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99 その教師、隠しキャラにつき(Ⅱ)

 ▽▲▽


「いえ、お構いなく」


 源道ケビン先生という魔性のキャラ。

 その魔力に取り憑かれないように、私(わたくし)は毅然とした態度を取る。

 元々、原作時点で源道ケビンというキャラはあまり好きではなかったけれど、今実際に目の前に立ってみてある事に気がつく。


「──ユキちゃん様、ユキちゃん様」


「何よ、アヤメちゃん」


「顔、ニヤけてません?」


「はっ!?」

 

 ──なんか、既にちょっと好きになりそうになっていた。

 ぶんぶんと頭を振って雑念(?)を追いやる。

 あ、あぶねぇ!

 危うく好きになるところだった。

 そう、この源道ケビン。

 リアルで会うと、魔性の魅力マシマシであんまり好きじゃない筈の私ですら、簡単に好きになってしまいそうになるのだ。

 実際、以前にも度々会う機会はあった。

 まぁ、先生と生徒の関係だし、そこは仕方ない。

 しかし、問題なのは"授業を受けた"とか"ちょっと荷物を運ぶのを手伝った"とかで()()()()()()()で私の中での好感度みたいなのが爆上がりしていたことだ。

 ある日気がつくと、ちょっと好きになってた。

 これって相当怖くないかな?

 事実、私はコレに気がついた時怖かった。

 だからこそ、私は源道ケビンに会いたくなかった。

 距離を置き続けたかった。

 だけど、それどころじゃなくなってしまったのだ。


「そうですか、ちょっと残念です。ところで、今日はどの様なご用件でしたか?」


 午前中に君のクラスは受け持ってないので授業での質問では無さそうですが、と顎の薄ら生えた無精髭を撫でながら源道先生は言う。


「いえ、それ系のではなくて」


 ここで小さく深呼吸。

 息を整えて、切り出す。


「遠野花鈴という生徒はご存知でしょうか?」


「うん? まぁ、受け持ちクラスの生徒だからね」


 意外なことを聞かれた、と言うように目を丸くしながらそう答える源道先生。


「彼女に関して、何かありませんか?」


 本来、原作では。

 親友キャラの遠野花鈴が本格的に闇堕ち──もとい主人公(つきの)の敵になる原因となるのがこの源道先生だ。

 源道先生に恋をした遠野花鈴が、彼と急接近した月乃さんに嫉妬して暴走した形。

 今回知りたいのは、源道先生と遠野花鈴にイチ生徒イチ先生以上の繋がりがあるかどうか。

 ここで何かあると答えるか否か、もしくは何かあった場合でもどういう状況かでシナリオの進行度というか、裏ルートにどれだけ現状が近づいているかが測れると思ったのだ。


「あぁ、彼女に関しては少し心配ですね。記憶喪失らしいと()()()()()から、早く記憶が戻るように願ってます」


 その言い方は、どこか他人行儀で。

 直接的な関わりが無さそうな言葉だった。

 その感じにちょっとホッとし──かけたところで、ある事に気がつく。


()()()()()()って、誰から?」


 普通、噂を聞いたぐらいなら「〜らしい」と表現する筈。

 「〜と聞いています」と答えたのなら、そのニュアンスは()()()()()()()()()とかだ。


 ──嫌な予感がした。


 だって、遠野花鈴の記憶喪失問題の当事者で私と遠野花鈴自身以外の人物と言ったら。

 次の瞬間、彼の口から飛び出たのは最悪に近い人物名だった。





「滝沢月乃さんから、最近相談を受けていまして」

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