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プロローグ

 

 

 

 ここは……どこだ?

 

 目を覚ますと見覚えのない天井──何故かはわからないが『知らない天井だ』と言いたくなる──が目に入る。

 起き上がり周囲を確認すると……薄暗く確認しにくいがやはり見覚えのない部屋だ。薄暗いからまだ夜明け頃なのかと思ったが、窓自体がなく部屋の真ん中にある机の上の燭台が唯一の光源のようだ。

 

 どうしてこんなところにいるんだろ?

 昨日は確か……あれ? 昨日のことが思い出せない……いや、そもそも自分のことすら思い出せないぞ? 

 

 思わずパニックになりそうになるが、パニクっても仕方ないのでひとまずこの部屋に何かしらの手掛かりがないか確認してみる……結構冷静だな、俺。

 

 ……とはいえ、このあまり広くない──6畳間ほどの部屋にあるのは俺のいるベッドと部屋の真ん中にある机だけ、あとは外へ繋がっているとおぼしい扉のみ。だから確認すべき場所は机か男の聖域(ベッドのした)だけだが……。

 

 まぁ確認にすべきは一つだな。

 

 ベッドから立ち上がり……

 

 

 

 

 

 

 

 

 男の聖域(ベッドのした)を覗き込む。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……何もないな。

 

 

 

 

 ふむ、あてが外れたな。机の上には燭台以外何もないし……となると後は外に出るしかないか。

 

 

 扉を開き外の様子を確認してみると、そこは外ではなく目覚めた部屋よりも更に小さい4畳間ほどの小部屋。そこもこちらの部屋と同じく窓はなく、他所へ繋がる扉もこれしかない。そして部屋中央には妖しい光を放つ球体が台座の上、宙に浮く形で存在している…………宙に浮いているのなら台座は存在する意味あんのか? ……とりあえず、あからさまに怪しいから保留しとくか。

 

 妖しい球体は保留して元の部屋に戻ると、他に手がかりがないか部屋を探ろうと見渡してみると、机の上、燭台の脇に先ほどはなかったはずの紙がある。……これまたあからさまに怪しいが、さっきの球体よりかはましな気がするので調べてみる。

 机の側まで行き手にとってみると、俺が知る紙とは違う……羊皮紙ってやつか?

 

 羊皮紙に書いてあった内容をまとめると。

 

 ・あんた異世界から拉致って来たから。

 ・ダンジョンマスターに任命したから1ヶ月でダンジョン造ってね。

 ・1ヶ月経ったらダンジョンが開放されてダンジョンコアを求めて攻めて来るから死にたくなかったら気合い入れてダンジョン造って。

 ・素人には無茶振りだろうから補佐する道具を後であげるから心配すんな。

 ・ダンジョン作成はポイント消費で造れるから、最初は1000ポイントスタートな。

 ・衣食住もそのポイントからやりくりな。

 ・ダンジョン外の生き物を殺るとポイント手に入るからじゃんじゃん殺っていいよ。

 ・あんた素人だからノービス仕様で最初は作れるアイテムや装備もショボいよ。まぁレベルが上がったらいい装備も作れるようになっから死にたくなかったら死ぬ気でレベル上げな。

 ・あと、あんたの記憶、あんたの名前含めて消させてもらったから、あんたの名前今はノーネームだけど好きに名乗りな。

 ・ステータス見たいなら『ステータス確認』って言やいいから。

 

 ってところか?

 

 追伸のところに『男の秘宝は準備していません』とか余計なこと書いてたから最後数行は読んでないけど、どうせ追伸だから重要ことは書いてないだろうしいいか。

 

 

 色々言いたいことはあるけど、1ヶ月でダンジョンを仕上げないと死ぬから今は置いておこう。

 記憶は消えても知識や経験なんかは残っているみたいだな。名前……は後でいいか。

 

 内容を頭の中で吟味し、情報を整理していると何かが燃える匂いがしてきた。

 それになんか暑く……いや、熱くなってき……おわっ!?

 

 手に持った羊皮紙が燃えてやがる!

 あわてて羊皮紙を床に放り投げ、踏みつけて火を消す。

 

 ん?

 しばらく踏みつけていると足から感じる感触が変わった。何事か確認してみると火は既に消えていたが、そこに羊皮紙はなく一つのブレスレットがあった……。

 

 これは……もしかしてさっきの羊皮紙に書いてあった補佐する道具か?

 ブレスレットを拾い上げ……ん? なんか違和感があるけど何だろう?

 ん~、考えてもわからんから後にするか……。

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