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「まだ決まらないんです」
ソノタはケーブルテレビの応接ブースで頭を抱えて言った。
チーム仲間では、お節介やきソウと、お硬い人間トウジだけのみならず、面白がり屋カツトや一歩退いて見守るスタンスの式部監督まで物件情報を集め始めた。
シオリは『いざとなったら体育センターの管理人室が空いている』とのたまった。
俳優友達等は、良い人仮面のマッちゃん先輩と、実は常識人かわばっちゃんがネットでそれぞれ住宅情報を集めはソノタに送っていた。
おちゃらけヒラカズと、あっ軽いナミユキも無料住宅情報雑誌やチラシをソノタに渡している。
もう、今の自宅は年末に解約と約束したので退路がない。
と、ソノタが説明する。
「崖っぷちですねぇ」
とエリカが嘲った。
「もっと気楽にぃ気楽にぃ。ゆったりとお探しになったら良い物件あると思いますよぉ。ソノタさん生真面目」
「あまり太宰をからかわないで下さい。この前も顔見せにここにこさせたら、こんないたずらをなさって。もう契約は済んでいたでしょう」
根津が、ソノタがエリカと交わした契約書類を応接テーブルに広げた。
「だってぇ、ソノタさんに会いたくて呼んだんですけどぉ、なんかそう言うの恥ずかしくなってしまって契約はがぁって」
両頬を真っ赤にしてエリカはうつ向いた。
「えぇっ!?」
ソノタも赤くなってパクパクと口をあけしめしている。
「別にす……そういう意味でないですから、この話はおしまいですぅ。おしまい」
エリカが強引に話を打ち切った。
「スキャンダルは困りますよ」
根津がソノタに釘をさした。
「だから、そういうのではありません」
エリカの方が反論した。
「そう言うことにしておきましょう」
根津が話を引き取った。
「来月から撮影ですがぁ、ソノタさんの撮影は私が専属になりますぅ。ハンディカムをソノタさんにも扱っていただかないといけないのでお呼びだてしてしまいましたが、撮れますか?」
「問題ないでしょう。太宰はカメラが趣味でして、ビデオカメラも扱っていましたから」
完全に仕事の会話となったエリカと根津の脇で、まだソノタは紅い顔であうあう言っていた。