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「はぁい、外回り其太で〜す」

CMあけの画面には、ほぼ選手と同じ格好のソノタがいきなり写った。

違いはメッシュのノースリーブナンバーシャツの色がレモン色なだけだった。

「エキセントリックが持ち味の大隈監督に代わりまして、ここからは、えぇと……」

「フラッシュトードスの式部です。よろしくお願いいたします」

脇からゴーグルだけ外した式部が姿を現した。

「フラッシュトードスの式部さん、よろしくお願いいたします」

ソノタが頭を下げる。

「大隈監督の熱を帯びた説明に呑まれまして」

ソノタは笑って言葉を続けたが、目が怯えている。

「【やってみた】パートが短くってか濃いってかな内容になりますが、初めてでも大丈夫でしょうか?」

式部が平然と返した。

「基礎的な動きは予習なされてるんですよね?なら、心配ないと思いますよ。それに競技用テーザーでしたら、いくら【アレ】でも触れなければ、何の問題もありませんから。それに私の代わりに緑組ですから皆さん助けてくれますよ」

ソノタにベルトでテーザーホルダーを着けながら式部も笑った。

右脇腹にテーザーホルダー自体がくるように調整して、ホルダーから出ている、くるくるのシリコンバネの端をテーザーのストラップに取り付けソノタにテーザーを握らせた。

「用意ができましたみたいなので、其太行っきま〜す」

試合をしている真っ只中の後ろのコートに交代ラインからソノタは走り込んだ。

すぐに緑色のナンバーシャツがソノタにデカイボールをパスした。ライン際からソノタが相手ゴールに向かって走る。

テーザーを手に突っ込んで来る赤色のナンバーシャツを寸前でかわし、ソノタはそのかわした相手の後方の緑色にパスした。

ボールが飛ぶと走りよった赤色が飛び上がりボールをつかんで向きを変えた。

着地した時にバランスを崩した赤色の背後に、ソノタは走り込むと赤色の脇腹にテーザーをあててスイッチオン。

バチっと音がして赤色が膝をついた。

緑色がボールを拾う。

その赤色の身体の上を飛び越え、ソノタは、手を二度打ち合わせ広げた。

そのソノタにボールがパスされて来た。

またボール抱えてゴールを目指しソノタは走った。

横合いから走り込んだ赤色の手前で飛び上がり、赤色の頭頂にボールを叩きつけ、走り抜ける。

頭に弾んで低く上がったボールが自分の前に落ちると、またボールをつかみソノタはゴールに向かって走る。

ゴール前にも赤色が二人いたが、片手にボールを抱えてソノタは、テーザーをかざし走った。

横合いに走り込んだ緑色にボールをパスし、ソノタは先行してショックゾーンの赤色の伸ばした腕の下をくぐり抜けながら、ふたりの腹部に、次々にテーザーを当てスイッチを入れた。

バチ。

バチ。

態勢を崩した赤色ふたりの向こうに立ち上がり、ソノタは手を広げた。


緑色がボールをシュートする。

ソノタの眼前をボールが飛びゴールに転がった。

審判のホイッスルが鳴り響いた。

すぐに右手を高くあげソノタはカメラの近くまで走りよった。

「えぇと…ありがと…ござい…まし…た。式部…さん…やって…みた…ですが…あれで…反則は…無かった…で…しょう…か?」

汗だくなソノタが、荒い息をしながら式部にたずねた。

式部が口を開いた。

「そうで……」

「君なぁ、入らないか?チーム!」

式部を押し退けて、突然、大隈が現れ言った。

「センスがあるよ。俺のところで磨けばオリンピック選手だ」

大隈が興奮して続けた。

「わかってんのかお前、逸材だよ!」

大隈につかみかかられながらソノタは言った。

「大隈…監督…落ち…着いて…くだ…さい。ご…指導…あり…がとう…ござい…ました…えぇ…今日の…外回り…其太の…来てみた…見てみた…やってみた…は…珍しい…スポーツ…第…5段…アルティ…メット…テーザー…ボール…でした…………さようなら〜」

手を振るソノタに、つかみかかる大隈を、式部が引き離そうとし、他の選手があわてて駆け寄るところで画面が変わった。

女MCが商店街をバックに、ガラス細工のイヤリングの熊の手を振らせながら画面に現れた。

「ありがとうそして、さようなら其太くん。今日は有終の美を飾った其太くんでしたね。新年拡大放送から約一年間にわたって楽しませてくれた【外回り其太の来てみた!見てみた!やってみた!】は今週が最終回でした。来週はマラソン中継のためこの番は組お休みです。再来週の年末拡大放送からは、あの千駄木優さんをレポーターにお迎えして【優!トライしちゃおうか?】が始まります。初回は【優!パティシエールしちゃおうか?】です。お楽しみに」

画面では、女MCが商店街で手を振り言った。

「次はお待ちかねの……」』

ブチっとテレビが消された。

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