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午前八時半過ぎからの準備運動は、ほぼラジオ体操だったので問題なく、ソノタはこなした。
その次に、腕立て伏せと腹筋に加え背筋が続き、二人一組の柔軟体操は午前九時過ぎから開始。
トウジとカツトが模範演技的に見本を見せ、ソウがソノタの相方をつとめた。
時々クーラーボックス中のペットボトルでニアウォーターを補給しながら、前屈、背筋伸ばし、大開脚にブリッジに……体を曲げる伸ばす系列の運動のオンパレード。
たっぷり一時間半近く体を動かし、初冬なのに汗だくで、午前十時過ぎに休憩開始と相成った。
「体力あんじゃん」
タオルで汗をぬぐいながらソウが、壁に背中を付けてべったり足を投げ出して座っているソノタに声とタオルをかけた。
「そうかな……結構きつい」
タオル取り、あらい息をしながらソノタは答えた。
「はい。憑依系なら『選手の役』を演じてたりして」
ジャージの上着を脱いだカツトが、ニアウォーターのペットボトルをソノタに差し出した。
ソノタが眉根を寄せながら受け取る。
「そんなに器用じゃないか」
カツトが歯を見せて笑いソノタもつられる様に笑った。
「ソノタも何か腹に入れとくか?レモンゼリーしかねぇけど、ほら」
赤い顔をしたトウジがパウチの飲むゼリーをソノタに投げて渡した。
ソノタの左の前近くに三角座りでカツトが腰をおろした。
ソノタの真ん前にはソウがあぐらをかいている。
ソノタの右前方にはトウジが左片膝を立て右足を『くの字』に投げ出して座ったいた。
「で、どういういきさつで?」
ソウがソノタに質問をした。
「借金のかたに、お金で買われたとか?弱味を握られて、脅されたとか?女に鼻の下伸ばして、騙されとか?」
カツトがたたみかける。
「っっ…………ぬぁんで、悪い方に考えるんですかぁ!」
一瞬、絶句した後に強い口調でソノタが吠えた。
「うん、この前入ってすぐ辞めた奴等が、揃いも揃ってそうだったからだよ」
トウジ拗ねたように言った。
「俺はスカウトされたんです」
ソノタ以外の三人が顔を見合わせる。
「逸材だって」
鼻息あらくソノタは言い切った。
「武蔵体育大卒でも、武治文化大卒でも、実椎学園大卒でも、武州電気大卒でも、シ―・デーツ勤務でもないのに、何で!?」
言いながら膝立ちのまま、カツトがソノタに詰め寄った。
「そもそもソノタって芸能事務所のウェブページじゃ、高卒だったじゃんかよう!?職歴も無かったし……あっ!シー・デーツでバイトしてた!?」
トウジも叫んで膝立ちになった。
「あぁ……今日のテレビ見れば解るよ、午後の」
ソノタの答えに、ソウが返した。
「休憩終了。これからダッシュ、『スラローム』、反復横飛び、『タヒチアン』、『鬼ごっこ』までここでいきます。で『追い抜きロード』でトウジん家行こう」
「意義なし」
立ち上がり、トウジが賛成の意思を示した。
「始まるよ」
先に立ち上がり、座ったソノタに手を差しのべカツトが言った。
「荷物何で来たの?」
「ショルダーだけど」
立ち上がったソノタの答えに、カツトが微笑んだ。
「ソウの車に入れとけば無問題」