85 トラブル(Ⅰ)
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「───ふう」
個室から出て、お手洗いで手を
別に尿意とかは催していなかったんだけど、一旦ひとりになりたかった。
端的に言って、人酔いをした。
不特定多数の人からの視線とか、大きな音とか。
そういうのに長時間晒されるのは、陰キャ引きこもりには本当にしんどい。
満員電車とかフェスとかも無理だろう、行った事ないけど。
我がことながら
不躾な、もしくは悪意ある視線。
周囲に味方がいない環境。
狭い場所に詰め込まれた沢山の他人。
こういうのに長時間晒される環境は、
長い時間そこにいられないという意味では、むしろ水中かもしれない。
息苦しくて、気持ち悪い。
だからこそ、そうなったら一旦トイレみたいな周りをシャットアウトしてひとりになれる場所に逃げ込むのだ。
こうすることで、やっと
「自分で自分が嫌いになりそうな瞬間よね」
些細な事かもしれないが、自己嫌悪を感じてしまい、小さくため息を吐く。
前世から引きずってきたトラウマや苦手意識は、この姿になっても改善はされない魂の傷となっていた。
兎にも角にも、一旦息継ぎは終了。
また楽しくも苦しい水の中に戻ろう。
最近動向が大人しめだと言っても、遠野花鈴と月乃さんをあまりふたりきりにしとくのはちょっと嫌な気がする。
そう決意して濡れた手をペーパータオルで拭き取り、トイレを後にする。
ゲームセンター内に戻る為の狭い道を進むと、その先に居た誰かが道を塞いだ。
「あの?」
塞いだ当人たちの顔を見る。
その瞬間、私の背筋が凍った。
ゲームセンター特有の騒がしい電子音が一瞬にして遠かり、嫌な耳鳴りがしたように感じた。
「──まさか、こんなところで会うなんてねぇ」
そこにいたのは、いつか見た3人の少女たち。
鶺鴒学院の生徒で同級生である彼女たちは、私とある関係があった。
──いや、正しくは。
関係が
派手な主張の服装、男子の目を気にしたメイクとその割に平凡な顔立ち、意思の強そうな瞳。
そのキツい眼光で私を睨む彼女たちの目には、まるで弱った猫を見つけた窮鼠のような嗜虐的な光がやどっているように見えて、私は半歩後退りをした。
彼女たちの正体は──。
「いい機会だからウチらと
──原作で