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四人が独特のトレーニングメニューを終えたのは午前十一時三十分ほどだった。
戸締まり確認はトウジがするらしい。
「お疲れ様」
エントランス横のコインロッカーからソウ、カツト、ソノタが荷物を取り出しているとシオリが声をかけた。
「おつかれで〜す。シオリちゃん帰ったと思ってた」
ランニングシューズを履きながらカツトが言葉を交わした。
「まっ……式部さんに頼まれ事しちゃって。ソノタくんにタクシーチケット。武雄さん、あっ……ジュジュベのオーナーさん先に帰ったから、これで帰って、ってさ」
シオリに封筒を押し付けられて、ソノタがあわてて受け取った。
「えっ?あっ、どうも」
「タクシー、ここ呼ぶ?駅で拾うなら私の車で送ってくけど」首をかしげてシオリは、ソノタに笑いかけた。
「シオリ、ソノタは一応芸能人だぞ、粉かけてどうするんだよ。どっかに雑誌記者がいるかもしんねぇぞ」
ランニングシューズを履き終えたソウが、出入口から不機嫌そうな声を出した。
「ソウちゃんは速く帰れば。クーラーボックスは置いてっていいから」
言いながらシオリはソウを手で追い払う仕草をした。
「これから追い付き追い越しロードレースでトウジん家までトレーニング」
「だめよ。グランドならいいけど、一般道じゃ通行人に迷惑がかかるから。まったく頭に何かわいてんじゃないの」
「えっ?あっ!そうか」
ソウの言葉にシオリが反論すると、ソウは視線をおよがせた。
「消灯施錠オッケーだった。お前ら何やってんだ?痴話喧嘩か」
トウジが首をかしげて言った。
「「付き合ってないから」」
ソウとシオリの声がハモった。