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豚野郎襲来

 

「行って、ユキちゃん達」

 

「クォン!」ボゥッ

 

 

 六花が魔法で作ったユキウサギを数体発射し、久遠がそれを狐火で溶かす。

 

「ニャッ」

 

 プルンッ、ウネウネ

 

 ユキウサギを放った反動で動きが止まった六花に刹那がその前足に持った槍で襲いかかるが、水奈が触手を伸ばしガード。

 

 

 ……別に喧嘩をしているわけではなく、2対2の戦闘訓練をしている。二週間前に六花の懇願を受けて六花達にも戦闘訓練をしているわけだ。

 六花は後衛で刹那は前衛、久遠はどちらもいけるタイプなので同じくどちらもいける水奈もまぜて訓練している。

 

 ちなみに名無し河童達は六花達の魅力に耐えらないので訓練相手にはならないし、魅力に耐えられるコクホウは強すぎるし、ナデシコは支援系なので別の意味で訓練相手にならない。

 

 六花が水を一気に凍らせることが出来れば水奈や周囲の水との組み合わせでかなり強力になるんだが……。

 

「六花、溶かされた雪を凍らせるんだ」

 

 今はこの程度しかできない。まぁ、まだレベルが低いからしかたないな。基本的に外敵退治してるのはコクホウ達が経験値を多く得てるわけだから。

 ただ少し謎なのは、なんで六花の放つ氷魔法はユキウサギなんだ?

 六花らしくてかわいいけどさ。

 

「クォォォォ……」ボゥッ、ボボボボゥッ

 

 久遠は俺の称号《火を厭う者》の影響で狐火の威力が落ちているが一瞬だけ魔力を込めて強くしたり、幻影を混ぜたりした巧い使い方で威力不足を補っている。……たぶんうちで一番戦いが巧いのはこの子だろう。

 ちなみに今は六花の氷を溶かしながら、幻影と本物の狐火をまぜて攻撃準備をしている。

 

 

「ニャッ、ニャンッ」

 

 刹那は槍に絡み付いた水奈の触手を払い、水奈から距離をとる。

 刹那は猫なのに何故か武器が持てる……より人型に近い河童たちは持てないのに。なので刹那用に槍……と言っても刃と柄の長さが同じくらいの、長巻やロムパイアに近いものを作って持たせている。

 刹那には《感覚共有》のスキルがあり、策敵に向いているので単独行動の可能な前衛に育てている。

 

 水奈は時に触手で攻撃し、時にその身体で包み込み、時に水の魔法で攻撃する。水の魔法は後々六花の氷魔法とのコンボができそうなので今のうちから積極的に組ませている。

 水奈は水さえあれば無敵くさいんだよな……。水を吸収放出して身体のサイズを自在に変えられるし……ステータス的に一番強いコクホウよりも強いかも。

 

 

 

 

 

 ──ブーブー

 侵入者が現れました。

 

 六花たちの訓練をほどほどのところで切り上げ休憩しているとアラートが鳴り、侵入者の存在を告げる。

 

 ──ブーブー

 豚野郎(オーク)2体の侵入を確認しました。

 

 今回はオークか……。相変わらず侵入者は動物かモンスターだな。人間はまだ一度も来てないけど、この世界にちゃんと人間はいるよな?

 いつも思うんだが、ウィンドウに表示される名前はなんとかならんかな?豚野郎にルビでオークって……。

 

 

 う~ん、ちょっとタイミングが悪いな……ちょうど見回りの交代時間で、足止め役の見回り組がこの大部屋にいるんだよな。

 だから……、

 

「「ブヒーッ」」

 

 まっすぐ豚野郎がやって来るわけだ。

 この1ヶ月考えてたが、いくら警備が薄いとはいえ侵入からすぐにこの大部屋まで侵入されるのは不味いよな。その所為で本来ボスで戦う機会の少ないはずのコクホウのレベルが上がっているから悪いことだけではないんだが。

 人間ならマッピングしたり、探索したりするだろうからもうちょい大丈夫かな……?

 とりあえずその辺りは後で考えるとして、

 

「六花たち、戦闘配備だ……訓練の成果を見せつけてやれっ!」

 

「はいっ!」

「クォン!」

「ニャア!」

 プルンッ

 

 今は豚狩りに集中するか。

 

 

 

 

 

 豚野郎との戦闘は呆気なく終了。いくら豚とはいえ人型なのは食う気が起きないし河童たちも基本草食なので処理は魑魅魍魎任せだ。……ただ、最近魑魅魍魎が増え過ぎだな。そのうちポイントに還元しないとな。

 

 

「よくやったな」ナデナデナデナデナデナデ

 

 頑張ったみんなの頭を撫でていく。

 

「えへへ」

「クゥン」

「ウニャ~」

 プルルンッ

 

 

 う~ん、六花たちが勝ったのは嬉しいが、あの豚野郎が妙に弱い……と言うか弱ってたような気がする。そもそも豚野郎……オークは単独以外は5体前後で活動しているはずなのに2体しかいなかったのも気になる。

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