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「あうあう言ってるだけでは何も解決しないのです」

ピシリと根津がソノタに言った。

「事態打開のため、面識の出来た地域の人に挨拶に行きましょう、住所はわかりますか電話番は?ナビに入力しなさい。私も同道します」

エリカとの話し合いが終わって、黒い大きめのいつもの根津が使っている乗用車に乗らされたソノタは、自分のモバイルに登録してあった情報を、乗用車のナビにインプットさせられていた。

「まずは市役所ですね。市長に表敬訪問の名目で」

黒い乗用車のハンドルを握り根津が嘲った。

ケーブルテレビ局の程近い処に市役所本庁舎は有った。

受付で来意と市長への取り次ぎを願う。

ソノタの特殊能力が、遺憾無く発揮された。

市役所本庁舎。同各支部長庁。舎商工会議所本局。同各地域支局。観光協会本部。同各支部。地域振興事務所。同各地区センター。農業協同組合地域本店。同各支店。県合同出張所。国合同出張所。仏教会地区主幹寺院。神社本庁地域統括神社。etc.

市役所では市長に始まり副市長に助役、トップ、サブ、スーパーサブ揃って不在。

商工会議所でも、商工会議所事務長不在。紹介された商工会議所長の商店は地域商店街合同研修旅行の為に臨時休暇で商工会議所長を始めに、副長、各商店街会長、副会長、軒全て並み不在。etc.

無自覚にソノタの発動させた、特殊能力、それは【持ってない】だった。

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