権力バリア
記念すべき100話です…………感想で言われるまで気付いてませんでしたが
「ったく、国外追放にまで俺を巻き込むとか勘弁してほしぃぜ」
「国外追放の割りにはあんたたち金回りがいいわね」
「んなもんアイツの親父がアイツをなんとしても国に戻そうと金に糸目をつけてないからだ。
アイツの生活や起こした問題への慰謝料を含めて定期的に大金をふんだくってんだよ。アイツの家からするとはした金だろぉが、せめてもの腹いせだ」
「ああ、ここを嗅ぎ付けたのも、金に糸目をつけてないからなのね……」
「そーゆーこった」
俺としては面倒事だからすんげぇ迷惑だけどな。
「しかし、国外追放になるほどの問題なのに、なぜ周りは止めなかったのだ?」
「ぁん? んなもんアイツが大貴族の跡取り候補で将軍の息子だからに……」
「いや権力バリアがあるにしても、反乱誘発につながりかねない事を止めないのはないだろう?」
「権力バリアって……」
「言い得て妙ね……」
本人はそれに気付いてないっぽいから権力バリア(パッシブ)だな。
「あ~そいつはいくつか理由がある。
アイツがこれと決めたら何を言っても無駄だし、アイツが姫と釣り合う身分だったし、その方が平定が楽だったし、アイツが誰かとくっつけば女関係くらいは大人しくなるかもって打算もあったが……」
「最後のはあんたの個人的な意見じゃないの」
「アイツの迷惑スキルをナメんな。
アイツと少しでも関わりのある奴は大なり小なり迷惑してんだ。少しでも影響が収まるなら、例え儚い希望でもそれにすがり付くんだよ。
事実、アイツが姫さんに掛かりきりだった間は徴収の妨害もなかったし、女関係の問題もなかった」
そこまでかよ。
「まぁ、止められなかったのは何よりも時間がなかったから、だな」
「時間って何の時間よ?」
「平定……ではないな、そこまで切迫していたわけでもなかったようだし」
「三日だ」
「「?」」
「三日……、それがアイツが姫さんを口説き始めてから、姫さんが自害するまでに掛かった時間だ」
「は? どうやったらたかが三日で人一人を自殺に追い込めるんだ?」
複数人で寝る間もなく責める、ってならできるかもしれんが……。
姫さんは豆腐メンタルだったん?
「王女だから心が弱かったにしても、それは……」
「いや、あの姫さんは心は弱くなかったぞ。いつまで婚約者を待ち続けるつもりだったし」
「本気でどうやったらそんな人を三日で死に追い込めるのよ!?」
「本気になったアイツのウザさを甘く見んな。
アイツの話を聞かなさ・理屈の通じなさで押し進められる会話なんて素人だと一時間もてば言い方だ。
ったく、せめて俺が近くにいればなんとかなったんだがなぁ……、上層部はアイツのクソウザさを甘く見すぎだっつの」
それ、もはや精神汚染だろ。
「あんたは何をしてたのよ」
「戦後のくそ忙しい間は俺みたいな下っ端は色んなところで雑用だ」
あの騎士はここで消しといた方が世のためじゃないか?
「ヒヒィーン!?」
──狂骨のスキル《狂化》が《虚ろなる魂を燃やせし怒り》へ変化しました。狂骨が『凶骨』へ特殊進化します。
不殺の原則を覆してでも騎士の男を始末しようか本気で思案していたその時、一角天馬の嘶きとシステムメッセージ、そして、
「お兄様、危ないっ」
「よけてください、にーさまっ」
久遠と刹那の警告がほぼ同時に聞こえてきた。