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河童王コクホウ

本日2話目です

 

 六花の話によると、六花を轢いたのは鹿の中でも一番でかいボス鹿……ではなく、その隣にいる少し小さいの。

 

「コクホウお前たちは大きい方を殺れ、こっちは俺が殺る」

 

「クケ!」

 

 ボス鹿の大きさは3mほど、それに対して河童たちは50cmとかなり体格差があるけど8対1ならなんとかなるだろ。現にそれより小さい2体のうち1体は殺れてるし、もう1体もかなり弱っている。

 

「さて、お前の相手は俺たちだ、行け、鬼火たち」

 

 鬼火を3体けしかけて隙を作り、水奈を後ろに回り込ませ逃がさないよう……、

 

「水奈、水を掛けて、水中に引き摺りこめ」


 水の中に引き摺り込ませる。鬼火のHPは少なくすぐに殺られるが、再下級のモンスターなので即座に復活し、《鬼火への誘い》の効果で徐々にだが数を増やし鹿のHPを削る。

 さらに水奈が掛けた水を凍結させ、体温を奪って動きを鈍らせ、

 

「解体ナイフを作成──承認」

 

 俺が1体目の鹿から得たポイントで解体ナイフを作り、

 

「死ね」

 

 鹿の首……頸動脈を切る。

 まだ死に至ってないが、放っといたら死ぬだろう……こいつは楽には殺さない。

 

「水奈、そいつの後ろ脚を掴んで逆さ吊りにしておいてくれ」

 

 じわじわ殺すついでに血抜きをする……血抜きって生きているうちにしないと肉質が悪くなるんだよな……。本当は首を斬り落とすのが良いんだけど、こんなナイフじゃ無理だ。

 

 

 さて、六花の仇討ちは終わったからもう1体は殺らなくてもいいんだが……あの鹿キレてんな。

 1体目の鹿が倒れたあたりから激しく暴れだしたからアッチも仇討ちのつもりか?こっちの河童も何体か殺られてるな……すぐに復活して戦線復帰してるけど。幸いコクホウは殺られてない

 ……どういう気分なんだろうな、自分の遺体のそばで戦うのって。

 

「コクホウ、こっちは終わった、加勢す……」

 

「クケ」

 

 加勢しようとしたがコクホウに止められる。

 

「クケククケ、クケケクケ」

 

「「こっちはもうすぐ終わるから、旦那は姫様たちのところに居てやってくだせぇ」か?」

 

「クケ」

 

「わかった、無理はするなよ」

 

 コクホウが大丈夫と言うなら大丈夫だろ。

 コクホウの言葉を信じ、六花たちのところに向かう。

 

 

 

「あ、主さま申し訳ありません、主さまの手を煩わせるような……」

 

「そんなことはどうでもいい、頬は大丈夫か?」

 

「はい、刹那ちゃんとナデシコさんのおかげで腫れも退きました」

 

「そうか、それは良かった……よくやった刹那」

 

 刹那を褒め撫でる。

 

「ニャア~」

 

「……ナデシコはどうした?」

 

「ナデシコさんは主さまとすれ違いでコクホウさんたちのところに向かいました」

 

 コクホウのいる方へ目を向けると、確かにナデシコもいる。……初級の治癒魔法を使っているな。勝負を決めるつもりか?

 

 小河童にはスキル《尻子玉抜き》がある。

 その効果は『HPとMPを最大値の半分を消費することで相手の現在HPの30%のダメージを与えられる』というもの。

 

 HPとMPの消費が激しいが固定ダメージ攻撃はかなり嬉しい……が現在HP準拠なのでとどめは刺せないがもうひとつ効果があり、それは、

『相手のHPが最大値の10%未満ならとどめを刺すことができ、入手経験値・ダンジョンポイントが増加し『尻子玉』が手に入る』

 

 尻子玉は要らんが、他のはかなり嬉しい効果だ。

 ちなみに最初に他の小河童がやらなかった理由はかなり隙の大きい技でノーダメだと当たらないらしい……一度も見たことないので詳しくは知らんけど。

 

「ククケ!」

 

 コクホウが一鳴きすると他の小河童たちは一斉にボス鹿の身体をを押さえ、動きを封じ込める。

 

「クケ・ク・ククケ!」

 

 コクホウが叫びながら身体を正面に開き左右の手が別々の色に輝く。

 輝くその手を身体の正面に突き出す形で組み、

 

「クゥ・クク・クァン・ケー・クコォ」

 

 何か唱えながら足元の水を操り、スライドしながらボス鹿に突っ込んで行く。

 

 ……なんだろ、何かが激しくツッコめって叫んでる。

 

「六花、コクホウが何を言ってかわかるか?」

 

「はい、最初が『地獄と極楽』で次のが『2つの力を1つに』って言ってたのです」

 

 最初の地獄と極楽はわからんが、2つの力を1つにってのは両手に集めたHPとMP──だから左右で色が違ったのだろう──を1つにしたことだろう。

 

「クケェェェエエ!!」

 コクホウは組んだ両手をボス鹿の尻に突っ込み何か白くて丸い物──たぶん尻子玉を抜き取った。

 

「ヴォォォオ……オ……ォ……ォ……」

 

 するとボス鹿の目から輝きが失われ、その場に倒れ込む。

 

 

 ──獣を1体撃破しました、50ポイント入ります

 

 お、ボス鹿も倒せたみたいだな、入ったポイントは最初に倒れた鹿の5倍、ボス鹿の方が強かったのに加えて尻子玉ボーナスだな。


黒鵬くんにはあの一発ネタのために黒くなっていただきました

河童の尻子玉を抜くって話から勇者王を連想しちゃったんですよね…

ちなみに黒鵬くんは「ウィータ」は言ってません

ちなみに尻子玉抜きのアクションはみんな違っていて勇者王のアクションは黒鵬くんだけです


溜めのアクションは必要なのですが他の河童たちは「俺のこの手が光って唸る」や「ROOM」など手を使う必殺技や、抜き取り系の技を使うときの言葉を言ってます


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