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「おかげで、バイトも決まりました」
ソノタとソウが、休息中に会話をしていた。
「しっかし、近場でまとめたなぁ」
ペットボトルの水を飲んでソウが言う。
「いい人ばかりで、感謝してます」
ソノタは小さく笑った。
「うちも、時期には人、雇うから、本業暇なら来いよ。観光客相手の接客だけどな。大丈夫だろ接客」
ストレッチをしながらソウが言う。
「まあ、前のバイトもそうだから、行けたら」
「引っ越し屋だよな」
「いや、金券ショップ。チケット売買の店員」
「はぁ?ソノタの引っ越しん時の人の事、前の上司て言わなかったか?」
「あの人は引っ越しマイスターだけど、引っ越しの仕事で怪我してチケット屋に転職した人だから」
ソノタは薄く笑った。
「ふぅん。まっ、行くかい」
「はぁ」
ふたりは、ロードワークを再開した。
しばらく走ると丁字交差点が赤信号だった。
「向こう側走ればよかったな」
また、身体を伸ばしながらソウが道路反対側を見て言う。
「で、俺等出る千駄木放送いつよ?。初回ケーキ作って食って、次が自分で作った匂いでリラックス、この前がバレリーナ踊って、こないだピアノ弾いてたし、この次の回はリース作り」
「初回パテシエール、二回目アロマセラピー・リラクゼーション、三回目プルミエ・ダンスール、四回目ピアノ・デュオ・キャトル・メン、次の五回目アルティザン・ドゥ・クロンヌ・ドゥ・ノエルのさらに次の六回目あたりだよきっと、年跨ぎ拡大放送とかの特番」
「なんかさ、名前からしてソノタん時とやること違いすぎねぇ?」
「いや、名前違っても、体験も食レポも施術もやってっから、バレエだって」
「バレエやってたか?ネットでざっくり放送リストみたけど、ソノタ、体験ったって寒中水泳とかインドの泥相撲、食レポもクサヤや鮒寿司食わされたりとか、施術だって激痛マッチョ垢擦りとか、赤面子宝御灸とかそんなんばっかだったぞ」
「番組の内の立場上、どうしても役で、向き不向きが……」
ふんにゃりソノタは笑った。
信号がかわりふたりはまた走り出す。