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ウェアウルフ

 刹那の目・耳を通して送られて来た情報を吟味する。

 人が来ないと思ってたらこのあたりには人間がいなかったんだな……。って、考えるのはあとだ。

 とりあえず犬……確かウェアウルフが来るから準備しないと。

 毛皮の上からでもわかるほどガリガリだったとはいえ、レベルはあっちが上だから油断はできん。

  

 ウェアウルフってちょっと獣人を期待してたけど、純度100%の狼……。二足歩行だから刹那と同類か? 人の部分の多い獣人だったら生け捕りも考えたんだけどな……。

 

 とりあえず刹那を呼び戻し、戦闘体勢を整えるか……。

 

「グルルッ」

 

 ちっ、それより先にウェアウルフの方が来やがったか、仕方ない。

 

「河童たち、女は産卵部屋を守って男は侵入者を囲めっ! 久遠は幻影で撹乱、六花と水奈は協力してあいつの体力を奪えっ!」

 

 オスの河童たちがウェアウルフを囲み、久遠が幻影で見かけ上の河童の数を増やす。

 

「クケケッ」

「グルァ!?」

 

 ウェアウルフを取り囲んだところでコクホウが茶色い塊をウェアウルフに投げつける。

 ……あれは、肥溜めの中身か?

 

 ちょこちょこ入ってくる野生動物のおかげで少しだがポイントがたまったのでダンジョンを強化したんだが、その時に追加したトラップが肥溜め

 このダンジョンの至るところに設置してみた。

 

「グギャァァァアアア!!?!?!」

 

 うっわ、スッゴい効き目……そういやこいつ豚野郎のにおいを追って来たんだったっけ、それなら鼻を潰さないと幻影も意味がなかったな。

 

「よくやった、コクホウ。

 よし、悶え苦しんでいるうちに皆でかかれっ!」

  

 プルプル、プルンッ

 

「冬の息吹!」

 

 一斉攻撃の指示に、まず水奈が水弾を放ち、六花がずぶ濡れになったウェアウルフに凍り付かせる。一気に凍らせることはできずとも、表面的に凍り付かせて動きを鈍らせながら継続的に体力を奪う。

 このウェアウルフは毛皮があるが、その上からでもわかるほどにガリガリなので寒さには強くないはずだ。おそらく奴隷と表記されていたのはこいつだろう。

 

「「「クケェ!」」」

 

 続いてコクホウを含めたオスの河童たちがフルボッコ。

 う~ん、意外とあっさり終わりそう、レベルが上の相手とはいえ警戒し過ぎたかな?。……だいたいこのウェアウルフ、たぶんだが腹の減りすぎで満足に戦えそうにないし、久遠の幻影もいらんかったかも。

 

「グルル、ガウッ!」

 

 ウェアウルフは肥やしの臭さに慣れたのか河童たちを振り払って起き上がり、突撃をしてきた。幸い突撃先にいるのは幻影だから心配いらないが、レベル差的にあの勢いで突っ込まれると耐えられるのはコクホウくらいだろうな。

 

 

 ん?

 あれ、もしかしてあのウェアウルフが狙っているのって……。

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