるからいいけど。
河童たちが取り囲んで相手をしているうちに感覚を繋いでいる刹那を通して、まだ見つかっていない奴らに指示を出す。
しばらく、戦いが続きコクホウを除くオスの河童が死に始めた……。死に戻りでレベルが下がるのは痛いな……。それにコクホウもかなりダメージがあってそろそろヤバい。……まだか、このままだと……おっ!
積みかけた状況に焦りを感じ始めたその時、雨が降り出した。
よし、ナデシコの雨乞いがやっと成功したな。
「ちっ、これでは拙者の火縄銃が使えんで御座る」
よし、これであっちの最大攻撃力の銃を封じ込めれた。