96 再構成と失敗(Ⅰ)
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事の発端は数日前。
ボクは、自身の不注意でエスカレーターから転落し意識不明のある程度重傷を負ってしまった。
そして目を覚ますと、一年以内の記憶を全て喪失してしまっていた!
──そう、してしまって
何故過去形で言ったかというと、この問題はすでに解決してしまっているからだ。
見舞いに来たキノと紫波雪風。
その紫波雪風に対して「──そこにいる子は、誰かな?」と割と悪役っぽいムーブをかました翌日には、何事もなかったかのようにポカっと記憶を取り戻した。
本当に一過性の記憶障害でしかなかったらしい。
じゃあ何故その辺のことを、記憶喪失じゃなくなった話を二人にしていないのかと言うと、思い出した事実は
端的に言うなら、今まで忘れていた前世での出来事も思い出したのだ。
その内容は──。
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『●●●、ゲーム進んでら?』
『お兄ちゃん、おはよ。まぁ、ぼちぼち最後のルート入ったところだよ』
『おー、良かったな』
『あんまり良くないよ! だってさ、見てよこれ!』
『ん? ──何コレ、どんなシーン?』
『お葬式のシーン』
『どんなシーンだよ。なんで恋愛シュミレーションで葬式シーンが必要なんだよ』
『それがねー、お兄ちゃんは紫波雪風ってキャラ覚えてる?』
『あ、あぁ、確か敵だよな? けど昨日なんか仲間になった的な話してなかったっけ?』
『これ、その子のお葬式なんだよねぇ』
『まじ?』
『マジぃ。それでここから彼女の死の真相を探っていく話になるみたい』
『へー、恋愛シュミレーションつっても変化球があるモンだな』
『裏ルートだからぶっとんだ内容なんだろーねー』
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──紫波雪風が誰かに殺されるルートあるらしい。
そんな割と大事な事を思い出した。
しかも最悪なことに、思い出したのはその場面のみ。
誰に殺されるのか、どう殺されるのかは全く不明。
今まで紫波雪風をなんとか
それにもう既に、紫波雪風はキノの大事な友達だ。
なら、どうにかして彼女の死も阻止しなければキノが悲しむ。
キノを守りながら、紫波雪風も守らなきゃならないとか、一気にハードモードになったよねボクの人生。
その為には、更に情報を密に集めなければ。
記憶喪失になって関係性が一旦リセットされたのは、この際には幸いだった。
この隙に自由に動いて、裏ルートとやらの黒幕を炙り出す為の策を練り、必要な情報を集めるのに集中しよう。